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映画『逆光』で注目の新鋭監督須藤蓮主演!『ワンダーウォール 劇場版』

今回はkayserが担当します。

2022年1月現在公開中の話題作『逆光』。NHKテレビ小説『カーネーション』の脚本家・渡辺あやが発掘した新鋭映画監督の須藤蓮の作品です。脚本も渡辺あやが務めています。

実はこの2人のタッグ、『逆光』が初めてではありません。

2018年にNHKBSプレミアにて放送された「京都発地域ドラマ」の『ワンダーウォール』が初となります。しかも、この作品は俳優としての須藤蓮が主演しているのです。

須藤蓮と渡辺あやが知り合うきっかけとなったこのドラマは後に再編集され、『ワンダーウォール 劇場版』として劇場公開されることに。今回は、この『ワンダーウォール 劇場版』を紹介しながら、その魅力について迫ります。

『ワンダーウォール 劇場版』とは

NHK京都放送局が、「京都発地域ドラマ」として製作したオリジナルドラマ『ワンダーウォール~京都発地域ドラマ~』。2018年、NHK BSプレミアで放送されると、SNSを通じてじわりじわりと話題となり、総合テレビでも放送されました。

物語は京都を舞台に、100年以上の歴史を持つ学生寮である近衛寮の存続を巡って、大学側と学生たちの攻防を描いています。若者を中心に人気が広がり、トークイベントやシナリオ付きの写真集まで発売される盛り上がりをみせたのです。この1時間のドラマに未公開カットを追加し、『ワンダーウォール 劇場版』として新たに生まれ変わり、2020年に劇場公開されました。

あらすじ

京都にある「京宮大学」には、100以上歴史の続く学生の自治寮・近衛寮があります。老朽化が進む中、補修しながら寮舎を残したい学生たちと新しく建て替えたい大学側が真っ向から対立してきました。その攻防は平行線のまま、寮生により代々受け継がれてきたのです。

一度、学生側の言い分を認めた大学側。しかし、すぐに撤回され、とうとう立ち退き勧告を受けることに

近衛寮は存続できるのか、大きな権力に屈服するしか道はないのか......。

古くて汚いおんぼろの近衛寮。無秩序にみえて、彼らなりの秩序が保たれ、私たちが忘れかけている大事な何かを教えてくれるような存在。そんな大切なユートピアを守るため、学生たちが必死に抵抗する姿を描いています。

豪華スタッフが集結

『ワンダーウォール 劇場版』の制作にあたり、豪華スタッフが集結しました。脚本は、映画『ジョゼと虎と魚たち』NHKテレビ小説『カーネーション』で知られる渡辺あや
本作のモデルとなった京都大学吉田寮を取材し、作品に取り入れています。ドラマと同じようなことが現実に起きていることを知り、私たちの社会の在り方に通ずるものを感じたそうです。

監督は前田悠希。大学在学中に自主映画製作に携わり、早稲田映画まつりグランプリなどを受賞した逸材です。卒業後は、NHKに入局し本作の監督を務めました。

また、音楽には岩崎太整。映画、ドラマ、CMなど数多くの作品を担当しています。映画『モテキ』では、日本アカデミー賞優秀音楽賞も受賞。本作では、ドラマ版の続きとなるテーマ曲を書き下ろしました。

作品を盛り上げる素晴らしいキャストたち

『ワンダーウォール 劇場版』の魅力のひとつは、素晴らしい出演者が揃っていることです。この作品には欠かせないキャスティングとなっています。若手ながら実力派が揃いました。

須藤蓮/キューピー

主人公のキューピーを演じているのが須藤蓮。キューピーは農学部3回生です。記録係として、大学側との話し合いを撮影しています。

須藤は本作のオーディションで、1500人の応募の中から選ばれました。その後も活躍は目覚ましく、NHK連続テレビ小説『なつぞら』や映画『よこがお』『生理ちゃん』など出演が続きました。
2022年現在は、自身の監督・主演作『逆光』が公開中です。

岡山天音/志村

岡山天音は2009年のNHK『中学校日記』にてデビューしました。その後も数多くの映画、ドラマで活躍しています。渡辺あや作品は映画『合葬』以来2作品目です。
本作では、理学部4回生の志村を演じました。普段は大人しいですが、冷静な判断ができ頼りになる人物

三村和敬/マサラ

三村和敬は子役として活動開始し10年以上のキャリアを持ちます。多くの話題作に出演している実力派です。
本作では、文学部1回生のマサラを好演。1回生ながら、近衛寮を大事に思い、空回りながらもなんとかしたいと一所懸命なマサラを演じました。

中崎敏/三船康介

中崎敏はハワイ出身。ニューヨークフィルムアカデミーに留学経験をしたことも。話題作に次々と出演し、本作でも重要な役柄・三船康介を演じています。三船は法学部4回生。大学側との交渉係を務めてきましたが、ある時を境に参加しなくなっていきます。

若葉竜也/ドレッド

若葉竜也は注目の若手俳優の1人。映画『葛城事件』でTAMA映画賞最優秀新進男優賞を受賞。今泉力哉監督や石井裕也監督など多くのクリエーターに求められる稀有な存在です。

本作では、工学部4回生でドレッドヘアーのドレッドを演じています。麻雀ばかりやっている印象ですが、茶道もできる不思議なキャラクターです。

成海璃子/三船香

成海璃子は2005年のドラマ『瑠璃の島』にて一躍注目を集めます。若手ながら安定の演技力は折り紙付きです。
本作では、大学側の窓口となる女性を演じることに。自身の立場はさておき、近衛寮を応援してくれる数少ない大人です。

今だからこそ伝えたい大事なもの

ドラマ版は未見で『ワンダーウォール 劇場版』を鑑賞しました。前情報もあまりないまま観始めた時は、少し前の時代の話かと思いました。というのも、近衛寮の外観とそこに登場する人物たちの佇まいが昔の人たちにみえたからです。

また実際するモデルとなる寮で同じようなことが起きていることを知ると、現代でも自身の居場所のために戦う熱い学生がいることに驚きました。そして、近衛寮への強い憧れ、羨ましいという気持ち、応援したくなる思いが自分の中に芽生えていくのをひしひしと感じています。

若者が自分たちのユートピアを守るため必死に戦っている。それは、勝手気ままにできる場所を奪われたくないという利己的なものとは違っています。

近衛寮は100年以上続いていて、現代もなお大事にされているもの。それは、個を確立しながら、他を認め合う人間の理想的な場所だからです。ユートピアとはまさしく、自分を大切にしながら、他者も同じように大事に思う優しい世界。近衛寮ではもうずっとそのことが体現されていたわけです。

この理想は、作品を観たみなの共感を呼び、たいして宣伝もしていないただのドラマが、大きく羽ばたく力となりました。劇場版のラストの合奏は、このドラマを愛した人たちの思いの結晶なのでしょう。

次に観るならやっぱり『逆光』!

もともと公開時に気になっていた『ワンダーウォール 劇場版』でしたが、公開時には観ることができず...…。2021年『逆光』の公開を知り、まずは『ワンダーウォール 劇場版』を観なくてはという思うで鑑賞しました。

というのも、映画『逆光』は、脚本・渡辺あや、監督・主演には須藤蓮という『ワンダーウォール 劇場版』の2人がタッグを組んだ作品だからです。しかも、須藤蓮が映画監督に!『ワンダーウォール 劇場版』が好きな人には見逃せませんよね。

映画『逆光』は、1970年代の尾道を舞台に、ある4人の男女のひと夏の出来事を描いた青春ストーリーです。こちらのレビューはまた別の機会に。

kayser

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