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森田泰暢さんへのインタビュー/第4回「研究って楽しいなと思ってもらいたい」

森田泰暢 やすのぶさん(福岡大学 商学部 経営学科 准教授)にインタビューしました。
第4回では、太宰府の内山地区でイベントを行った際、地元の方たちと関係を作っていく上で大事にしたことや、ヒマラボのロゴのモチーフとなっているカエルに込められた意味などについて伺っています。
何かを研究したいという気持ちがあるのは素晴らしいこと。
一般の市民が研究をする流れはこれから増えていきます。

<森田泰暢さんプロフィール>
1980年生まれ
農学修士、経済学博士
関心領域はサービスデザイン(UXD,HCD含む)とそれに係る人材育成、産学連携教育、実践共同体、ゲーム開発マネジメント
企業と連携した商品開発プロジェクトやリサーチ活動も行っている
2017年から社会人と学生が混ざって研究的活動を楽しむヒマラボという場を作った
・京都大学高等教育研究開発推進センター第5期MOSTフェロー(2017年3月修了)
・人間中心設計専門家資格取得(2017年3月)

ヒマラボのサイトより

第3回はこちら

ていねいに地域の方と関係を作る

ーー地元の方たちと繋がりを作っていく時に意識したこととかありますか?
お金儲けがしたいとかではなく、こういうこと目指して活動していて、こうなったらおもしろいと思うんですよね、みたいなことを、ヒマラボの理念も含めて話しました。
それと、やっぱり学問の神様のいる街だからこういう雰囲気が作れるといいですよね、とできるだけ目指す方向に対しての共感をしてもらいました。
イベント近くになってきたら、内山地区の参加してくれるお店を全軒回って、「こういうイベントなんでよろしくお願いします」と挨拶しました。
ちょっとずつリアルに回って関係を作るのは、やっぱり地域においては重要だなと思います。
なんかいい仕組みだしおもしろそうだから後はよろしく、ではなくて、ベタですけど、ていねいにちゃんと地域の方に触れるのは一番重要だなって感じましたね。

ーー次回開催リクエストがあるということですが、次の予定とかは決まってますか?
前回が去年の10月だったので、2月とか春とかにやりたいですねって話をしてたんです。
だけどちょっと私がバタバタすぎて全然できなくて。
まあでも、ちょっと前遊びに行ったら「また何か企画しようね」とか「持ってきてね」って言ってもらえました。
こっから秋ぐらいにかけて何かできるといいなって思ってます。

ーー次はこういうことやってみたいとか何かありますか?
内山地区には6月とかの梅雨時に山を登るカエルがいます。
そういうのを一緒に見ることができたら最高だな。
もちろん秋口にまたおんなじような街歩きをするのもいいなと思ってます。
あと、今太宰府市の中央あたりの街中に図書スペースを増やす取り組みもしています。
街中ライブラリとか街中ラボっていって、お店の軒先を図書館にしたり企業の空いてるスペースに図書館を作ったり。
ヒマラボでやってたような、研究者じゃないんだけど何かを深めてみたい、という人を集めて、少人数で勉強会とか研究会みたいなイベントをやっていければなと思ってます。
大学みたいに研究室や図書室が街の中にあるという感じでできれば。

カエルが象徴するもの

ーー私も以前、山を登るカエルをテレビで見たことがあります。
すごくインパクトがありました!
実際に見られたらおもしろいだろうなって思います。
ところで、
ヒマラボのロゴも森田さんのTwitterのヘッダーもカエルですよね。

カエルが好きなんですか?

