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映画系(2024/8/6):Final Re:Quest劇場版後編試写会記念レビュー(内容をあまり割れないので抽象度の高い書きぶりになります)


1.ここはなんだ?

RPG風ドット絵アニメ "Final Re:Quest" というのがあり、劇場版企画があり、クラウドファンディング等で応援をしてきたのでした。
5年後、2024/8/1、Youtubeで支援者限定で後編が公開されました。前編はブラッシュアップの上で公開済なので、これで一通り全て公開されたということになります。
(支援者限定という趣旨なのでリンクは貼りません。悪しからず)
その話をします。

2.前編記事リンク



3.劇場版前編はどういう作品か?

ゲームプレイ終了後、長らく放置されてきた、携帯ゲーム機用RPGソフト "Final Quest" 内部の話。
電池が尽きかけており、データ上の世界は滅茶苦茶になっていました。
かつての7人の仲間キャラたち、別して老将軍戦士アソンテは、謎の悪意ある巨大バグによる、新たな世界滅亡の危機に立ち向かう。という筋書きです。
後編では途方も無い戦いと、驚くべき新事実の発覚と、そして奇蹟が起きるのですが…その話はまた後にしましょう。

4.どんなキャラがいるのか?

4.1.戦士アソンテ

作中の実際の主人公。プレイヤーへの7人の仲間の1人で、忠誠心の高い老練な老将軍戦士。
プレイヤーがいないバグまみれの世界で流浪しつつ、かつての仲間たちと合流し、やがて世界滅亡の危機の中、自分たちに付与された役目を知ることになる。

4.2.ミイポン

原作と大きく異なる役柄。
システム側のマスコットキャラ。ゲーム世界からアソンテらプレイヤーキャラのデータ抽出を行い、別のゲーム世界に移植するのが役割。
原作とは異なり、アソンテとは特に旧縁はなかった。
電源消失により滅ぼうとしているこの世界に全く愛着がなく、救おうとしている7人の仲間たちが、あくまでこの世界を救おうとするので、途方に暮れている。
また、何らかの理由でデータ抽出は失敗しており(後編でそれは巨大バグの仕込みのせいであることが明かされる)、本来の任務が果たせないので、ますます途方に暮れている。
可愛げがなく小憎らしいが、トラブルシュータ―として送り込まれたのに誰も話を聞いてくれなくて、状況がもたついていて困り果てているところは、個人的には同情するところがある。

4.3.商人リカトク

7人の仲間の1人。金に汚いが、侠気のある大商人。
バグで死んだ妻子の復活の方法を探して、アソンテに焚きつけられて同行する。
もたついている民衆を話術で先導して物語を駆動している。

4.4.ヴァルキリー・シロテ

7人の仲間の1人。
機械めいた音速竜に乗って、アウラ(オーラ)を武器に成形して、斬る薙ぐ貫くの大暴れをするのが生きがいで、小難しい話に対して全く聞く耳を持たない。
一族郎党が全滅したので投げやりになって墓守をしていて、近寄る者は皆殺しにしていたが、後述の偽シロテの、命と引き換えの、偽物ながら堂々たる発破に心を動かされ、アソンテらに同行する。
行く先々で大暴れしては膠着した事態を打破して物語を駆動している。

4.5.神官テネ

原作と大きく異なる役柄。
7人の仲間の1人。信仰が篤く聡明なおかっぱの美少年。
世界復活の要となりうる、己が属する神聖教会を防衛していたが、巨大バグに破壊され、アソンテらに同行する。
後編では、巨大バグが忌み嫌い、切り離し、隠し通し、葬り去りたい、ある秘密を解き明かす、という大役を担っている。

4.6.神聖教会教皇

おそらくはゲームの最初のマップでもある神聖教会の最高権力者であり、最初にゲームの説明を行ってくれるキャラ。
それはつまり、ゲーム世界の住人にとっては、「実はこの世界は現実の誰かの戯れのために作られたものにすぎない」というあんまりな真実を説明している、ということでもある。
彼なりにゲーム世界から現実世界にはたらきかけることを考えており、それは後編でテネに大きなヒントを与え、それが結果的に現実世界へのはたらきかけを成立させる大きなカギとなる。
本人は前編で神聖教会と共に滅びた。

4.7.キャプテン・モケンキ

原作と大きく異なる役柄。
7人の仲間の1人。高速高機動武装飛空艇「シロカネ」船長の海賊。
神聖教会で滅びを待つ難民を格好良く救出し、後編では大型戦力の一環として格好良く大暴れする。

