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キャリア採用の新潮流“ダイレクトリクルーティング×プロリクルーター”の組み合わせが広がる理由

今、プロリクルーターが非常に注目されています。その背景には、企業のダイレクトリクルーティングの活用が進んでいることがあります。これまでキャリア採用におけるメインチャネルだった人材紹介会社から、自社が能動的に採用に関わるタレントアクイジションの流れが進んでいく中、ダイレクトリクルーティング+プロリクルーターの組み合わせで、キャリア採用の成功確率を高めていこうとする動きが活発になっています。なぜ今、企業はダイレクトリクルーティングへ採用チャネルをシフトチェンジしているのか。プロリクルーターが求められている役割とは何なのか。中途採用の動向に詳しいInterRace株式会社顧問の黒田真行さんに伺いました。

インタビュイープロフィール

InterRace株式会社 顧問
ルーセントドアーズ株式会社 代表取締役
黒田真行

1988年株式会社リクルート入社。2006~13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長、HRプラットフォーム事業部部長、株式会社リクルートドクターズキャリア取締役などを歴任。2014年、ルーセントドアーズ株式会社を設立し、35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。各種メディアへの寄稿多数。主な著書に『人材ビジネスの未来シナリオ』などがある。


ダイレクトリクルーティングが日本に誕生して20年

一般的にダイレクトリクルーティングとは、人材データベースから企業自らが求める人材を検索して、スカウトメールなどで直接アプローチできる採用手法のこと。ダイレクトリクルーティングができるサービスが日本に登場して、およそ20年が経過しました。まずはそれ以前の歴史から現在までを、簡単にたどっておきたいと思います。

日本における求人メディアの歴史は、1900年代初頭からの新聞の求人広告、1970年代以降の求人情報がメインの時代が長く続いた後、1990年代後半以降のインターネットの登場によって革新的な変化が生まれました。誰がどのように情報を見て、判断して、動いているかわからなかった紙メディアの求人情報誌の時代から、インターネットの求人メディアの登場によって、求職者側の行動履歴が可視化されるようになり、職歴情報データとあわせてストックできるようになりました。

この変化によって、各登録者に興味・関心の高い求人を提案するレコメンド機能が進化し、企業が登録者の属性や希望条件に合わせて、候補者にスカウトメールを送信して応募を促すアプローチができるようになりました。2001年頃には大手求人サイトがいち早くスカウト機能をリリースしましたが、水面下で1to1でダイレクトに送られるスカウト文面作成のルール整備が追い付かず、誇張表現や事実と異なる条件提示がされたことで、トラブルが多発し、企業が候補者にダイレクトにスカウトを送付する機能が停止される事態も起こりました。そのため2000年代は、企業の要望を受けてメディア側のスカウト担当者が文面作成や、送信・返信を行う代理人型が主流となっていました。その後2009年にビズリーチがダイレクトリクルーティングを提唱し、企業が求職者に直接アプローチできるプラットフォームの提供を開始し、2010年以降、再び徐々に企業がダイレクトにスカウトを送信するサービスが広がっていきました。

エージェントの人選プロセスは、企業にとっては「ブラックボックス」

ダイレクトリクルーティングのニーズが勢いを増してきたのは、ここ5年、2019年以降のこと。それは、企業が人材紹介会社への依存に危機感を感じ、オウンドメディアやダイレクトリクルーティングを活用した自社主導のタレントアクイジションの動きを強化してきた時期でもあります。

ダイレクトリクルーティングでは、転職エージェントに任せていた候補者探しから、面接の調整やクロージングに至るまで、全て自前で行わなければなりません。そのような煩雑な業務を行ってでも、企業の人事採用担当者は採用プロセスの透明化を図ろうとしています。

この背景には、人材紹介会社だけに任せていては、採用充足率が高められない構造へのストレスがありました。企業が人材紹介会社に「こういう人材がほしい」という求める人物像を伝えても、エージェントからは、「では、候補者が1名いましたので推薦します」「残念ながら該当する人材がいませんでした」といった報告だけで、そこに至るまでのプロセスがブラックボックスだったわけです。

例えば、自社の候補者がその転職エージェントのデータベースに50名いたとした時に、全員に声をかけたのか、あるいはそのうち10名にしか声をかけなかったのかも分かりません。また自社に興味を持った候補者が3名いたにもかかわらず、そのうち2名は紹介手数料が高い採用競合企業に紹介されたかもしれません。その状態が企業の人事採用担当者には、大きなストレスになっていたのです。

その点、ダイレクトリクルーティングはデータベースが可視化されているので、求める人物像がどのくらい存在しているかわかり、直接アプローチすることもできます。そして結果的に、どのような人材から反応があり、どのような人材に断られたのかが明確になってきます。こうしたプロセス自体に価値が出てきます。なぜなら、それによって自社の採用課題が明確になり、次なる打ち手を考えて、実行することができるからです。これが、企業がダイレクトリクルーティングを積極活用している大きな要因です。

「スカウト返信後の進捗管理のケイパビリティ」が課題に

現在、企業はダイレクトリクルーティングにおいて一定の採用決定ができるようになってきました。その一方で新たな課題も発生しています。それは、限られた人事担当者のリソースだけでは、反応のあったスカウトメールに迅速に対応できない点です。つまり、プロセッシング=「スカウト返信後の進捗管理のケイパビリティ」が課題になっているのです。

せっかくスカウトメールに反応があったにもかからず、スピーディな対応ができないばかりに、競合他社に取られることも少なくありません。そこで企業はプロリクルーターを活用して、「スカウト返信後の進捗管理」を強化することで、採用の「量」と「質」の向上を図っています。

プロリクルーターに求められるのは、応募者への「おもてなしの精度」

プロリクルーターに求められるのは、企業のターゲット人材に対して的確なスカウトメールを送るノウハウ以上に、転職意欲の高いうちに候補者にアプローチして、クロージングできるスキルです。

超売り手市場に変化している現在の中途採用領域において、ダイレクトリクルーティングで成功を収めるには、求職者に対する「おもてなしの精度」を高めることが極めて重要です。「おもてなし」には、応募者に対しての「丁寧な対応」だけでなく「迅速な対応」も求められ、これは超売り手市場では採用決定効率に直結する大事な要素になっています。

プロリクルーターが企業の採用担当者や転職エージェント従事者のキャリアパスに

現在、私はX(旧Twitter)やLinkedINなどのSNSで、情報を発信していることもあり、さまざまなビジネスパーソンから転職相談をいただきます。そこでは大手企業の採用担当者や、転職エージェントの従事者からの相談が増えています。企業の採用担当者でいえば、社内のジョブローテーションにより、人事採用スキルが高められないジレンマに悩んでいたり、転職エージェントの人たちは、採用環境が大きく変化している中で、このまま転職エージェントでキャリアパスを築いていけるのかどうかという不安を抱えています。

「ダイレクトリクルーティング×プロリクルーター」は採用市場において、今後スタンダードな組み合わせになっていくでしょう。しかし、現状プロリクルーターはまだまだ未充足な状況です。企業での採用担当者や、転職エージェントの経験者であれば、即戦力としての活躍が十分見込まれます。ダイレクトリクルーティングにおけるスタンダードになりうる採用スタイルには、新たなキャリアの可能性がつまっています。



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