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【完全保存版】クラシックピアニストが電子ピアノでコンサートをするための教科書

はじめに

クラシックピアニストといえばコンサートホールでフルコンサートグランドピアノを使ったコンサートというイメージがあると思います。

しかし時にはグランドピアノがない会場での演奏のオファーが来ることがあり、そういうときは電子ピアノでの演奏が求められます。

また、保育園・学校・介護施設・病院などでアウトリーチコンサートを積極的に行っていく場合も、電子ピアノの演奏スキルを持っていると活動の幅が広がり、よりたくさんの人に寄り添った演奏が可能になります。

筆者は10歳のときに鍵盤ハーモニカにハマり、ピアノを習い始めて最初の1年は30年物のコロンビア社のエレピ(電子ピアノとはまた違います。エレクトリックな音色を出す専用の楽器です)を使って練習し、その後、アップライトピアノグランドピアノと経てクラシック音楽を学び音楽大学の大学院を卒業し、フリーランス演奏家として活動しています。近年は本格的に電子ピアノシンセサイザーを用いた演奏もしており、少し異色の鍵盤経歴があります。

電子ピアノを使った演奏場所の実績としてはコンサートホール(ステージ、ロビー)、ホテル、料亭、バー、美術館(ギャラリー)、病院、介護施設、庭園、古民家、野外ステージ、野外劇場、美容サロン、神社、お寺など様々なシチュエーションでの演奏経験があります。

↑ 日本料理 寶樂(たから)でのソロライブの様子

最近はクラシックの演奏家がアウトリーチコンサートを行うことが音楽家としての社会活動になりキャリアにもなるということで少しづつ浸透しており、電子ピアノを使う必要性に駆られているピアニストが増えていると思います。

そんな人たちに向けて、僕の経験を基に電子ピアノでコンサートをするための準備や知っておくべきこと、購入のヒント、注意すること、僕が体験したエピソードなどを書こうと思います。多くの方の参考になればうれしいです。

今までの電子ピアノの経験を全てつぎ込んだ2万字の記事です。
ブックマークしてご活用ください。

コンサートで電子ピアノを使うメリット

1.演奏の場が増える

やはり最大のメリットはこれだと思います。
電子ピアノを持っていれば、ピアノがない会場でもコンサート会場にできます。演奏を必要としているけれど楽器がないという場所に演奏を届けることができます。

仕事の幅が広がり、どこでも演奏できるピアニストとして重宝されると思います。

2.会場に合わせた設営ができる

やりたい演奏形態や演出に合わせて会場レイアウトを自由に設営することができます。
また、電子ピアノは音量を自在に調整できるので、例えば大音量を出せないような会場や、他の人に配慮が必要な病棟などでも柔軟に対応できます。
これによって寄り添った演奏ができます。

3.多彩な音色で演奏可能

電子ピアノにはピアノの音だけでもたくさんの種類があり、ピアノ以外にも、エレピ、ストリングス、ハープシコード、パーカッション、効果音、シンセ音、など多彩な音色が収録されていて、パフォーマンスの可能性がグッと広がります。

僕の使っているRolandのRD-2000には1000種類以上の音が入っていて、工夫次第で様々な演奏ができます。これは電子ピアノだからできるパフォーマンスです。

4.My楽器という安心感

弦楽器や管楽器などの奏者は普段から自分の楽器を持ち歩き、練習も本番もそれで演奏しますが、ピアニストは自分のグランドピアノを持ち運ぶのが大変なので、その会場にあるピアノを弾くのが一般的で、ピアニストの大きな特徴のひとつです。
現場に行ってみたら調律のヒドいガタガタなピアノだったなんてこともありますが、それでも弾くのがプロ。しかしコンディションの悪い楽器で本領が発揮できないのは辛いところ。

ところが電子ピアノは、いつでもどこでも同じ鍵盤タッチ、音色、機能で絶対的な安心感があります。

5.調律の必要がない・弦が切れない

4番に通ずるものがありますが、電子ピアノは音程が狂わないので調律師さんが要りません。僕は弦をよく切るのですが、電子ならそもそも弦がないので、高額な調律費や修理費がかかりません。

逆に言えば本番で調律をお願いできないということでもあり、全ての音が自己責任です。電子ピアノは音量や響きの大きさ、ニュアンスなどをカスタマイズできるので、自分でいい音を作る方法を覚えると豊かな表現ができます。MY楽器を持つということはヴァイオリンなどのように音の調整も自分で行うことになります。それが楽しさでもあります。

6.安価

アコーステックピアノ(電子じゃないピアノ)の場合、フルコンサートグランドピアノは2000万円、家庭用のグランドピアノでも100~200万円はします。
電子ピアノの場合、選ぶものにもよりますが、フラッグシップモデル(最上級モデル)でも25万円ほど、アンプ(スピーカー)を含めても30万円で揃います。30万円で最高の環境が揃うと思えば、楽器としてはかなり安い方です。また、最近は5万円台で質のいい88鍵モデルの販売が流行っています。

7.自宅練習用に重宝する

買えばMy楽器なので、もちろん自分のもの。
電子ピアノはヘッドフォンが使えるので、深夜など音が出しづらい時間帯でも思い切り使えます。いつでも譜読みできます。グランドピアノのように場所をたくさんとらないし軽いので設置や移動しやすいのもいいところです。

コンサートで電子ピアノを使うデメリット

デメリットも理解しておいた方がいいと思うので書きます。

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