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助成を上手く活用し表現したいことを実現! アーツカウンシル東京、2023年度〈東京芸術文化創造発信助成〉公募開始

助成を上手く活用し表現したいことを実現! アーツカウンシル東京、2023年度〈東京芸術文化創造発信助成〉公募開始

text:高見一樹

サンガツ ベルリンライブ@HAU撮影:Yutaka Endo, LUFTZUG

芸術文化活動、アーティストの表現を支援する公共事業

 芸人、アイドル、ダンサー、ミュージシャン、映像作家、画家……、表現者たちはそれぞれの活動原資をどうやって調達するのだろう。公演やメディア(CD、DVDなど)の販売収入、クラウドや投げ銭のようなファンディングなどを含めると今や活動を支える収入の細目はさまざまだ。ただ 活動を数字で振り返ると、あらためて表現の内容や手段に関わらず芸能・芸術を支配するのはマーケットであり、表現の自由度は、マーケットへの依存の度合いに左右されていることは明らかだ。

 自分の表現したいこと、アートのコンテンツとして伝えられるべきことは、そもそも収支、マーケットに左右されるべきものではないと誰もが思う。だが表現が新しければ新しいほど認知度はゼロ(見たことも聞いたこともないレベル)に近づき、表現のマーケッタビリティは担保を失う。そんなとき可能性として積極的に検討すべきなのが、芸術文化活動に対する公的支援、助成金や補助金だろう。

助成する側/される側から見た助成の意義

 そもそも芸術文化活動に対する助成は、補助金同様、制作予算規模に比べてマーケットが小さく、直接資金調達することが難しい活動のために設けられた支援制度だ。今回紹介するアーツカウンシンル東京(以降:ACTと略)の助成は、助成対象経費の2分の1あるいは3分の2を上限としているが、コンサートなどの制作予算の収入面で、CDなどの販売、チケット販売収入に加えて助成金を組み込めるとずいぶんと肩の力が抜けるだろう。昨今、パンデミックや社会環境の変化によって活動規模を縮小、活動自体を断念せざるを得ないケースも増え、緊急避難的な資金確保の手段として助成や補助金へ応募するケースが増加しているかもしれない。しかしそれは表現に対する助成の本来の趣旨とは異なる。

 近年、人々が芸術だと認める表現領域が多様化したこと、知財の蓄積、アートツーリズム、文化都市を創出し観光資源化するなど、芸術文化の投資的価値への期待も受け、こうした支援策は対象を広げその存在感を増している。つまり助成はそもそも表現者のためだけでない。あらゆる人、鑑賞者も巻き込んだ芸術の創造・鑑賞される環境内の好循環を維持、向上させる社会的価値をもつプログラムなのだ。

 こうした助成する側の意図を受けて、受ける側が理解すべきは助成を受ける意味だ。表現や活動はアーティストのものだが、助成申請には、自らの表現への公的支援の必要性を、助成する側に理解させることが不可欠となる。企画意図、実施の実効性、予算の妥当性、透明性など、事業全体についての説明が必要となる。

 助成金交付申請の手続きは、自らの企画や表現を客観的に見つめ直す機会となり、私的なものとして閉じていた意識をパブリックに開いていく。


東京中低域結成二〇周年記念公演〈東京バリトンサックス狂想曲2000-2021〉撮影:前田まなみ

アーツカウンシル東京――東京芸術文化創造発信助成の場合

 以下、ACTが公募する2023年度〈東京芸術文化創造発信助成〉について、本記事の最後に記載した公募概要を辿りながら、助成の対象、内容、そして申請方法やこれまでの採択実績を紹介しつつ、利用状況を参照する。

 対象となるのは、ポピュラーも含むさまざまな芸術分野の、公演、展示、アートプロジェクトなどの創造活動。複数の領域を含む総合的な表現活動も〈複合〉分野として対象となる。聴くものなのか、観るものなのか、はたまたその両方なのか、無音なのか、雑音なのか、その両方なのか……、大概のものが対象となる。加えて創造環境向上事業も対象とある。これは人材育成(アーティストやエンジニアなどの舞台技術系専門職など)、人材や情報交流にかんする事業、アーカイブ活動(さまざまな芸術活動の情報化、収集・保存・公開)、芸術に対する関心やリテラシーを高める事業等に対する助成となる。

 そして申請資格、実施場所などが、同じく概要にあるとおり続く。補足すると申請資格には、アーティスト、プロデューサーなどの個人と、芸術団体、民間の劇場、実行委員会などの団体があり、さらに団体に対しては単年の事業と複数年(最長3年)での事業とにそれぞれ申請カテゴリーが分けられている。団体申請に対しては採択されれば助成金額の一部を事業の実施前に受け取れる制度もある。

申請の手続き

 申請に必要な書類はACTのホームページからダウンロードができる。主な書類は申請書、申請者情報と収支予算書の三種類、それぞれ記入にあたってのガイドラインを示した手引き書もある。書類を読み実際に記入することで、言語化、予算化といった作業プロセスを介し、具体的に自身の企画、事業プランに向き合うことができる。順番は逆なのかもしれないが、出発点となる何らかの夢、企画があれば、申請書類の項目を見ながらアイデアを事業計画へと育ててみるのも一つの方法だ。申請のチャンスは今回だけではない。

