泥臭い女の子って良いよね。『いっちゃえマリンちゃん』の感想

 またおおばやしみゆき先生の著作の感想になる。『いっちゃえマリンちゃん』という少女漫画が個人的には好みだ。全一巻で、手に取りやすい。

 あらすじ

 小室マリンという主人公は、クラス一の、いや、街全体で有名な美少女女子高生である。そんな彼女が恋している相手は、クラスメイトの松川である。彼は特に目立ったところのない地味な生徒だが、そんな彼のことを何故か好きになってしまった。マリンは松川と結ばれるために様々な手を尽くす。そして、結ばれた後も問題は続出していく。そんなマリンの悪戦苦闘の日々を綴った物語である。

マリンの悪いところ

 マリンはとにかく松川を無意識に傷つける。言葉選びも下手くそだ。そのせいで彼から嫌われてしまうことも度々だ。例えば松川が読んでいる本に関心を示して好意を見せようとするシーンだ。

「何読んでいるの? おもしろい?」と聞くつもりだったのに

「そんな本読んでて何が楽しいの?」と口では変換されてしまうのである。

 これでは松川が怒るのも無理はない。どんな美少女からでも、こんな言い方をされてはムッとくるに決まっている。

 付き合ってからも、この問題は散見される。裸を見せ合うのが恥ずかしいだけなのに、彼に裸を見せるくらいなら死んだ方がマシという言葉をぶつけてしまう。これは男にとっては恋人からの拒絶と受け取るしかない。案の定、別れを切り出されてしまった。その後、誤解が解けて復縁するが。

マリンの泥臭さが魅力的

 付き合う以前に、松川が吉田という他の女子とデートをする話がある。その後をマリンは尾行するのだ。大雨の中、松川は彼女にビーズのリングを買ってプレゼントする。しかし、そのリングは深い草むらの中に落ちてしまう。雨でドロドロになり、よっぽど丹念に探さなければ見つからないほどだった。衣服の汚れを避けるために、松川と吉田はその場を去る。

 だが、マリンはそのリングを探した。ずぶ濡れになりながら、泥まみれになりながら。なぜなら、松川が吉田ではなく自分にそれをプレゼントしてくれるのを夢見ていたから。もし運命が少しだけ違ったのなら、自分のモノだったかもしれないと。なら、そのリングは自分のものにしていいじゃないかと思ったのだ。衣服の汚れも全く介さず、風邪気味になるまで。その甲斐あってか、リングを発見した。マリンは吉田に渡すことはせずに、それをポケットに入れて持ち運ぶことにした。人前では絶対につけることのない、大事な思い出にしようと思ったのだ。翌日、そのリングがポケットから転がり落ちて拾ったことが松川たちにバレてしまうが。それを見て、松川はマリンが本当は自分のことを好いてくれていると気がつき、二人は付き合いだしたのだが。マリンの泥臭さといじらしさでモノにした恋だったと言えよう。

終わりに

 最近のブームとしては、変わった女子が地味な男子にちょっかいをかけてくるという作品が流行だ。『からかい上手の高木さん』などが例として挙げられるだろうか。そういった作品は基本的に男子視点のことが多い。だがこの作品は、むしろ女子視点からの作品である。ツンデレとも違う、不器用な美少女が主人公の物語だった。不器用ながらも実ったその恋が、どうか末永く続きますようにと願わずにはいられない。

 


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