ミステリアス後輩
フランス人形みたいに色白で瞳の色もブラウンでとってもかわいい後輩がいた。
キチンと会話もするんだけど声もそんなに大きくなくおとなしい感じ。
感情があまり…というか出会った頃は全く表に出ないタイプなので楽しいのか悲しいのかとてもわかりづらかった。
指示された仕事はキチンとこなすがそれ以上はピッタリやらない合理主義者。
もちろんとてもいい子だったので今となれば自分と違う若い感性とか考え方に触れられて楽しめたけど、最初はどうやってコミュニケーションとっていいか少し戸惑っていた時期があった。
ある時セミナーがあったので外でランチした際にコミュニケーションを取ろう‼︎と思い
いぬーぴー:「なにかオススメのアプリとかハマってるアプリある?」
ミステリアス後輩:「え〜っと…」
といいながらiPhoneのトップページをスクロールし始めた。
ちらっと覗くとアプリビッシリ‼︎5〜6回スクロールしてる‼︎
いぬーぴー:「ってか、めちゃくちゃアプリ大量入ってるやん笑‼︎」
ミステリアス後輩:「一人暮らししようと思って…お部屋探しのヤツを…」
職場でもキチンと整理整頓出来てるタイプだったのでいい意味でギャップがあって人間らしい一面にお互い笑った。ちなみに一人暮らししたのはそれから5年後ぐらい。
歓迎会や新年会にはいつも女子チームで行く行きつけの焼肉屋があった。
昭和レトロ感満載の焼肉屋で荷物に匂いがつくからと到着したらゴミ袋に上着も荷物も入れる。洋服もその日は洗える服を着てくるのお約束。店内の煙がめちゃくちゃ目に染みるんだけどホルモンや他のお肉めちゃ美味しくて、私たちが予約をする時は普段メニューにはないのだが「豚汁お願いします」っていうとおばちゃんが作っておいてくれるのだ。一度女子13人で行った時、最初から全員白飯注文してお肉ワンバウンドさせて食べ、おかわりする女子何人もいた際、「白飯のお釜が空になった‼︎」と言われ部活の男子みたいだねと笑ったことがあった。
その時もミステリアス後輩は面白さを発揮。
豚汁が残りわずかとなり、おかわり希望者で譲り合っていた時、
ミステリアス後輩:「アタシ具しか食べないので少なめでいいです…」
みんな:「えぇ〜〜〜〜〜っ⁉︎」
お家でも味噌汁は具しか食べないんだと…。
また瓶ビールを注文したのだが栓抜きどこかなぁ〜と話してた時
ミステリアス後輩:「栓抜き…開けたことないです…」
年齢が上層部:「えぇ〜っ⁉︎ホントに⁉︎今、体験して開けてみなよ〜‼︎」
と生まれて初めての栓抜きを体感したのであった。ちなみに缶切りもやったことないっていってたな。
ある時ミステリアス後輩が出張でその間にやっておいて欲しいことを別の後輩に頼んだだが指示があまり上手く伝わっておらず困惑してしまったことがあった。
次の日ミステリアス後輩と頼まれた後輩と集めて内容の確認をした。
ミステリアス後輩がまだ仕事を頼むのに慣れておらず”頼む”っていう行為申し訳ない気持ちがあったせいもあり、うまく伝わらなかったのが原因とわかりその場は解決ムードで終えたのだが、ミステリアス後輩はなんせミステリアスなので表情が読めない…。
注意されて納得していないのか、落ち込んでるのか…?
そしたらくすん…くす泣き始めてしまった…‼︎
どうしよう…⁉︎追い詰めちゃったかしら⁉︎パワハラ感じたかしら⁉︎
けど…表情だけじゃ読めない…わからない…わからないものはわからない。
それまで積み重ねたささやかなコミュニケーションを信じてドキドキしながら思い切って聞いてみた。
いぬーぴー:「ミステリアス後輩ちゃん…あの…それはどういう涙なのかなぁ?」
ミステリアス後輩:「……(注意をちゃんと)言ってくれたことが嬉しくて…」
いぬーぴー:「あ⁉…︎え⁉…︎嬉しい涙なの⁉…︎」
超困惑。
ミステリアス後輩:「はい…言ってくれてありがとうございます…くすん」
いやぁ〜よく聞いてみたもんだ。そのまま聞かなかったら怒られて泣いてるんかと思ったよ。
この経験からミステリアス後輩とはもっと距離が縮まり仕事でも彼女なりの強みを徐々を発揮していった。
なかなか表情が読み取れない鉄仮面後輩からミステリアス後輩っていうキャラまで発展。もちろんブレない彼女の強みだけどこちら側がいかに先入観持たずに接してその子個性を活かしていけるかによるんだな…と痛感する後輩だった。
あの後輩使えないな…っていうやつはオマエが使いこなせてないだけじゃんって思うようになった。自分で使いこなせてませんってみんなに言っちゃうようなもんだよね。
そうはいっても、いぬーぴーもデキた人間ではございません。
昭和世代のバリバリの先輩後輩の体育会系、部活の時は水飲むな世代なので
先輩はこうあるべき、後輩はこうあるべきという偏見もある。
そして全ての後輩が受け入れられるわけじゃないから正直苦手な後輩は別の後輩に面倒を見てもらうようお願いしたり、自分だとうまく伝えられないから別の人にお願いしたりしてた。
自分が得意なことは率先して苦手なことお願いするという精神が生まれたのも、そもそも会社から与えられた任務が、全くうまくこなせず後輩やってもらうという結構な挫折を味わったからかも。その話はまた別のところで。
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