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新規上場企業分析: ビッグデータ解析の技術ベンチャー、ユーザーローカルの安定感ある成長

インターネットのサイト運用では、ユーザーの動きを検証しながら施策を打っていくことが肝要です。23日に東証マザーズ上場承認を受けた株式会社ユーザーローカルは、アクセス履歴の解析や可視化技術を用いて、使いやすいデータサービスを提供する企業です。本記事は一の部を元に作成されています。

同社は2005年に設立され、代表の伊藤将雄氏が早稲田大学大学院国際情報通信研究科で培った研究成果を元にサービス展開していった会社です。ウェブサイトのアクセス解析ツール「User Insight」、ソーシャルメディアの分析ツール「Social Insight」、メディアの解析サービス「Media Insight」を提供しているほか、ヤフーとニフティ向けにサービスのOEMを提供しているのが事業の柱です。

業績は拡大を続けていて、直前期の2016年6月期は売上高が7億8300万円、純利益が2億0100万円。進行中の2017年6月期の下期も、売上高が4億5700万円、純利益が1億2900万円となっています。営業利益率は41.8%となり、月額課金が積み上がっていくB2BのSaaSが中心で、非常に利益率の高い事業を作れていると言えるでしょう。ヤフー向けの売上は上期で売上高の10.7%を占めていますが、その割合は2016年6月期の20.4%から徐々に低下しています。

※ヤフーとの契約は今年10月までの4年契約で、特段の意向がなければ2年間の自動更新の条項が付いているとのこと。

大株主は伊藤代表が71.19%を保有しており、VCでは協業もしているヤフー系列のYJキャピタルが7.55%、イーストベンチャーズも1.43%を保有しています。楽天・三木谷社長の個人会社であるクリムゾングループも2.16%を保有しています。上場時には伊藤氏が15.6万株、取締役の渡邊氏が4万株、監査役の中村氏が4000株を放出するほか、公募で20.5万株を発行します。

最後に各種データです。

想定価格: 2,860円
上場時想定時価総額: 103.4億
新規発行株数: 20.5万株
調達金額: 5.86億
PER: 51.48倍
PBR: 9.99倍

■ユーザーローカルの今後を占う

1.ビジネスモデルは安定性あり
2.激烈な競争を勝ち抜けるか
3.まとめ

1.ビジネスモデルは安定性あり

上期のPLを見ると、売上が4.57億に対して、売上原価が0.52億で、粗利が4.05億。そこに販管費が2.13億かかり、営業利益が1.91億という計算。ビジネスモデル上、売上原価はサーバー費用等に限定されると見られ、エンジニアと営業要員の人件費が費用の大半を占めます。

SaaSモデルのため、ユーザー数の拡大がそのまま原価の拡大には直結せず、一定数の顧客を獲得すれば、それ以降は利益率の増大という形で現れます。特に同社はヤフーとニフティという大口顧客を抱え、ヤフーだけで半期で0.5億の売上があるため、ここをベースとすることができます。

同社が提供しているサービスは、ウェブサイトやソーシャルメディアを運用する際の基盤となるサービスで、価格も5~10万円/月と安価であるため、継続率は高くなると推察され、非常に安定的なビジネスであると考えられます。

2.激烈な競争を勝ち抜けるか

一方で、アクセス解析の分野は非常に競争が激しい分野です。グーグルが提供するGoogle Analyticsや、リアルタイム解析を売りにするChartbeat、ユーザー数が増えているPt engineなど無料から使えるツールや、大規模サイト向けにはAdobe Analytics、RTmetrics、Google Analytics Premiumなど数百万円の費用がかかるサービスまで多彩。

近年ではデータを一元管理するという思想で、DMP(データマネジメントプラットフォーム)の導入が進んでおり、DMP各社も分析や解析の領域まで踏み込む傾向にあります。これらは一般的に高価であるため、ユーザーローカルの5~10万円の安価で手頃なツールとは異なりますが、将来的には競合となる可能性はあります。

同社では今後の展開としてビッグデータ・AI活用を掲げていています。エンジニア集団である同社としては、上場による知名度アップも背景に、更に優秀なエンジニアの確保に努めていく必要もあるでしょう。

3.まとめ

月間120億PV、150億件のSNS投稿、30万記事を解析しているビッグデータ企業であるユーザーローカル。エンジニアリングを中心に業績を拡大しているベンチャーらしいベンチャーでもあり、今後の事業展開が楽しみです。

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