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私と鉄塔の町編

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21歳くらいに書いていた何か
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2014年11月の記事一覧

鉄塔の町 9

父はいつも母の腹の中で廻っていた。鉄塔にすすられる母を美しいと思って、父は夜と一緒に食われた。待ち望んだ暴発は思いもかけず現れたが、それでも父の結末は父自身が望んだことであって、彼が虎視眈々とねらっていたことなのかもしれないが、結局今となっては本当のことはわからないし、誰が苦言を呈しても過ぎてしまったことは覆すことは出来ない。母の妄言も欲望も淀んだ血液も、そこに微かに流れる交流電燈も、受け止めるこ

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鉄塔の町 8

母は私の鬼だった。小さなマンションの一室に君臨する絶対的な存在だった。剃刀の刃にしなびた心臓を光らせ、女性特有の過度なヒステリーをまるでアクセサリーみたいに身に纏って、父を懐柔し私を丸め込んでいた。しかしそれでよかった。我が家はそれでよかった。ヒエラルキーは安定し、綺麗に四角い箱を保たせることができていた。父も私も納得していたし、母はそれで満足なのだから何処にも問題なんて無かった。

母親から娘へ

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鉄塔の町 7

一つがわかればすべて芋蔓方式で答えが出てくるかと思ったが、それは私の大きな勘違いであった。言葉とサトウ君を結びつけたところで分かったのはただそれだけの事で、欠けた卵の未熟さとかやりきれず消滅する未来みたいに答えは明白だったのだ。『記憶のサトウ君は綺麗に消えている。』

彼がこの町にやってきたのはいつだったかわからないが、雨が降っていたことだけは覚えている。梅雨の湿気をはらんだ雨だったかもしれないし

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