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ムッシーさんへのインタビュー/第3回「ステキな靴がステキな場所へ連れていってくれる」

山口市の靴屋、ムッシーさんにインタビューしました。
ムッシーさんにとって靴は、人と人をつなぐツール。
第3回では、十数年経った今でも心に残っているお客様との思い出や、靴の売り手として大切にしていることなどについて伺いました。

<靴のムッシー>
所在地:山口市富田原町4-20
営業時間:12:00~19:00
※月曜、第2・4日曜休み
電話:083-923-2380

靴は人と人をつなぐ

ボクはたまたま靴が好きで、靴屋を始めました。
お客様が来てくれて、そこでの出会いやご縁があって。
靴って人と人をつなぐツールだと思ってるんですよ。

――ムッシーさんのコラムにはいろんなお客様が登場します。

その中で、特に印象に残っているエピソードを聞かせていただけますか?

なんでしょう。
ちょっとたくさんありすぎて。
ぱっと思い出せないんですけど、やっぱり出会いとか別れでしょうね。
出会いだけじゃなくて、別れもあります。
例えば転勤だったり、家族の事情で引っ越さないといけなかったり。
お亡くなりになられてっていう別れもありますね。

今ふと思い出したところだと・・・
周南市に住んでらっしゃった高齢の方で、前のお店に年に1、2回定期的に寄ってくださってたんですよ。
その方が病気になられて、来られなくなったんです。
末期の癌だったんですよ。

電話で聞いた時はすごくショックでした。
遅かれ早かれ会えなくなるって感じて。
プライベートの付き合いはなかったんです。
でも、お店ではすごく仲よくて。

子どもというか、孫のようにかわいがってもらってた。
足の痛みとか悩みとかがあれば、よく相談してくれて。
周南から山口市に来た時はいつも必ず1泊して店に寄ってくださってました。

そんな方ともう会えなくなるのかと思うと寂しくって。
入院された場所をお聞きして、お見舞いに行ったんですよ。
その時は元気そうにお話ししてくださいました。

すごく寂しかったんで、病室に行く前にその方の写真を1枚ちょうだいって言ってたんです。
そしたら準備してくださってて。
いただいて帰ったんです。

病室を出る時にお互い手を振りました。
エレベーターに乗って降りたんですけど、乗る前からもう号泣でした。
そのことを1回コラムにつづったことがありますね。
今思い出してもうるっときます。

ただまあ、別れもありますけど、常に新しい出会いもあるんですごく楽しいです。
今コロナ禍で大変な状況ですが、去年も今年もお客様が新しいお客様を呼んでくださって。

作り手の想いを伝えるために

フランスだったか、ヨーロッパの方のことわざで
「ステキな靴がステキな場所へ連れていってくれる」
というのがあるんです。

靴ってすごく大事だとボクも思います。
新しい靴を履くとテンションが上がるじゃないですか。
いい靴は、いろんなところに連れていってくれる。

ボクも去年今年と海外に行けてないんですが(※インタビューは2021年12月に行いました)、2年くらい前から行きたいイタリアのメーカーがあって、来年は行けたらなあって思ってますね。

コロナ前は2、3年に1度はヨーロッパの方に足を運んで、メーカーめぐりをしていました。
観光名所をめぐるってことはほとんどなくって、もう靴メーカーばっかり。
「地球の歩き方」に載ってないような街が多かったですね。

ボクのお店もそうですけど、外国の靴を扱ってるところって日本の代理店を通すことが多いと思うんです。
ただ、現地に行った時にそのメーカーさんのイメージがよくなることもあれば、悪くなることもあるんですよ。
どんな方が、どんなところで、どんな風に作ってるか。
そういうのをやっぱり見たい。
それがわかると、ボクも売り手としてその想いが伝えられるじゃないですか。
だから現地を見るっていうのはすごく大事だなあって思いますね。

靴を買われる方も、今はSNSでいろんな情報を簡単に入手できます。
ただ、SNSに載ってない情報もたくさんあるんですよ。
やっぱり現地に行かないとわからないこともありますし。
そういう部分をボクはSNSで発信してない。

お客様との出会いをつづ

自分のサイトではほとんどブランドのうんちくって書かないんですよ。
お客様にとっては必要なことなのかもしれないんですけど、ボクの中では必要としてないんで。
あえてそこは書かずに、お客様との出会いをつづっていることの方が多いかもしれないですね。

前のお店を始めて1年経ったか経たないかぐらいの時に、コラムを書きはじめました。
それからずっと、毎日ではないんですけどかなり定期的にはつづってると思いますね。

ほんとはSNSとかそんなに好きではないんですよ。
あまり見ないんです。
ただ、ふだん会えない人たち、仲がよくてもなかなか会えなくって、でもお店のこと知りたいっていう人のためだけにつづってる感じです。
とりあえず生きてます、元気にしてますよって。
だから不特定多数の方、たくさんの方に見てほしいっていう意図はあまりないですね。

たぶん初めてボクのサイトを見た方はちょっと違和感を感じると思うんです。
あまり靴屋らしくないというか、何屋なの?みたいなところがあるんで(笑)

――ムッシーさんのダイレクトメールを楽しみにしているお客さんがいっぱいいるそうですね。
ご自分で作られてるんですか?

そうです。
はがきとか届いても、見ずにゴミ箱に捨てることってあるじゃないですか。封筒でも開けずにそのまま捨てちゃうみたいな。
そういうものだけは送りたくないなと思って。
じゃどうしたらいいかなっていうので、あえて裏面には文字を入れてません。

靴の写真だと、どうしてもそれが履けない人もいると思うので。
足とか靴とかをイメージしてもらえるような写真を使ってます。
部屋に飾ってくださるお客様もいるので、ダイレクトメールっぽさが出ないようにあえて文字を入れずにシンプルに作ってますね。

――ムッシーさんのタグもかわいいですよね。

ありがとうございます。
最初は靴を入れる紙袋に店のスタンプを押そうと思ったんですよ。
でも、たまたまそれがインクを弾く紙袋で、スタンプが押せなかったんです。
それでカットした段ボールにスタンプを押して、紐で紙袋にくくりつけました。
靴が入荷すると段ボールがいっぱい出るので、それを使って。
今となってはかえってよかったなと思ってますね。

―第4回へ続く―

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