特定非営利活動法人芸術文化ワークス
加藤訓子 2019 MONA FOMA Launceston, Drumming at Annex Theatre

助成を受けた企画の数々

 ACTのホームページには、これまで助成を受けて企画を実現したアーティストや団体のことが掲載されていて、これまでの助成実績を見てみるのも参考になるだろう。本誌に登場したことのあるアーティストも数多く、現代音楽ではバリトンの松平敬やパーカッショニストの加藤訓子のコンサート、AYUOが主宰する夢枕による複合的なステージを創出する公演、能声楽家の青木涼子サンガツの海外公演やワークショップ、栗コーダー・カルテットのアジアと東京のアーティストを結ぶプロジェクト、ROVOの海外公演、そのROVOのドラマー芳垣安洋オルケスタ・リブレの講談師を交えた「三文オペラ」など様々。中には複数回助成を受けている企画もある。企画の将来性とその第一歩の具体性が高く評価されたのだろうか。コロナ禍が落ちつき国際的な広がりのある企画なども積極的に評価されるのではないか。

最後に

 助成を受けた人によると採択後のACT側のフォローアップも手厚く、企画の実現の道半ば、迷った時に丁寧に対応していただいたという。本誌(「intoxicate vol.162」)が出る2月20日は、今期の申請締切(2月28日、3月7日)間近。駆け込むもよし、次回に向けて準備するもよし。果報は申請して待つ。

INFORMATION

第1期 公募受付中
〈カテゴリーI〉
2023年1月27日から3月7日まで

アーツカウンシル東京 2023年度〈東京芸術文化創造発信助成〉第1期公募概要
◎音楽、演劇、舞踊、美術・映像、伝統芸能など、さまざまな芸術ジャンルの活動を申請できます。(核となる分野を特定できない芸術活動の場合は〈複合〉分野として申請可能。)
◎芸術創造活動を支援する〈カテゴリーI〉【単年(団体・個人)】、〈カテゴリーII〉【長期(団体)】と、芸術創造環境の向上に資する事業を支援する〈カテゴリーIII〉【単年・長期(団体)】があります。
◎〈カテゴリーI・II〉では、〈同一の趣旨・目的のもとに実施する複数の企画〉を一件として申請することが可能です。(例:公演・展示・アートプロジェクトと関連するワークショップ、レクチャー等、又は海外及び都内で実施する国際コラボレーション事業、又はひとつのテーマのもとに連続して実施されるシリーズ企画等。ただし定期公演の複数回をまとめて〈一件〉として申請することはできません。)
◎個人申請と団体申請では助成申請額の上限が異なります。(団体申請は、法人格のない任意団体でも申請可能です。)
◎採択後は団体のみ、一定の手続きにより、助成交付決定額の半額を上限として助成金の前払いが可能です。
◎事業終了後に報告書をご提出いただき、その後約1か月程度で助成金をお支払いします。

■申請受付期間:
[カテゴリーI]2023年1月27日(金)から3月7日(火)まで[締切日の消印有効]
[カテゴリーII、III]2023年1月27日(金)から2月28日(火)まで[締切日の消印有効]
各プログラムの詳細及び申請方法等については、アーツカウンシル東京の公式ウェブサイト内〈助成〉ページをご覧ください。

申請者の資格:
東京都内に本部事務所や本店所在地が存在する芸術団体等、又は東京都内に居住する個人に対し、事業経費の一部を助成します。
■実施場所:東京都内又は海外 ※オンライン公開を含む
■補助率と助成申請額
 ●〈カテゴリーI〉【単年(団体・個人)】
 (1)都内での芸術創造活動 団体:200万円以内 個人:50万円以内、かつ、助成対象経費の1/2以内
 (2)国際的な芸術交流活動 団体:400万円以内 個人:50万円以内、かつ、助成対象経費の1/2以内
 ●〈カテゴリーII〉【長期(団体)】
 800万円以内(2年間)、1,200万円以内(3年間)、かつ、助成対象経費の1/2以内
 ●〈カテゴリーIII〉【単年・長期(団体)】
 長期:400万円以内(2年間)、600万円以内(3年間)、かつ、助成対象経費の2/3以内
 単年:100万円以内、かつ、助成対象経費の2/3以内
■助成対象事業の実施期間:
 【単年助成】2023年7月1日以降に開始し、2024年6月30日までに終了する事業
 【長期助成(2年間又は3年間)】2023年7月1日以降に開始し、2025年6月30日までに終了する事業(2年間)、又は2026年6月30日までに終了する事業(3年間)

【お問い合わせ】
公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京 企画部 助成課
電話:03-6256-8431(平日10時から18時)
メールアドレス:josei@artscouncil-tokyo.jp

次回〈令和5年度 第2期〉の公募(単年助成のみ)は2023年7月頃の予定です。助成対象事業の実施期間は2024年1月1日以降に開始し、2024年12月31日までに終了する事業(予定)です。実施内容は変更になる場合があります。

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