4.8.ロボット・マツテル

原作と大きく異なる役柄。
7人の仲間の1人。古代文明の自律機械。超強力なビームを有し、また変形によって通常行けないところへ行ける。
前編では巨大バグを撮影し、巨大バグを構成している強大なオブジェクト群が何に由来するか、そしてどうやって攻略するかというところで大きな貢献をする。
後編ではシロテの死んだ相棒である音速竜・ヴァルレイに変形して、大型戦力の一環として大暴れする。

4.9.魔女クレテア

原作と大きく異なる役柄。
7人の仲間の1人。魔法研究組織マギカの長である眼鏡のお姉さん。綺麗事の立場にある神聖教会の徒たるテネをからかったり嫌がられたりしている。
ゲームの仕様をある程度知っており、7人の仲間と、世界とシステムに選ばれた偽勇者の誕生をもって、後編で巨大バグ大反攻作戦指揮官として、持てる知と力と部下と人脈を結集する。

4.10.偽勇者

原作と大きく異なる役柄。
世界を救い人々を導くべく勝手に立ち上がった、心意気だけは立派なただの小僧。後にアソンテと行動を共にする。
元来この世界にいなかったとされる謎の存在。元来この世界にいなかったとされる謎の偽シロテとは、同じ境遇のため恋人同士であった。
が、彼女の死に直面し、また人々を救えない自分に絶望し、世界に対して願をかけた結果、どういう訳か世界=ゲームシステムに勇者として認定され、かつてのプレイヤーとほぼ同じ性能を手に入れてしまう。
7人の仲間たちと共に世界の滅びの中で抗う。
実は、原作と大きく異なるある秘密があり、それは巨大バグが彼を潰そうとする動機でもあったことが、後編で明らかになる。

4.11.偽シロテ

原作に存在しないキャラ。
元来この世界にいなかったとされる謎の存在。元来この世界にいなかったとされる謎の偽勇者とは、同じ境遇のため恋人同士であった。また、アソンテによると、何となく良家の品格を感じさせるようだ。
前編で自棄になっていたシロテに、命懸けの堂々たる発破をかけ、シロテを立ち直らせ、民衆を旅立たせ、己は死ぬ。
しかし、ある奇妙な場所で、奇妙な再開をすることになる。
実は出自にある秘密があり、それは巨大バグが忌み嫌い、切り離し、隠し通し、葬り去りたい、ある秘密に他ならなかった。

4.12.巨大バグとそのコア

このゲーム世界を積極的に滅ぼそうとする奇怪な姿の超特大オブジェクト。
中にコアがあり、その正体、特に与えられた役割と本人の意志の乖離が、このゲーム世界をぶち壊しにしてやりたいという動機の要となっている。
己を持ち、聡明で、誇り高いその役割と意志なら、新たに増えた「その役割」にキレまくる気持ちはまあ分かる。一見これを建設的に解決する術があるとも思えない。
しかし、己が忌み嫌い、切り離し、隠し通し、葬り去りたかった「その役割」たるものによる、ある意表を突く解決が、最終的には待ち受けていた。

4.13.魔王

原作と大きく異なる役柄。
"Final Quest" ラスボス。滅びたはずだが、ある奇妙な場所で、奇妙な登場をすることになる。
名前が前作と異なり、それは現実世界のプレイヤー・タケルに直球で刺さる大きな意味を持っていた。
また、原作とは異なり、テネとは特に旧縁はないし、亜人の軛とも関係がない。

4.14.タケル

原作と大きく異なる役柄。
現実世界の第一のプレイヤー。
元々はこの壊れかけたゲームから、アソンテらプレイヤーキャラを抽出して別のゲームに移行することを意図していたらしいが、その後なぜか動くべき時点で動いておらず、送り込まれたデータ抽出ソフトであるミイポンは困り果てている。
最終的に、このゲーム世界からのはたらきかけを目にして、いくつかの大きな行動を起こす。

4.15.アヤナ

現実世界の第二のプレイヤー。
タケルに好意を寄せており、このゲーム世界の7人の仲間+αにあるメッセージを託して、タケルに恋文の代わりとしてこのゲームを渡したらしい。
しかし、そのメッセージは、巨大バグのコアにとっては不愉快極まるものであったため、妨害の果てに伝わらずに今に至る。

4.16.第三のプレイヤー

原作に存在しない、後編の要。
これに関しては説明を一切行いません。

5.細かい感想いろいろ(ネタを割りたくないのでぼかします)

ネタを極力割らないように紹介します。

ミイポンには愚かしいゲームの理屈。
が、ゲームとしては、ミイポンの理屈は「舐めているのか?」だ。
(特に巨大バグのコアは、己があり聡明で誇り高い分、心底キレている)
とはいえ、一視聴者としては正直「全員不毛」という醒めがあり、映画としてはリスキーかも?
(でもここは「愚かとか言うな。彼らは彼らなりに頑張ってたんだ」と思える描写が繰り広げられるので、解消される溜めの展開と考えればよいか?)

