"Brand new touch" 「歌を読む」#1

noteをご覧の皆さん初めまして、乾まさきと申します。文学を体現する人間になるべく日々精進しています。以後お見知りおきを。

突然ですが、私は音楽を聴くことが大好きです。邦楽ロックを中心に、ポップス、アニメ、ボーカロイドなど、かなり幅広いジャンルを聴いているという自負があります。

そこで質問です。皆さんは音楽を聴くときに重視する要素は何ですか?

トラックの格好良さとか、テンポの速さとか、色々な基準があるでしょう。

私は、いつも歌詞を重視して音楽を聴きます。

物書きを志している者として、小説や漫画などの書籍を読むことももちろん好きですが、それ以上に、音楽が私の創作観に与えた影響の大きさというのは計り知れないものがあります。

そこで、このnoteでは私が特に好きな歌詞やアーティストについて綴っていきたいと思います。

今回取り上げるのは、こちら。

「”HELLO!!”」

日高愛(CV戸松遥)、水谷絵理(CV花澤香菜)、秋月涼(CV三瓶由布子)

2009年に発売されたニンテンドーDS用ソフト「アイドルマスターディアリースターズ」の主題歌で、同年発売のCD「THE IDOLM@STER DREAM SYMPHONY 00 “HELLO!!”」に収録された一曲です。(購入はこちら(Amazon))

作詞は「アイドルマスター」シリーズ(以下「アイマス」)における名曲の数々を手掛けたyuraさん。アニメのオープニングテーマである「READY!!」や「キラメキラリ」「GO MY WAY!!」などは、シリーズのファンでなくても聴いたことがある人は多いのではないでしょうか。

この曲の中で私が衝撃を受けたフレーズがこちら。

さあ笑顔になろう もっと明日を好きになれるように
さあ涙になろう きっと前より強くなれるように
https://www.uta-net.com/song/275774/

アイドルを主人公とするコンテンツの楽曲だけあって、一曲を通してポジティブできらきらした雰囲気を纏った詞なのですが、この曲の詞は(というか、yuraさんの書く詞は)それだけに留まらない深みがあると思います。

それは、笑顔と涙を、等しい価値をもつものとして扱っている点。

ポップスの歌詞では、”涙を拭いて笑って”とか”泣いてもいい”みたいなフレーズがよく使われますよね。

これって、「泣くのはよくないことだ」という価値観によって生まれる言葉だと思うんです。”泣いてもいい”というのは、”泣かない方がいい”と同じ意味ではないですか?

泣かない方がいいけれど、今は泣いてもいいんだよ、と。

実際、悲しいことや辛いことからは目を背けて、笑って生きていければとても楽ですし楽しいでしょう。そういう歌詞を否定するつもりは一切ありません。

でも、現実ってそう上手くはいかないじゃないですか。特に、何かやりたいことがあって目標や夢を達成しようと思ったら、楽しいよりも辛いこと、悲しいこと、苦しいことの方がよっぽど多いと私は思います。

そして、夢に向かって努力をしようと思ったら、それらと向き合うのは必須です。失敗は成功のもとと言うように、後悔や失敗と向き合って反省するという過程を経なければ、夢なんて叶いっこないのではないでしょうか。

こんなふうに湿っぽく説教くさい内容を、yuraさんは”さあ涙になろう”という極限まで短いフレーズで、しかも積極的に受け入れて糧にしてしまおう、とポジティブに表現しているんです。

さらにそれを”さあ笑顔になろう”というフレーズと並べて意味を強調するというのは、あまりにも言語的なセンスが高すぎます。yuraさん本当に凄い。

私がこの曲を初めて聴いてからもう6~7年は経ちますが、〈自分もこんな素敵な一文を生み出したい〉という創作のモチベーションとして未だに色あせない輝きを放つフレーズです。

また、yuraさんの書く歌詞の特徴として、言葉遊びや韻を踏むテクニックの巧みさも挙げられます。「”HELLO!!”」の中で私が特に好きな言葉遊びを紹介しますね。

今目指してく 私たちのストーリー
BRAND NEW TOUCH 始めよう SAY "HELLO!!"
https://www.uta-net.com/song/275774/
教科書が全てじゃない 正解なんてない世界
いつか見たい掴みたい まっすぐに進む光
https://www.uta-net.com/song/275774/ 

記事のタイトルにもした”BRAND NEW TOUCH”というフレーズ。

これは「アイドルマスターディアリースターズ」がタッチスクリーンでの操作を特徴とするニンテンドーDSというハード向けのソフトであったことにかかっています。

そうでなくとも、〈今まで知らなかったものに触れる〉というニュアンスでも 耳に新しい、素敵なフレーズだと思います。

続いて、”いつか見たい掴みたい”というフレーズですが、これはひらがなに直してみるとわかります。

”いつかみたいつかみたい” ――同じ音の繰り返しになっているんです。

これは聴いていても自分で口に出してみてもすごく心地よい、優れた言葉遊びだと思います。

最後になりますが、数年前、星野源さんが自身のラジオ番組でyuraさん作詞のアイマス曲「M@STERPIECE」を流し、歌詞について熱弁をふるったという話題が舞い込み、アイマスファンの中でちょっとした騒ぎ(?)になったということがあります。星野さんもかなり面白い歌詞の考察をしていらしたので、気になる方は調べてみてはいかがでしょう。

それでは、今回はこの辺で。次回投稿日時は未定ですが、徒然なるままに思いを綴っていきますので、今後ともよろしくお願い致します。

                              乾まさき

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