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森田泰暢さんへのインタビュー/第1回「好奇心が大事にされる社会を作る」

森田泰暢 やすのぶさん(福岡大学 商学部 経営学科 准教授)にインタビューしました。
最近、職業科学者ではない人が研究をする機会が増えてきているそうです。
第1回では、森田さんが今研究されているシチズンサイエンスとは何なのか、それに興味を持ったきっかけなどについて伺いました。

<森田泰暢さんプロフィール>
1980年生まれ
農学修士、経済学博士
関心領域はサービスデザイン(UXD,HCD含む)とそれに係る人材育成、産学連携教育、実践共同体、ゲーム開発マネジメント
企業と連携した商品開発プロジェクトやリサーチ活動も行っている
2017年から社会人と学生が混ざって研究的活動を楽しむヒマラボという場を作った
・京都大学高等教育研究開発推進センター第5期MOSTフェロー(2017年3月修了)
・人間中心設計専門家資格取得(2017年3月)

ヒマラボのサイトより

シチズンサイエンスとは?

――森田さんは普段どんな研究をされているんですか?
今はシチズンサイエンスというものを研究しています。
授業として教えてるのは、組織論といって会社の組織についてどうマネジメントするのかっていうようなことを。
研究としてはちょっとそこから離れまして、先ほど申し上げたシチズンサイエンスという分野についていろいろ今掘り下げてやっているっていうところがあります。

――シチズンサイエンスってどんなものか教えていただけますか?
シチズンって市民ですね、サイエンスっていうのは科学なので、よく日本語で市民科学っていう風に表現されたりすることもあります。
研究とかをする人っていうのは、大学に勤めてる私みたいな大学教員とか、研究所に勤めている研究員とかですね、給料をもらって研究している職業的な科学者みたいな人がやるっていうのが一般的だと思うんですけど、最近はそういう仕事に就いてない人も研究をするという機会が増えてきています。
職業科学者じゃない人たちが研究者と一緒にやったり自分自身でやったりする研究活動みたいなことをシチズンサイエンスという風に呼んでいます。

――シチズンサイエンスってどこで生まれたとかあるんですか?
一番最初の研究が何なのかっていうところまでちょっと今ぱっと思い出せないんですけれども、わりと環境学とか生態学とか、自分たちの暮らしみたいなところを、例えば自治体だとかコンサルだとかに任せるんじゃなくて、自分たちもちゃんと調査をして測定して、どういう風な暮らしをしていくといいのかみたいな、環境評価とかですね、生態評価とか、そういったところから始まっていったのが多かったかなと思いますね。

――いわゆる自然科学系とかが多かったんですかね?
そうですね。
いわゆる理系の方の環境学とか生態学みたいなところからが多かったと思います。

子供が生まれてどんな社会を作りたいか考えた

――シチズンサイエンスに興味を持つようになったきっかけは何ですか?
私自身のこととしては、子供が生まれまして。
どうせ自分の方が先に死ぬので、どんな社会を作るといいかなという風にそこで考えるようになりました。
やっぱり好奇心が大事にされない社会っていうのはやだなと思って、

好奇心がうまく育つ社会を考えた時に、子供たちっていうのは好奇心をもともと持ってるんですけど、なかなか大人の世代が好奇心を育てる機会というのがあんまりない。
研究っていうのは自分の好奇心に基づいて始めて、それをどんどんどんどん強くしていくプロセスです。
僕たちみたいな仕事でやってる人だけじゃなくて、いろんな人が研究活動するようになると、好奇心を大事にできるような社会になっていくんじゃないかなと思いました。
わりと趣味みたいな感じで、自分の知ってる人たちに声をかけて、なにか掘り下げてみたいものとか研究してみたいテーマとかありますかって呼びかけました。
集まってみんなで論文読んだり読んできた本をプレゼンしてみたり、そういうことを始めたのが一番最初だったりしますね。
それをやってたら、たまたま九州大学の先生から、それはシチズンサイエンスっていう呼び方をしているんですよ、と説明をもらいました。
日本の研究をどうしていくかとか、科学をどうしていくかみたいなことを考える立場にあった方です。
その方から、国としてもそういったものも大事にしていきたいって方針が今後出てくるので、ぜひそのことについてちょっと教えてほしいみたいなお声がけをいただきました。
そこまでちゃんと検討されるべきものなんだったら、趣味でやってたけど、ちゃんと研究した方がいいなってなったのがちょうど1年前くらいです。
ほんと最近そういったものに興味を持って研究するようになり始めたという感じですね。

――じゃあ最初からシチズンサイエンスというものを知ってて、それをやろう、ってしたわけじゃなくて、たまたまご自身が興味を持ってやってることがシチズンサイエンスだったということですか?
そうみたいですね。
こんな社会になるといいのになと思って始めて、3年ぐらいやってたんですよ、そういうのを。
意外と国がやりたい方向性に近づいてたっていうのが今の状態ですね。

――流れと合ってたっていうか、流れに乗ってる感じだったんですか?
たまたまなんですけど、流れがうまくきて。
組織論の中でもどんなことを研究しようかなってちょっと悩んでいた時期でもあったので、思いきってこっちをやろうかなって考えたのが去年くらいですね。

――1年やってみて今どんな感じなんですか?
そうですね、去年はちょうど今までやってきたことと新しいことを始める転換期みたいなところでした。
研究活動としてはそんなに進んだわけじゃないんですけども、シチズンサイエンスの研究センターをまず作ったんですね。
それが設立できたというのが一番大きくて、そういう拠点を作ると、例えば東京とか中央の省庁とかいろんな研究所とかからも声をかけてもらえるようになりました。
そういう方達とのネットワーク作りをしたり、そういう方達からシチズンサイエンスは今こういう現状にあるよという情報をいろいろもらえました。
それをウェブサイト上でちょっと整理してみたり。
そういう現状整理だったりネットワーク作りだったりが去年までにできたことかなと思います。
今年ぐらいから少しずつこの分野を研究してみようっていうのを商学部の中の先生と始めたところですね。

――福岡大学のシチズンサイエンス研究センターのホームページに「私には好奇心を毀損されない社会を作りたいという思いがあります」という森田さんの言葉があります。

今の社会を見ていて、好奇心が毀損されてるなと思ったことは何かありますか?
そうですね、SNSの流行とかが顕著だと思うんですけど、ちょっと頑張ったり少し目立つと、マスコミとかいうレベルじゃなくて、もう個人単位ですぐに足を引っ張ってしまうみたいなことって多くなってきてます。
子供が子供の夢を潰すっていうことはあんまりなくて、どっちかっていうと暇な大人がそういうことを、コロナも相まったと思うんですけど、憂さ晴らし的にそういうことやっちゃうのは増えてきてるので。

ー第2回に続くー

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