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年間365冊本を読む本好きが書店が生き残る道を考えてみた

「活字離れ」と言われて久しいですね。
世の中には衰退していくものが数多くありますが、そのうちの一つは、出版、書店といった、本に関わる業界ではないでしょうか。

私は子供の頃から本が大好きで、学校の図書館によく行っていたし、家でもよく本を読んでいました。
私はべつに本に関わる仕事はしていないので、出版業界や書店がつぶれても職には困りません。ただ、一消費者として、紙の本がなくなるのは困るので、書店が生き残るにはどうすればよいか?を時々考えています。

書店は減少しているし、これからも減少していく

「駅前のあの本屋なくなるんだって…」
「子どもの頃から行ってたからショック…」

本を読む人なら誰でも、
一度くらいはこんな会話をしたことがあるのではないでしょうか。

書店は年々減り続けています。

2003年 総書店数20,880
2022年 総書店数11,495

https://shuppankagaku.com/knowledge/bookstores/

数だけを見たら、
半分くらいになっていますね。

今のところ劇的に改善する兆候がないので、「気づいたらあの本屋なくなっていた」ということが、今後も増えていくと思います。
家の近くにお気に入りの書店があるのなら、つぶれる前に通った方が良いかもしれません…

粗利率が低いのに、売上が少ないビジネス

書店はなぜ減り続けているのか?

定期借地権とか、後継者とか、
その辺を除けば、考えられるのは、
維持できるほどの利益が出ないということ一択です。

例えば、文教堂は書店を経営していますが、赤字企業です。決算書類を見ると、苦しい経営の様が見て取れます。
参考:文教堂IR

始めて知ったのですが、
書店の粗利率は20%程度のようです。

20%程度なので、売上を大きくするか、販管費などを抑えるかが必要だと思うのですが、どちらもできていないので、おそらく多くの書店がギリギリの経営をしているのだと思います。

書店で購入する動機が弱過ぎる

本来なら売上を増やしたいところですが、「活字離れ」「人口減少」、「ネット通販の伸長」など、書店にとって有り難くない状況が続いてます。

この流れは今後も加速するので、今のままだと、より多くの書店がつぶれていく未来なります。

売上が増えない理由はいくつかあると思いますが、書店でよく本を買う私ですら思うのが、書店で本を買う動機が弱いということです。

  • アマゾンや楽天の方が種類が多い

  • ネットなら検索するだけで探せるから探す手間が省ける

  • ネットなら家にいながら購入できる

  • 電子書籍なら紙の本より安く買える

  • ネットショップなら他の商品も買えるから、ネットショップで本を買ってポイントを貯めたい

それに対して、
書店で本を購入する動機はどうでしょうか。

  • 発売日に確実に買える

  • 配達を待つ時間がない

  • 中身を確認してから買える

  • カバーをかけてもらえる

家の近くや会社の帰り道に大型書店があって、気軽に行けるならまだしも、電車や車に乗ってまで行く動機が弱いと思います。

また、書店の売上が減少している理由として、雑誌の売上の減少が要因のひとつのようですが、雑誌に関しては、ネットの情報が10年くらい前と比べてかなり発展しているので、これから回復の道に向かうのは、非常に厳しい状況だと思います。
参考:出版物の推定販売金額

どうすれば書店は生き残れるのか?

ではどうすればよいのか?
ビデオテープがDVDになり、それから動画になったように、レコードがCDになり、それから配信になったように、書店が扱う紙の本も、電子書籍に取って代わられるのでしょうか。

進歩の歴史の中で、昔良かったものは、廃れていく運命なのでしょうか。
私は紙の本がすごく好きです。

気に入ったフレーズに印をつけて、何度も読み返したり、カフェで紅茶を飲みながら、パラパラとめくる本の匂い。
始めて東京の大型書店に行った時、宇宙みたいな広さのスペースに、所狭しと本が並んでいて、「まだこんなに知らない世界があるんだ」と、希望と絶望の両方を感じたこと。

