『高校数学のロードマップ』B_2(参考編_数編)2(線)1(位相的構造と位相空間)

(※注:「理系に進学したいが数学が苦手な知人の高校生に、数学の良さを教える」というミッションのための草稿を、あらかじめWebに掲載して、ダメなところを指摘してもらおう、という趣旨の記事です)

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〇線

●数学における空間能力

★位相的構造の正体

・特殊な集合が持つことが出来る能力の中には、代表的なものとして、順序能力(順序的構造)、演算能力(代数的構造)、空間能力(位相的構造)があるのでした。
 これまで、順序的構造や代数的構造の説明はしてきたと思うのですが、位相的構造の説明はしてきませんでした。出来るだけ簡単に説明します。

・集合の中の元をいくつか選択して、部分集合(ぶぶんしゅうごう)というのを作ることが出来ます。(直感には反するのですが、全部選択してもよいですし、0個選択して空集合を作っても構いません。これらも部分集合に含めます。)
・可能な部分集合をかき集めて、部分集合全体の集合、冪集合(べきしゅうごう)というのを作ります。(冪乗と関係が深いのですが、説明しません。
・冪集合がとある3種類の公理を満たすと考えます。
説明が面倒なので、大雑把な意味だけ書くと、「集合を、いろんな部分集合を抱えたものとしてみなす。部分集合にはいろんな切り取り方があるが、可能な切り取り方は全部採用するので、どう切り取ってもよい。(切り取った結果が集合そのものだったり、あるいは空集合だったりしてもよい。)」ということです。
この、3種類の公理を満たす冪集合を、開集合系(かいしゅうごうけい)と呼びます。

・ということで、開集合系(かいしゅうごうけい)に含まれている切り取り方のパターンに従って、最初の集合を部分集合に切り取ることが出来るという約束にした場合、そういういろんなパターンの切り取り枠がいっぱい埋まったような構造の入った集合をイメージ出来ます。
この「部分集合の切り取り枠」という構造が、数学の空間能力、位相的構造の正体です。つまり、「部分集合を切り取れる」ことが空間能力の本質と言えるでしょう。
・例えば、線は位相的構造を持つ位相空間です。なので、いろんな切り取り方があります。
さらなる例としてパッと思い浮かぶのが、定規にある等間隔の区切りです。

・実は、線については、無限小に細分化出来るし、そこを点とみなせるので、究極的にはどこでどういう切り取り方をしてもよい。というメリットがあります。
・気を付けておきたいのが、別に位相的構造があるからといって、無限小の細分化が直ちにもたらされるわけではない。ということです。
この無限小の細分化は、実は実数を媒介することで得られるものです。
そしてそれは本来、空間能力とは別の、実数の性質、極限からもたらされたものです。
どういうことか? それはすぐ後で説明します。

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