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2月10日公開オススメ映画『バビロン』『エゴイスト』『呪呪呪/死者をあやつるもの』

映画ライターの松 弥々子が、今週末、2月10日に公開されるオススメ映画3作品をご紹介します。

バビロン

クレイジーなパーティーシーンから始まる映画『バビロン』。“狂乱の20年代”、まだサイレント映画が主流だったこの時代に、ハリウッドにひと山あてにやって来たさまざまな男女の強烈な生き様を描き出す、デイミアン・チャゼル監督の最新作です。

主役となるのは、サイレント時代のハリウッド・スターである白人男性ジャック(ブラッド・ピット)、ニュージャージーの田舎の貧しい家庭から女優を目指してやってきた白人女性・ネリー(マーゴット・ロビー)、メキシコ移民で裏方として映画界での成功を目指すマニー(ディエゴ・カルバ)。
さらに、黒人のトランペット奏者や、中国系の女性シンガーなどが絡みあい、そんな彼らの振る舞いを安全地帯から観察・批評し続けてきた白人女性のゴシップライターが、彼らの強烈なドラマを皮肉を交えながらレポートしていきます。

なんでもありのサイレント時代から、システマチックな映画撮影方法が必要になるトーキー時代へという変遷をへて、時代に適応できるもの、適応できずに沈んでいくもの、新しく台頭してくるもの……。“映画史”という大きな流れのなかで、一つの時代を彩った彼らの姿は、名声や評価とは別に、多くの映画ファンの心に確実に残っています。

強烈な光があるからこそ、闇も深い。だからこそ、中毒性もある魅惑の世界・ハリウッド。
この映画『バビロン』は、汚物まみれで光り輝くハリウッド映画界への、デイミアン・チャゼル監督の、歪んだ愛情あふれるラブレターなのです。

『バビロン』(189分/アメリカ/2022年)
原題:Babylon
公開:2023年2月10日
配給:東和ピクチャーズ
劇場:全国にて
Official Website:https://babylon-movie.jp/
(C) 2023 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

エゴイスト

ファッション誌編集者の浩輔と、パーソナルトレーナーの龍太。二人の男性が恋に落ち、関係を深めていく姿と、その後の物語を描いた映画『エゴイスト』
鈴木亮平と宮沢氷魚が、愛し合う男性カップルをリアリティたっぷりに演じています。

愛しているから、一緒にいたい。でも、一緒にいるために選んだ自分の選択は正しいのか? ただのエゴではないのか?
これは愛なのか、執着なのか? 愛とエゴは表裏一体なのか、エゴを突き詰めれば愛になるのか。
どこまでいっても答えの出ない問題を、生きている限り抱え続ける、切ない恋愛模様が描かれています。

鎧のようなハイファッションで誇り高き自身を表現するオネエな鈴木亮平の演技もすばらしいし、子犬のように無邪気な笑顔の宮沢氷魚も愛らしい。そして愛にあふれながらも無力な母を演じた阿川佐和子さんも、すばらしい演技を見せています。

実は今回、マスコミ試写ではなく、新宿二丁目のゲイバーの方々を招待した試写に、なぜかゲイバー関係者として参加して、試写を拝見させていただきました。その会場で一緒に観たゲイバー関係の皆さん、口々に「いや、鈴木亮平の演技がホントにすごいわ!リアル!!」と大感動していました。
ゲイ同士の会話、ゲイ男性の仕草、ゲイ同士の恋愛がリアルに描かれており、ゲイの方々の目線から見ても嘘がない、リアルな恋物語に仕上がっているのです。

最後に、原作者の高山真さんを知るゲイバーのママ・おじょんさんが高山さんの思い出を語っている動画を紹介します。高山さんがどんな人だったのかを知ると、この『エゴイスト』という言葉の意味が、より深く、愛を持って理解できるような気がします。

『エゴイスト』(120分/日本/2023年)
公開:2023年2月10日
配給:東京テアトル
劇場:全国にて
Official Website:https://egoist-movie.com/
© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

呪呪呪/死者をあやつるもの

相手の写真、漢字の名前、そして所持品を使って人を殺せるという“謗法”の能力を持つ女子高生と一人の女性ジャーナリストが、急成長したIT企業の闇と呪いを追った2020年のドラマ「謗法~運命を変える方法~」。このドラマの劇場版が、映画『呪呪呪/死者をあやつるもの』です。

今回、女性ジャーナリストが遭遇したのが、「死者が死者を殺す」という事件。その事件を調べるうちに、インドネシアに伝わる死者をあやつる呪術が事件に関係していることがわかってくるのですが……。

今回の映画で描かれるインドネシアの呪術では、死者がゾンビのように立ち上がり、恨みを持つものに襲いかかります。
このゾンビたち、猛スピードで走ってくるわ、銃で撃たれてもダメージがないわ、車を運転してターゲットを追いかけてくるわで、ゾンビとしては最強クラスの能力を有しています。さらに、そのゾンビに触れたら、致死率の高いウイルスに感染してしまうというのだから、恐ろしすぎる……。
このゾンビたちによるカーチェイスシーン、あまりの展開に「おもしろすぎる……、韓国ホラーやっぱりすごい……」と思わず声が出てしまうほど。

このインドネシアの呪術をあやつる呪術師と、呪術師に狙われた製薬会社の重役たち、製薬会社の闇を暴こうとするジャーナリスト、呪いに対抗する謗法師らの戦いが描かれた本作。
「なんとか観客を楽しませよう」とする韓国エンターテインメントの志に、思わず感動してしまった一作です。

『呪呪呪/死者をあやつるもの』(110分/韓国/2021年)
原題:방법: 재차의
英題:The Cursed: Dead Man’s Prey
公開:2023年2月10日
配給:ハピネットファントム・スタジオ
劇場:新宿バルト9ほかにて
Official Website:https://happinet-phantom.com/jujuju/
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