スーパーに行った帰りに、「何か面白そうな新刊ないかな」と、立ち寄る駅前の小さな本屋。

私には未来が見えないし、絶対的な解決方法はわからないけれど、もし紙の本が今後も必要とされるのなら、書店が生き残っていくにはどうすれば良いのか?を少し考えてみました。

  • 接客に力を入れる

  • 本のコンシェルジュによって、需要を個人向けにカスタマイズする

  • 在庫を背負って価格調整権を手に入れる

  • 本のカバーなど、付加価値に力をいれる

  • カフェなどと併設して、サードプレイスを演出する

  • 粗利率の高い商品やサービスを生み出す

接客に力をいれる

常々思っているのですが、書店は他の小売と比べて、接客態度が良くないです。
特別悪い人はいないのですが、本好きの宿命なのか、少し暗めの接客が多いです。

落ち着いているという意味で、好意的に捉えることもできますが、ロボットに接客されているのと同じというか、機械的な接客が目立ちます。

本を探してそうな人がいたら「お手伝いしましょうか?」と声をかけたり、もう少し明るく会計をした方が、買い物する人も気持ちよく買い物できるのではないかと思います。
ディズニーとか、田舎のコンビニほど愛想よくする必要はないかもしれませんが、書店=接客業だと認識を持つべきです。もちろん持ったうえでかもしれませんが…

本のコンシェルジュ

あとは、もうすでにあるのかもしれませんが、本のコンシェルジュ的なかんじで、個人向けに本を紹介する専門家がいても良いかもしれません。
本が好きな人って、もちろん常に自分で面白い本を探していますが、「今の気持ちや状況に合う本って何だろう?」と、迷っていることも多いです。

私自身、「今のモヤモヤを解消してくれるような本はないかな?」というように、書店でフラフラと本を探したりします。でもなかなかうまく探せません。

そんな時に、占い師みたいなかんじで、「今のあなたはこれを読みなさい」と、めっちゃ本に詳しい人に言われたら、買ってしまうかもしれません。やっていることはネットのブロガーみたいなことですが、ブロガーが一方的に何かを薦めるのに対して、こちらの悩みを聞いたうえで、「それならこれが良いんじゃない」と言ってくれるようなかんじです。

価格競争する

例えば、レタスが買いたいなと思った時、「野菜はBよりもAが安いから行こう」というようなことってありますよね。
主婦や一人暮らしの方なら。

でも本については、
どこに行っても同じ値段です。

近所の小さな本屋で買おうが、繁華街の大型書店で買おうが、Amazonで買おうが同じです。
これは書店と出版業が再販売価格維持制度というもので、値下げしないと取り決めているが故、なのですが、正直意味不明です。

もちろん、何年も続いているものなので、出版側や書店側にとってはデメリットよりもメリットの方が大きいのでしょう。
書店側としては、価格を自由に決められない代わりに、売れない本を返品することで、小売ビジネスにとって厄介な在庫の問題を抱えずに済むようです。

でもこれって、消費者にとっては、
どうなのでしょうか。

不毛な価格競争を避ける意味があるのかもしれませんが、一方で、どこで買っても同じという紙一重の結果を生み出しています。

何も考えずに片っ端から値下げしたら、利益が出なくなりますが、例えば、野菜が安いスーパー、肉類が安いスーパーがあるように、小説が安い書店、ビジネス書が安い書店など、ジャンルごとに価格を調整するのは可能なのではないでしょうか。

2冊買ったらポイント2倍など、ちゃんと利益が出る売り方をすれば、多少値下げしてもやっていけるのではないでしょうか。もちろん、アマゾンや楽天などは、他の商材を扱っていて、体力もあるので、真っ向から価格勝負をしたら勝てないかもしれません。それについては、価格以外の何かで勝負していく必要があります。

本のカバーなど、付加価値に力をいれる

書店の店員さんって、
本のカバーつけるのめちゃくちゃ上手ですよね。

私はいつも本のカバーをつけてもらうのですが、疑問なのが、書店のカバーって、なんで書店名が全面的に出ているんですかね。
どうせならもっとオシャレにしても良くないですか?