ロゴを作る時に、いろいろ学生に相談をしたことがあったんです。
なんかいいアイデアないかなって。
動物ってけっこう何かの象徴だったりして、例えばゾウは記憶の神様です。
その子が調べてくれたのはカエルで、好奇心の象徴と言われてます。
水の中を泳ぐし、陸地もどんどん進むし、いろんなところを回って探検する好奇心があるような動きをするので。
勉強し始めた初学者の人もいろいろ模索しますよね。
その子から、初学者とか好奇心とかの象徴がカエルなんです、って教えてもらいました。
それはヒマラボでやりたいこととすごく近い。
カエルをモチーフにしてロゴを作ろうってなって、あれを作りました。

好奇心があるのは素晴らしいこと

ーーヒマラボにはどんな方が参加されてるんですか?
ラボ活動は最初2年くらいやって、今ちょっとお休みしてます。
最初の頃はほんと多様でした。
会社の経営者、サラリーマンなんだけど小説書きたい人、旅行代理店の人。
学生ももちろんいましたし、プログラマーもいたり、いろんな人が来てくれてましたね。

ーー皆さんどんな研究をされてたんですか?
例えば経営者で組織のコンサルティングとかをやってた人は、働く場所も一つのブランドと関係するんじゃないか、ということで「エンプロイヤーブランディング」って概念があるんだというのを見つけました。
でもそれはまだあんまり一般的な概念ではありません。
それをちょっと深めてみるということをやってました。
一方で、謎解きゲームとか脱出ゲームがすごく好きな学生は、あんまり商学部とは関係ないんですけど、それを深めたいということで、脱出ゲームってどういう問題のパターンがあって、どう組み合わせるとおもしろいと感じるのかを整理して考えてました。
実際、ほんとに学園祭で脱出ゲームをやって、それを検証してましたね。

ーー皆さんが研究活動を続けていく中で何か変化したことはありますか?
研究活動っていっても、いわゆる学術的・学問的な新発見っていうよりは、わりと自分の生活とか経験の中での新発見を目指す人が多かったんです。
何かそれに関する本を読んで、こんなことがわかりました、と発表したりしてました。
新しい発見がなくても、自分に関連することをたくさん調べて整理してみるってだけですごく好奇心が高まってくる感じを僕からも見てとれることが多かったなって思います。
仮に継続せずにそこで一回やめてもいいんです。
でも、またこういうことを調べてみたいな、ということがけっこう出てきたりしてたので、それはすごく楽しかったなと思いますね。

ーー市民の方が研究活動を続ける上でのコツって何かありますか?
それはけっこうシチズンサイエンスでも課題となってるんです。
研究資金はどうするんだとか、いろいろあります。
でも、論文なら無料で開放されていて、手に入りやすいんですね。
1つはだいたい10ページから20ページくらいのものが多くて、量としては少ないです。
ただ、それを読むための時間をどう作るかというのはあります。
あと日常的に論文を読むわけじゃないので、こういう風に理解してるけど合ってるのか、と疑問になることもある。
そんな時は用語を知るために1冊専門の本を読んだりするといいです。
その辺りの方法とか時間の作り方とかを知る機会がもうちょっと増えれば、グッと進むこともあるかなと思いますね。

ーーこれからヒマラボがこんな風になっていったらいいなというのは何かありますか?
さっき話した働く場のブランドをまとめてた方は、たまたまだと思うんですけど、奥さんがそのテーマを引き継いで大学院に行ったんです。
博士号だったかな、そこまで取ったんですよ。
本格的な研究への橋渡しをすることが、研究者が必要とされ、楽しく働ける環境作りにも繋がる。
高校大学以上大学院未満くらいの間が自分達の立ち位置かな。
研究することって楽しいなと思ってもらえるような環境を作れるといいなって思ってますね。

ーー最後に、「自分もこれから研究活動をやってみたいな」って思ってる市民の方に向けて、一言メッセージをいただいてもよろしいでしょうか?
まずはそう思ってるだけで好奇心があるので非常に素晴らしいなと思います。
そういう気持ちだったらぜひ声をかけてもらいたい。

市民が研究するって流れはこれから増えていきます。
ぜひ一緒にやってもらいたい。
自分が持ってるコミュニティもありますけど、そういうところにも入ってもらいたいなって思いますね。

ーー今日はお話しいただきましてありがとうございました。

ー完ー

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