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極楽いぬ生活 #1 眠らない子犬

2002年から2008年にかけて「PEPPY」で連載していたものを再掲しています。

眠らない子犬

一昨年の秋、ココアはうちにやってきた

否。高い運賃支払って新幹線で迎えに行き、着いたブリーダーさんちでどのコにするか3時間ほど悩みに悩み、大枚はたいて連れて帰ってきてしまったのだ。わざわざね。

こうして、わが家のワンコ史上最大の手間と時間とお金をかけてファミリーの一員となったこの子犬は、とんでもないヤツだった。

兆しは帰りの新幹線の中から。

ケージに入れると「キャオーンキャン、キャン」と虐待でもされているかのような声でなき続け、背広姿のほろ酔いオヤジに睨まれた。(ブリーダーさんのところで悩みすぎて、新幹線は最終だった)                     ケージから出すとチャンスとばかりにそこいら中を探索開始。少しもじっとしていない。膝の上で地味に闘いを繰り広げていると、今度は車掌さんに注意される。

「犬はケージに入れてください」

「ほんまに入れてもいいんやなぁ?」と言いたいのを堪え、仕方なくデッキへ移動した。隅の方で好きにさせていると、やがて膝の上で眠り始めた。ぐっすり眠った頃を見計らってケージに戻すが、すぐに這い出してきて膝の上で眠る。

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かわいい。けど、小さいくせに決して自分を曲げないヤツだと思った。

が、子犬のココアが子犬らしく眠ったのは後にも先にもこの時だけ。その後のココアは眠らない... どころか、いつも走って、いや、逃げていた。この上なくうれしそうに!

理由がなくても逃げていたが、自ら理由を作っても逃げていた。
逃げること = 生きるしあわせ って感じで。

子犬と言えば一日の大半を寝て過ごすものと思っていた私たちは面食らった。そして、「このイヌ、頭おかしいのかも?」と思い始めた。だって、どんな本を見たって、「一日中逃げている子犬も、中にはいます」なんて書かれてないんだもん。

そんなとき、一人の女がやってきた。
通称ムツ子。犬や猫の扱いがえっらい上手い友人だ。

ムツ子はよそん家(わが家)の床に遠慮なく寝転がって、まるで犬どうしのようにココアとガウガウした。彼女は激しく、タフで、根気強かった。

30〜40分経った頃、ココアは「まいりました」をした。うちに来て初めてのことだった。「もうじゅうぶんです」とばかり、部屋の隅に退散し、「えー。ココちゃん、もう終わり?おねーちゃんともっと遊ぼうよう」と誘う、ちょっと怖いムツ子を置き去りにして眠り始めた。

この日、ココアはよく眠り、ちょっとだけお利口さんだった。
(あくまで当社比です。レトリバーの子犬と比べれば、まちがいなく極道です。)

それから、私たち家族はムツ子のようにココアと遊ぶようにし、ココアは少しずつお利口さんになった。(当社比)

そして、3ヶ月後 . . .

一家全員寝込みました。
いや、マジで。
マジで。

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#犬 #犬のいる暮らし #犬好き #dog #シュナウザー #ゴールデンレトリバー

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