あるいは、例えば今なら、ちいかわの本カバーとか用意したら、普段本を買わない層でも買ってくれるかもしれません。
そういう知名度のあるコンテンツなら、カバー代として別途お金をもらうことも可能なはずです。

私は本をよく持ち歩くので、カバーをかけてもらえると嬉しいです。だからこそ、もっとカバーをオシャレにすれば、それがAmazonや楽天以外で買う動機になり得るかもしれないと思うのです。

本屋を本を買う場所にしない

書店に行く目的って何ですか?

欲しい本がある時や、
何か読みたいと思った時ですよね?

でもそれだと、「今日雨降ってるし、Amazonで買えばいっか」ということになりかねません。
でももしも、「あの本屋落ち着くんだよな〜」とか、「書店の中にあるカフェのコーヒー美味しいんだよな」というように、何か他の目的があれば、その書店に行く理由が生まれます。

ブックファースト新宿店は、ちょっと前に改装して、店内に家具店を併設したようです。コラボすることは良いことだと思うのですが、書店と家具って、書店ユーザー、家具購入ユーザーにとって相乗効果があるのでしょうか?

私の答えは否で、「今日はちょっと本を読みたい、家具も見たい」みたいな日って、生まれてから一度もないです。
消費者側のことを考えたら、カフェのように、買った本をそのまま読めるみたいな場所の方が良いのではないでしょうか。

六本木の蔦屋書店にはスタバが併設されていて、スタバに行くついでに本でも見に行くか、本を見たついでにコーヒーでも飲んで行くか、みたいな場所になっています。
私はあの空間が好きなのでよく行きます

六本木の蔦屋書店は、サードプレイスのような雰囲気を売りにしているので、Amazonや楽天とは差別化ができています。ある種の観光名所のような雰囲気すら醸し出しています。

粗利率の高い商品やサービスを生み出す

粗利率が低く売上が少ない場合には、粗利率の高い別の何かを併せて売るのが一つの方法です。
それが何かは私にはわかりません。文教堂は、書店とは別ですが、プログラミングサービスに手を出したり、雑貨に力を入れている書店もありますね。

ゲオは元々レンタルビデオ店でしたが、時代の流れとともにその姿を変えてきましたね。失敗すると何屋かわからなくなりますが、書店にも第三の道があると信じています。

さいごに

書店向けの記事みたいになっていますが、実際のところ、そこで働いている人たちは危機感を持っていて、「そんなことわかっとるわ」という話だと思います。

私が実際に伝えたいのは、同じように書店の消えゆく姿を憂いている本好きの人たちや、普段あまり本を読まないけれど、「出版業界が衰退しているのは何となく知っている」という人たちに対してです。

「もっと本を読もう」と言いたいとは思わないけれど、もしも本を読むなら、「近所の書店を覗いてみては?」とは言いたいです。
子供の頃によく親に連れて行ってもらった書店とか、初めて一人暮らしをした街にあった小さな書店とか、あるいは、宇宙みたいに大きな大型書店とか…

そこに見えるのは衰退する未来かもしれないけれど、街にあかりを灯し続けているその書店には、一つ一つかけがえのない歴史があって、もしもネットでポチッと買うんじゃなくて、匂いや手触りを感じながら買うのであれば、それは単なる購買ではなくて、思い出の一つになるはずです。

数年くらい前の話ですが、六本木で飲んで終電がなくなった後、フラフラな足でとたどり着いた六本木の蔦屋書店で、3,000円くらいの本を買いました。

その時、レジの店員さんが話しかけてくれたこと、今にも閉じそうな目で必死に文字を追ったこと、次の日は内容を全て忘れていたこと、そういうことは全部思い出になっていて、今でも本棚に眠っています。

変わっていくことは良いことだけど、少なくとも私はそう思うけれど、たまには変わらないでいてほしいものもあって、そういうものの一つとして、書店には生き残ってほしいと思うのです。

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