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11月10日公開オススメ映画『ぼくは君たちを憎まないことにした』『花腐し』『マーベルズ』

映画ライターの松 弥々子が、11月10日に公開されるオススメ映画をご紹介します。


ぼくは君たちを憎まないことにした

2015年11月13日にフランスで起こったパリ同時多発テロ事件。この日、イーグルス・オブ・デス・メタルのライブ中だったバタクラン劇場がISILのテロリストに襲われ、観客89人が死亡しました。

この映画『ぼくは君たちを憎まないことにした』は、このテロで妻を亡くしたアントワーヌ・レリスの手がけた原作を映画化したものです。ライブに出かけた妻が死亡し、1歳半を過ぎたばかりの息子のメルヴィルと二人で残されたアントワーヌは、Facebookでテロリストたちにあて「ぼくは君たちを憎まないことにした」と手紙を綴ります。

憎しみを連鎖させないという強い意志で「私と息子は2人きりだ。でも世界中の軍隊より強い」と決意を告げたそのメッセージは一晩で20万人以上に拡散され、テロに動揺するフランスの人々に団結力を芽生えさせました。

本作では、アントワーヌを悲劇のヒーローにすることなく、人間的な弱さを持ちつつ、息子のために母のいない淋しさを感じさせないようにしようとする男を描いています。アントワーヌの強さと、メルヴィルの愛らしさ、けなげさが心をうつ、静かで強い一作です。

『ぼくは君たちを憎まないことにした』(102分/ドイツ・フランス・ベルギー/2022年)
原題:Vous n‘aurez pas ma haine
英題:You Will Not Have My Hate
公開:2023年11月10日
配給:アルバトロス・フィルム
劇場:TOHOシネマズシャンテほか全国にて
Official Website:https://www.nikumanai.com
© 2022 Komplizen Film Haut et Court Frakas Productions TOBIS / Erfttal Film und Fernsehproduktion

花腐し

ピンク映画業界で監督として生きる男・栩谷と、栩谷と同棲している女優・祥子、そしてかつてシナリオライターを目指し映像業界で働いていた男・伊関。この三人の関係を荒井晴彦監督が映画化した映画『花腐し』

主人公たちの言動について、男性と女性ではまったく評価が違うだろうと思われる一作です。
私にとっては、男性上位の映画業界でセクハラやパワハラを受けつつも耐えながら強く生きようとした女性が、その映画業界に蹂躙された映画としか見えませんでしたが……。古い時代の映画人たちにとっては、こういう男性像が“映画に人生を賭けた男”、“無頼の映画人”なのかもしれません。

「ふたりの男とひとりの女が織りなす、切なくも純粋な愛の物語」という惹句が記載されていますが、彼らの愛を“純粋な愛”と思えるのは、そうやって自由に生きてきてしまった人間だけ、なのでは……。
でもまあ、だからこそ、お金持ちの中国人にすべてを吸い尽くされてしまうのでしょうね。
夢を追おうとした花をさまざまに搾取し、腐らせていく、映画界。変わっていって欲しいと、強く思います。

『花腐し』(137分/日本/2023年)
公開:2023年11月10日
配給:東映ビデオ
劇場:テアトル新宿ほか全国にて
Official Website:https://hanakutashi.com
©2023「花腐し」製作委員会

マーベルズ

アベンジャーズ最強と言われる力を持つキャプテン・マーベル(キャロル・ダンバース)と、パキスタンの血を引くキャプテン・マーベルオタクのミズ・マーベル(カマラ・カーン)、幼い頃からキャロルを知るモニカ・ランボー。この3人の女性がその能力を駆使して共闘する姿が見られるのが、「マーベル・シネマティック・ユニバース」(MCU)の33作品目となる本作『マーベルズ』です。

ドラマ『ワンダヴィジョン』『ミズ・マーベル』でそれぞれの能力を覚醒させたモニカ・ランボー、カマラ・カーン。この2人とキャプテン・マーベルが、パワーを使うたびに体の場所が入れ替わってしまうという事象が発生します。この謎の現象の中、3人はチームを組んで戦うことになるのです。

場所の入れ替わりという謎をフルに生かした本作は、テンポもよくコミカルさもたっぷり。さらにネコチャンもいっぱい登場するのも、ネコ好きにはたまらないところです。

『マーベルズ』(105分/アメリカ/2023年)
公開:2023年11月10日
原題:The Marvels
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ
劇場:全国にて
Official Website:https://marvel.disney.co.jp/movie/marvels
(C)Marvel Studios 2023

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