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現実に追い越された6月

家族が奇妙な病気になり入院、数か月ずっと無力だった。心配と緊張と待機しかできなかった。自滅しそうになると遠隔地に逃避。今回は火星。「オデッセイ」という映画を観る。近未来、火星に置き去りにされた宇宙飛行士が空気もない星で来るともしれぬ助けを待つ…命の危険があるのは私ではなくて家族なんだけど。

植物学者のマーク・ワトニーは嵐に吹っ飛ばされて仲間とはぐれてしまうんだけど、仲間は火星を離脱してしまい、残留物と火星の資源を使ってなんとか生き延びる。物質、酸素や食料も必需品だけど、人間が生き延びるために必要なものは、情報と気晴らしと勝算だというアメリカンな物語。リドリー・スコット監督らしい、科学だけじゃなくて、政治や組織の事情などが障害になってなかなか話が進まなかったり、甘くはないが、リアルな分量の希望をちらちらさせながら生還を目指す流れ。厳しい条件下での行動には感情の加減が大事なんだな。激情に駆られても枯渇しても人は破滅する。もちろん、家族の一大事は、火星に置き去りにされるのとは違う。でも私はマークに同調して家族が生きて帰ってくるかどうかと、マークが地球に生還するかはリンクするかのように思っていたところがある。もちろん映画だから毎回100%生還するんだけど。

家族は家に戻ってきた。火星から生還したのとは違うけど、思いのほか、私のショックは大きくて、一連の非現実的な事実に心が追いつかず、火星じゃなくて地球だけど、置き去りにされて心の軌道がおかしくて、何も書けなくなってしまって、職業上の危機かもしれない。