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8月18日公開オススメ映画『ふたりのマエストロ』『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』『尾かしら付き。』

映画ライターの松 弥々子が、8月18日に公開されるオススメ映画をご紹介します。


ふたりのマエストロ

映画『ふたりのマエストロ』は、パリのクラシック界を舞台とする、父と息子の物語です。

主人公は、指揮者として名声を得た中年男性、ドニ・デュマール。彼の父親であるフランソワ・デュマールも、輝かしいキャリアを誇るベテラン指揮者でした。

息子のドニがフランスのグラミー賞にも例えられるヴィクトワール賞を受賞した翌日、父・フランソワは不機嫌でした。しかし、そんなフランソワの元に、ミラノ・スカラ座の指揮者に就任してほしいという依頼が舞い込みます。長年の夢だったスカラ座のマエストロの座に、喜ぶ父。しかし、その知らせは“デュマール”違いだったのです……。

自分に愛を注いでくれなかった父への愛執、父を超えることへの葛藤。
自分の夢が破った息子への愛憎、息子からの憐憫に対する反発。

ピエール・アルディティとイヴァン・アタルという二人の名優が、この緊張感を持った親子関係を見事に演じています。さらに、一家の緩衝材となるドニの息子・マチューを演じた若手俳優ニルス・オトナン=ジラールの演技もすばらしく、血縁者ならではの難しい関係性を自由な形で表現していました。

押し付けがましくなく、重苦しくもなく、でもサラリと感動的という、素敵なフランス映画でした。

『ふたりのマエストロ』(88分/フランス/2022年)
原題:MAESTRO(S)
公開:2023年8月18日
配給:ギャガ
劇場:ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ、シネ・リーブル池袋ほか全国にて順次公開
Official Website:https://gaga.ne.jp/MAESTROS/
© 2022 VENDÔME FILMS ‒ ORANGE STUDIO ‒ APOLLO FILMS

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー

第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で上映され、退出者が続出したというデヴィッド・クローネンバーグ監督の映画『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』

人類が痛みを感じなくなった近未来に、自身の体の中に新しい臓器を作り出し、パートナーがその臓器にタトゥーをして体内から取り出して見せるというパフォーマンスを行なっている男が主人公です。
体内に新しい臓器を作り出す? 腫瘍にタトゥーする? その摘出手術がアート?
と、疑問符がたくさん浮かんでしまう作品ですが、それがまさにクローネンバーグ作品といったところです。

これはアートなのか、それともグロテスクな偽悪趣味なのか? これはまさに劇中の登場人物の行動にも、作品自体にも関わってくる問題になっています。

“痛み”が贅沢品となり、体を変化させることが快楽になる時代。人間の進化は止められないし、それはグロテスクでもあり、快楽でもあり、原罪的でもある。

『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』は、そんなグロテスクなアートに満ちた、退出者続出というのも納得の一作でした。

『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』(108分/カナダ・ギリシャ/2022年)
原題:Crimes of the Future
公開:2023年8月18日
配給:クロックワークス/STAR CHANNEL MOVIES
劇場:全国にて順次公開
Official Website:https://cotfmovie.com
© 2022 SPF (CRIMES) PRODUCTIONS INC. AND ARGONAUTS CRIMES PRODUCTIONS S.A.

尾かしら付き。

佐原ミズの人気コミックを真田幹也監督が映画化した本作『尾かしら付き。』は、ブタのようなしっぽのついた男の子と日焼けに憧れる女の子、少しまわりとは違う二人の中学生たちの物語です。

「個性が大事」と言われても、「みんなと違う」ということが大問題になってしまう中学生。そんな多感な年代の二人が心を通わせていく様子が、みずみずしく描かれています。

多感で繊細な年代の学生さんや、かつて多感だったこともある大人の皆さん、誰もが共感できるような、やさしくひたむきな物語でした。

『尾かしら付き。』(82分/日本/2023年)
公開:2023年8月18日
配給:ムービーウォーカー
劇場:全国にて順次公開
Official Website:https://okashiratsuki-movie.jp/
(C)佐原ミズ/コアミックス (C)2023 映画「尾かしら付き。」


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