『高校数学のロードマップ』A_2(数編)3『極限』

(※注:「理系に進学したいが数学が苦手な知人の高校生に、数学の良さを教える」というミッションのための草稿を、あらかじめWebに掲載して、ダメなところを指摘してもらおう、という趣旨の記事です)

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〇極限


●果てしない何かを扱うジャンル・解析学


・無限大や無限小について考えてみるということをすると、メチャクチャ疲れますが、ときどきこれが避けられないことがあります。
 例えば、後で書きますが、「無限大に伸びる数列の中身を全部足すと、特定の数に果てしなく近づく場合がある」というやつです。
 で、「無限大に伸びる数列の中身を全部足すと、特定の数に「等しくなる」場合がある」とスパッと言い切れないので、「ここはスパッと同一視していいことにしたい、そうしたらそれらを楽に演算できる」というニーズがあったりします。
 ですが、そもそも、無限大に伸びる数列は、有限の数列と違って、無限大なので終わらない訳です。そうなると、これを全部足すということがそもそも不可能なんですね。
じゃあ上のような話をうまいこと扱えないのか? ということで、「無限大や無限小の出て来る何かが、何かの値に果てしなく近づく」というケースを扱うルールがたくさん考えられました。

無限大や無限小などの果てしない何かを扱うジャンルを、解析学(かいせきがく)と言います。これで後述する極限や微分や積分を扱えます。
「極限とか微分とか積分とか、そんな今まで聞いたことのない、明らかに難しそうなもの、何の役に立つのか?」と誰しもまずは思うところですが、実は、解析学で扱う極限は、数論で扱う実数を定義するときにも必要になってきたりします。(高校数学でそこまでやるかはわからないので、「そうなんだ」と話半分に聞いてください。

●数列の中身を全部足すと特定の数に果てしなく近づく場合がある
・そんなわけで、数列の中身を全部足すと、特定の数に果てしなく近づく場合があります。
 非常に奇妙な例として、ある種の有理数の数列が無限に続く場合、その総和(無限の数列の総和のことを級数(きゅうすう)と呼びます。高校数学で出て来るかは分かりません)が、円周率の2乗に果てしなく近づく、という有名な話があります。なんと、(1×1+1/2×1/2+1/3×1/3+…)×6≒π^2です。(実際に計算してもよいですが、面倒なのでやらなくていいです。
(なお、”^”は「乗」を意味します。”x^2”は「xの2乗」という意味です。)
いっそ、(1×1+1/2×1/2+1/3×1/3+…)×6=π^2と言い切りたいのですが、言い切ってよいことにするという開き直りが必要です。(さっきの話ですね。)

・「特定の値に果てしなく近づく」ことを表す記号として、でかいlimを見ることがあるかもしれません。あれはlimitの略です。日本語では、果てしなく近づく先である特定の数、及びその記号であるlimのことを極限といいます。(英語ではまさにlimitといいます。)
 たいてい、”lim(n→∞)(数列)=特定の数すなわち極限”という書き方になります。
(本当は(n=∞)は括弧無しでlimの下の余白に書きます。これで「数列は、無限大の場合には、特定の数になる」という意味になります。)
(上の例の場合は、総和との合わせ技なので、”lim(n→∞) Σ(i=1)(n) (数列)=特定の数すなわち総和の極限”という書き方になります。これで「数列の、下は1の場合から上は無限大の場合までの全パターンを足したら、特定の数になる」という意味になります。)

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