1月20日公開オススメ映画『母の聖戦』『野獣の血』『ノースマン　導かれし復讐者』

2023年1月21日 11:56

映画ライターの松弥々子が、今週末、1月20日に公開されるオススメ映画3作品をご紹介します。

母の聖戦

2006年のメキシコ麻薬戦争の開始以来、治安の悪化が激しいメキシコ。誘拐がビジネスとなっているこの国で、誘拐された娘を救うため、誘拐組織にたった一人で立ち向かう母の姿を描いたのが、『母の聖戦』です。

ボーイフレンドとデートするという10代の娘・ラウラを送り出したシエロのもとに、ある男がやって来ます。その男は「ラウラを誘拐した」と告げ、身代金を払うように要求するのです。男たちの要求に従って身代金を払ったシエロですが、ラウラは帰ってこず……。別居中の夫は泣き言を言うばかりで役に立たず、警察は話を聞こうともしない。軍隊に頼んでも、結局は解決に至らず……。

そんな状況で、シエロは一人で立ち向かいます。組織の人間が出入りする店を見張って関係者リストを作り、たった一人で捜査を進めるのです。そして、ある知人が組織に関わっていることを知り、暴力性を爆発させるのですが……。

“La Civil”（市民）という原題の本作、メキシコの一市民がどういう状況に置かれているか、明確に描き出しています。

この作品を手掛けたのは、ルーマニア生まれで中高生時代をカリフォルニアで過ごし、ベルギーを拠点に活動しているテオドラ・アナ・ミハイ。ドキュメンタリー映画を手掛けてきた彼女にとって、本作が初の長編劇映画となります。

メキシコで麻薬戦争下の子どもたちのドキュメンタリーを撮影しようと考えていた彼女は、シエロのモデルとなった、娘を誘拐された女性と出会い、劇映画としてこの映画を作ることに決めたそうです。
メキシコという国の絶望、そして子どもを思う母の強さを描いた衝撃の一作でした。

『母の聖戦』（135分／ベルギー・ルーマニア・メキシコ／2021年）
原題：La Civil
公開：2023年1月20日
配給：ハーク
劇場：ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次公開
Official Website：https:// www.hark3.com/haha
(C) 2021 Menuetto/ One For The Road/ Les Films du Fleuve/ Mobra Films

野獣の血

しょっぱなから韓国歌謡曲が迫力たっぷりに流れる韓国映画『野獣の血』。
K-POPブームなどはまだ影も形もない1993年を舞台に、釜山の片隅にある街・クアムをめぐるヤクザたちの抗争と人間模様を描いています。

釜山の最底辺とも言われる街・クアムでソン親分の右腕として一帯を仕切っているヒス（チョン・ウ）。養護施設出身の彼は、昔なじみの恋人・インスクと結婚し、ヤクザ稼業から足を洗おうと考えていたものの、クアムを狙う近隣の組織・ヨンド派との抗争に巻き込まれていくことになります。

海水浴場と観光ホテル、屋台、風俗店、娯楽場などをシノギにしたしょぼくれた街・クアム。ヤクザ組織もどこか牧歌的だったりするのですが、ヨンド派との抗争の中で、裏切りや背信が広がっていき……。

韓国ヤクザを描いたキム・オンスのノワール小説を、自身も小説家であるチョン・ミョングァンが初めてメガホンをとって映画化した本作『野獣の血』。
初監督らしい大胆な演出もありつつ、韓国ノワール映画らしい生々しい暴力描写や、どこかしめっぽさのある人間ドラマもたっぷり。あまり洗練されていない1993年の釜山という街の時代感も含めて楽しみたい一作でした。

ノースマン　導かれし復讐者

『ウィッチ』、『ライトハウス』のロバート・エガース監督の最新作にして、アレクサンダー・スカルスガルドがバイキングを演じるとなれば、注目せざるを得ない映画『ノースマン　導かれし復讐者』。

さらに、イーサン・ホークにニコール・キッドマン、アニャ・テイラー＝ジョイと言った豪華キャストに加え、10世紀のアイスランドが舞台ということで、預言者役でビョークも登場していたりするので絶対に見逃せません。

荒涼とした北欧の大地を舞台に、父を殺され母を攫われたアムレート王子の復讐を描いた本作は、まさにダークな『ハムレット』。
一台のカメラで長回しで撮影したシーンの数々には、ロバート・エガース監督のクリエイティビティがほとばしり、強烈な印象を残す一作です。

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1月20日公開オススメ映画『母の聖戦』『野獣の血』『ノースマン 導かれし復讐者』

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野獣の血

ノースマン 導かれし復讐者

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