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11月12日公開オススメ映画『信虎』

映画ライターの松 弥々子が、今週末、11月12日に公開されるオススメ映画をご紹介します。
今回おすすめするのは、俳優歴60年の名優・寺田農氏が武田信玄の父・無人斎道有こと武田信虎を演じた映画『信虎』

齢80を超えて、かつて信玄に追放された甲斐国へ帰還し、武田家を守り抜こうとする信虎の最晩年の様子を描く、本格的戦国時代劇です。

映画『信虎』あらすじ

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1573年、京で暮らしていた武田信虎は、自らを甲斐から追放した信玄が軍配を送ってきたことをきっかけに、甲斐への帰還を目論みます。
やがて信濃・三男・武田信廉の居城である高遠城に入った信虎は、信玄が陣没したという報せを聞きます。そして自らが再び武田家の家督を継ごうとするのです。
しかし、信玄の息子・勝頼や家臣たちは、信虎のことを相手にせず、軽くあしらわれてしまいます。
そこで信虎は、寺で修行に励み、特殊な能力を得てしまうのです……。

寺田農さんが語る信虎像


今回、信虎を演じた寺田 農さんにインタビューさせていただいたのですが、寺田さんはこの信虎について、武将・政治家としては評価しつつも、老いのために少し判断力が鈍り、老人特有の妄執を持った人物と解釈されたようです。

シネマクエスト 映画『信虎』寺田 農さん インタビューhttp://cinema.co.jp/article/detail?tab=news&id=51404

寺田農:信虎ってのはやっぱりかなりの戦略家なんだね、武将としても政治家としても優れている。ただ残念ながら、80歳となるとやっぱり老いというかな、少しボケも入っていたんじゃないのかなと思うんだよね。
信玄から送られた軍配を手にした時にね、「わしが武田の家を残されねばならぬ!」みたいな早とちりをするんだね。老人特有の、頑固さでね。このあたりがなんか悲哀というか妄執というか、面白いよね。 (シネマクエスト 映画『信虎』寺田 農さん インタビューより)

80を超えたおじいちゃんが武田家を再び継ごうとするのですから、確かにそれは妄執。
さらに、特殊能力を駆使して他者をあやつり、武田家を再興していこうとするその姿には、鬼気迫るものが感じられました。

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本物にこだわりぬいたロケ地・刀剣・衣装にも注目

またこの『信虎』で見逃せないのが、そのこだわり抜いた美術です。

本作でプロデューサー・共同監督を務めているのは、信濃国伊奈郡の郷士宮下帯刀を祖先に持つ歴史美術研究家の宮下玄覇氏。古美術や刀剣などの武具、茶道具にも造詣が深く、時代考証家としても活動しています。

今作の撮影では、宮下氏のネットワークを駆使し、これまで映画撮影に使用されたことがない古刹などで撮影が実施されているそう。

評定のシーンなどでも、長い歴史を感じさせる床の黒光が、場面に更なる重みを感じさせているのです。実際に武田信虎の支援を受けたという雲峰寺などでも撮影が行われています。

寺田農:今回のロケ地のほとんどは、今迄の時代劇のドラマでロケに使われているお寺とかじゃないんだよね。すべて宮下さんのルートで撮影できた、これまで撮影隊が入ったことないようなお寺ばっかりだから。例えば、織田信長役の渡辺裕之さんがお茶飲むシーンなんか、信長が実際にお茶を飲んだ場所だし、茶碗もその時代のものなんだよ。だからそういう一つひとつ、柱の重量感、床の重量感、美術工芸品の重み、全部が本物に近づけてくれるよね。
(中略)
何百年前に建立されたっていうお寺には、何もライティングもしなくても、本物の色と光、そして匂いがあるからね。ただね、そういう由緒あるお寺は火気厳禁だから、火とかは一切使えないわけ。寒くて大変だったよね(笑)。 (シネマクエスト 映画『信虎』寺田 農さん インタビューより)

さらに、衣装や美粧、甲冑など人馬の装束などにも徹底的にこだわっており、往時を感じさせる“本物”が使用されています。もちろん茶道具なども素晴らしいものばかり。
戦いのシーンで聞こえてくる刀剣の音などもとてもリアルで、まるで合戦の最中にいるような臨場感を味わうことができます。

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寺田農をはじめとする名優たちが顔をそろえ、老将・武田信虎の晩年の執念を描いたこの作品。まるで本当に戦国時代にいるようなロケ地、美術などが、観るものに戦国時代を体感させてくれます。

武田氏というと、どうしても武田信玄にスポットが当たりがちですが、その信玄の覇権の礎を築いたのが、武田信虎です。この映画『信虎』で、甲斐武田氏の勃興の礎となった武田信虎とはどういう人物だったのかを知ることができるでしょう。

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『信虎』(135分/日本/2021年)
公開:2021年11月12日
配給:彩プロ
劇場:TOHOシネマズ日本橋ほか全国にて
Official Website:https://nobutora.ayapro.ne.jp/

(C)ミヤオビピクチャーズ

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