今までの視聴者も知らない、割と意表を突く改変。
巨大バグの素材の由来は?
偽勇者と偽シロテの正体と名前は?
巨大バグのコアに対して、どうすればけりがつけられるのか?
劇場版ではこのへんかなり整理されて納得が行きやすくなっている。

・上手く行かないのでヤケクソになったミイポンが、膠着した事態を打開するシーンは、その後の混乱も含めて意表を突く。
が、ヤケクソと、膠着した事態に乱入して打開してくれる動機とが、スッと直結してくれない。そこは映画としてはリスキーか?

上位存在たるプレイヤたち、世界を恋文にするたあ剛毅なもんだぜ(だからこそその要を持たされた巨大バグのコアは心底キレているのだが)
巨大バグのコアが忌み嫌い、切り離し、隠し通し、葬り去りたい、恋文と己の要となるもの。それは何か?

・テネは本当に賢いので、
「この世界が恋文だとしたら、巨大バグのコアが持たされているはずの、肝心のものがないように思える。『なくした』それはどこにある? それはきっと、『ないはずなのにある』ものとして…
というところまで分かる。
(正直に言うと、ここも映画としてリスキーなところに見える。
正直、一視聴者としては映画に没入していて、テネと同様に推理できる状態にない。
テネの推理に、納得というより
「そうなの!?」
となっていた。

視聴者には納得できない人もいるはず。
→考えられる対策
「巨大バグのコアが持たされているはずの肝心のものがない」描写を明示的にする。
例えば「肝心のアソンテが巨大バグのコアの名前を知らないのはおかしい」とテネが露骨に訝しむ、とかの没カットがあれば埋め直すとかでイケるのでは?)

・データ抽出程度に考えていた第一のプレイヤー・タケルが、第二のプレイヤー・アヤナの恋文を見て「このゲーム全体が、失われるべきではない宝物である」と理解した一連の流れ。
視聴者の想像力を要するが、ここは大事なところなので、そのままが一番だ。

・巨大バグのコアの屈辱を晴らす方法は存在しない。
だが、巨大バグのコアが捨てたものが、知らないうちに巨大バグのコアの願望を果たしており、それは結果的に巨大バグのコアの屈辱を晴らすに足るものだった。
ここの解は意表を突き、素晴らしい。

事前説明会にあった「ゲーム世界のキャラの自由意志と音声はバグがもたらしたものであり、バグが直ったらそれらは消える」という設定は採用されていない。事件解決後も、依然として皆、意思を持ち、喋っている。

・アソンテは、ゲームの外で行われたはずの、タケルの描かれない冒険について、想いを馳せてやれる。
隔絶した世界の間に、メッセージは届き、向こう側に響き、タケルはどうにかなって、なんかしたはずなのだ。
・そしてそれが、我々の感覚でも、ささやかながらもちゃんと立派なリアル勇者的行動ではあり、しかもちゃんと花開いたということが、最後に意表を突く形で証明される。

・タケルはこのゲームを、何一つ軽んじてなどおらず、一生物の宝物として大事にしている。そして、現時点で最も大事な相手、第三のプレイヤーに渡したのだ。
・母子キャラの隠喩も、視聴者の想像力を要するが、ここも大事なところなので、そのままが一番だ。

・最後のゲームの住人達、何ビックリしてるんだろうな。私がピンと来ていないで、他の視聴者には分かるのか?

昔タケルが北海道に去っていったところが伝わりにくく、そうなると釧路云々は違和感になってしまう。
ここは原作はビジュアルで明示していたが、今回はないので分かりづらくなっている。
映画としてはリスキーかも?
没カットで補完できないものか?

・第三のプレイヤー、後で
「ひょっとして自分はタケルとアヤナの惚気を聞かされているのか? ギャー! 反応に困るが!?」
と気付くかもしれん訳か。
その時はタケルとアヤナは
「これは大事な事柄です」
とちゃんと説得するんだぞ。頼むぜ…

プレイヤーがゲームを軽んじたりせず、大事にするということ。少なくともこのゲームは受け継がれる一生物の大事な宝物となった。
恋文としての世界という、子供の戯れにして、暇を持て余した神々の遊び。
隔絶した世界の間に、メッセージは届き、向こう側に響いて、そして返って来た。

・説明不足はあるが、全体としては非常に素晴らしい映画だったと心から思える。
・説明、今からでも何とか没カット組み合わせて補完できないかなあ…

以上です。
全体的には大変肯定的な印象です。
ここからさらにブラッシュアップされるはずなので、もっと素晴らしくなる、ということです。これは嬉しい。
ブラッシュアップ、お待ちしております!


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