ムッシーさんへのインタビュー/第2回「靴は買ってからが始まり」
山口市の靴屋、ムッシーさんにインタビューしました。
第2回では、用水路で靴を洗うのが大好きだった子ども時代や、なかなか自分の将来像を描けなかった時、ひょんなことから足と靴のことを学びはじめたお話などを伺いました。
靴に興味を持ったきっかけ
小学5年生ぐらいの時に山奥の田舎に引っ越しました。
学校に履いていくズックっていうか、靴とか上靴っていうのを自分で洗ってたんです。
田舎なんで、外に蛇口がついた流しがあるわけでもなく、だいたいみんな用水路で洗ってたんですよ。
石鹸持っていって、たわしにつけてゴシゴシ。
それがすごく好きで。
必ず自分の靴は自分で洗ってました。
高校生になっても上靴は自分で洗って。
革靴を履くようになったので、それも自分で磨いてました。
ボクたちの時代って割とその当時みんな、なんていうんですかね、ちょっとヤンキーっぽい人が多い時代だったんですよ。
けっこう上靴のかかと踏んでたりして。
ボクはそれが絶対許せなくて。
必ずかかと踏まずに履いてたんですよ。
その頃ってあんまり靴のブランドとか、知識ってないじゃないですか。
でも、なんか靴がすごく好きでしたね。
それから紆余曲折があって、たまたま洋服屋で働くことになったんです。
その中でもやっぱり靴が一番好きで。
いつかは自分の店を持てたらなあっていうのもその当時、20代前半でしたけど、ありましたね。
足と靴のことを学ぶ
洋服屋を辞めた後、何をしようかなって感じになって。
なかなか自分の将来像っていうのが描けなかったんです。
でも、たまたま福岡のとある靴屋さんに行った時、すごくマニアックな靴の雑誌をいただいたんですよ。
その雑誌で「オーソペディックシューマイスター」っていう、ドイツの国家資格を持った靴職人の元で足と靴のことを学べる環境が東京にあるっていうのを知ったんですね。
迷わず行って、学びだしました。
靴屋をやりたいっていう以前に、靴が好きで行ってた感じです。
休みがたくさん取れると思って、郵便局でアルバイトをしました。
セミナー受けてるメンバーはだいたい、靴業界の企業や小売店のオーナーさんだったんですけど、ボクだけ「山口中央郵便局」ってなってて。
いまだに取引先のメーカーにそこを突っ込まれる時があります(笑)
当時はあまり靴屋をやりたいってところまではいってなかったんです。
自分の知識として学びたかった。
ただ、靴の調整とか加工とか、技術的なことは家にいては学べない。
どうしたらいいかな、っていうことで、福岡の靴の修理会社に直接電話をしたんです。
「働きたいんだけど」って言って、山口から小倉まで通うことになりました。
電車通勤で往復4時間。
2年間通いました。
後で知ったんですけど、ドイツの職人さんは、最初の2年間は靴の修理だけをやってるらしいんですよ。
そこで基礎を身につける。
たまたま自分も同じことしてました。
その経験が今に生きてるなあって思いますね。
大事な靴を長く履くために
買っていただいて終わり、じゃないのが靴です。
食べ物だったら食べて終わり。
でも、靴って買っていただいてから始まるんで。
今まではなかなかアフターフォローまでしてくれる靴屋さんって少なかったと思うんですよ。
だけどやっぱり愛着を持った靴をメンテナンスしてあげるっていうのはすごく大事なことですね。
靴底の減り方がひどい場合、靴が悪いっていうより履き方が悪かったりするんですよ。
ちゃんと靴の紐を締めるとか、マジックテープで留めるとか、脱ぐ時は緩めて脱ぐとか、そういうことをしてると、靴の傷みはすごく少なくなります。
ボクの周り、友達とか知り合いで靴を大事にしてる人は、手入れだけじゃなくってちゃんとTPOに合わせて履きわけてたりします。
靴って人と人をつなぐツールだと思ってるんですよ。
たまたま靴が好きで、靴屋を始めて、お客様が来てくれて、そこでの出会いやご縁があって。
ボクにとって靴はそんな存在ですね。
―第3回へ続く―
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