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【読書】豊かな国ほど人生の意味を見つけづらい

世界一しあわせなフィンランド人は、幸福を追い求めないという本を読みました。

ここ最近「ビルゲイツが絶賛」とか「ラリー・ペイジの愛読書」みたいな触れ込みの本を読むことが多かったので、久々にそんな厚さがなくポップな本を読もうと思いノリで選びました。

読む前はてっきり、フィンランドが他の国より優ってるところを楽しく紹介するような本だと思っていました。

しかし実際は様々な哲学者の言葉を引用して内省を促すような内容で、むしろここ最近で読んだ中で一番抽象的で周りくどい本だったと思います。

※著者自身がフィンランド人で、ハーバード大で「人生の意味」について研究を続けているみたいです。

この記事では単なる引用ではなく、本書が伝えたい大枠を私自身の言葉も織り交ぜて紹介しようと思います。

世界の幸福度調査について

毎年話題になるのでご存知の方も多いと思います。この記事にも書かれているように、日本はいつも先進国の中でワーストクラスで、フィンランド初め北欧諸国は上位にある傾向があります。

こうした記事を読んでいると、日本は経済的には豊かでも心は貧しく、フィンランドの人達はさぞかし心は暖かく穏やかな日々を過ごしているのかと思う人も多いかと思います。

しかし実態はそんなことはなく、フィンランド人は内気で繊細な気質で、うつ病になる人の割合も多く、幸福度ランキング1位とはいえ誰もが「生きる意味や目的」という人生の最も大きな喜びは見つけづらいのが現実だそうです。

豊かな国ほど自分の人生の価値に疑問を抱きやすい

基本的にGDPが高い国ほど幸福度も生活への満足度も高くなる。

しかし逆にGDPが高い国ほど「自分の人生の目的や意味は?」という質問に対して「ない」と答える人の割合が多い。実際にそういう国の方が自殺者が多い。

時には楽しく過ごせたとしても、結局はほとんど毎日が同じことの繰り返しで、退屈でそこから抜け出したいと思いつつも抜け出すことができない。

そういう人は少なくないと本書では書かれています。

幸福という悲しき人生の目標

かつては幸福というのは社会の目標だった。しかし1960年代以降、幸福は社会の中で個人が追求するものだという意識が強くなった。私達は今ありとあらゆる面で幸福になるようにと背中をつつかれている。

幸福=単なる感情

社会、メディア、企業のマーケティングでは「こうなれば幸せになれる」という呼びかけが頻繁に行われている。しかし幸福というのは本来単なる感情に過ぎない。

上述の幸福度ランキングで客観的な指標に基づき幸福とされる先進国は、国民の主観での幸福度調査においては一気にランクが下がってしまう。

逆にパラグアイやコスタリカと言った国々がトップ層に上がってくる。

つまり経済的に豊かな先進国の人ほど、パラグアイやコスタリカの人達が幸せと感じられる毎日を送っていても、「もっと幸せになれるのでは」「自分は他の人より不幸なのでは」という疑念が生まれやすいということになる。

お金=幸せには上限がある

欧米諸国においては、年収が約1000万程度で経済的な幸福度が上限になる。また生活面への満足度においては600-700万程度で上限となる。

もちろん年収が1500万、2000万と増えればそれはそれで良いに違いないが、そのことが幸福感に繋がるかどうかはお金以外の部分に左右されるということになる。

満足化のススメ

現代人の多くがヘドニック・トレッドミルに陥っている。要するに「もう少し○○があればもっと幸せになれるに違いない」という状態のことである。

大量消費主義の柱となる広告産業は、常に「あなたに足りないもの」を訴え続けている。もし仮に誰しもが今の自分に満足してしまったら、これらの産業はなくなってしまう。

選択のパラドックス

心理学者のバリー・シュワルツの言葉。

皮肉なことに現代では、選択技が多すぎるために誰もが自分の選択に絶対の自信を持つことなどできなくなっている。選ぶことができないのも苦痛ではあるが、あまりに選択の幅が広く答えがない状態も人は苦痛を感じてしまう。

満足化を取り入れよう

ノーベル賞を受賞した経済学者、ハーバードサイモンの手法。

ある物事について答えが見つからない時は、自分にとって及第点を感じられるものであれば即選び、その後でごちゃごちゃと考えないのが良いらしい。

ただそれを実践したとしてもメディアや広告、あるいはそれらを信じる知人が「あなたは間違っている」という打ち出しで別の選択や商品を勧めてくるかもしれない。

そこで大切なのは、自分の心の中に確たる指針を持ち、自分なりの価値観や人生の目標を持つことである。

終わりに

本書では上述の自分の価値観や人生の目的を見つけるために、哲学や思想、宗教や歴史についてかなり深淵なトーンで語られています。

短くまとめるのは困難ですが、あえてするとしたら「自分なりの幸福感を大事にして、自分の価値体系を練り上げ、それを踏まえて他者に貢献もして良い関係を育むのが吉」となるのかなと思いました。

途中からフィンランド関係ないやんと思いながら読んでいましたが、フィンランド初め北欧諸国が幸福度ランキングで上位に入りやすいのは、国家&文化レベルで「幸せの定義を押し付けてくることが少ない」という所も影響しているのかも知れませんね。

田中角栄の名言の一つに「秀才はこうあるべきだという理想の姿ばかり見ようとしてしまう」というのがありましたが、その言葉を読んでいて思い出しました。

人間誰しもが生きる意味とか人生の目的とか、そういうことについて漠然と考えることはあるかと思いますが、その漠然とした問いから逃げずに、息を止めるように深く内省した著者の語り口が素晴らしい本だと思いますので、もし興味があれば読んでみてくださいね。


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