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私は家事ができると思っていた

昨年、実家を出て都内に引っ越しをした。
はじめての一人暮らしであったが自分の家事能力にはある程度の自信があった。
実際、実家にいた頃も両親が出張で月の半分程いないなんてことがよくありその間自炊をし、洗濯をし、風呂に入りきちんと生活できていたのだ。

しかし、一人暮らしを始めてからの生活はどう考えてもそれまでの「ていねいな生活」とはかけ離れたものだった。
食事のレトルトカレー率の高さ、シンクに積まれたお皿、溜め込んだ洗濯物、出番の少ない風呂、布団からはあまり出たくない。

一人暮らしをしてはじめて気づいたのだ。
わたしの生活力は環境に支えられていたものだと。

実家は環境が整いすぎていたのだ。そこそこ立派な分譲マンションに共働きでも回るように揃えられた家電たち。そんな中で暇な学生が生活できるのは当たり前だった。

まずは料理。実家のキッチンはめちゃくちゃ広かった。家族3人で料理しても余裕があるくらいに広かった。デカい冷蔵庫もオープンもあった。そんなキッチンに好き勝手物を広げる料理しか知らないわたしが一つしかないコンロとそれぞれコンロと同じ程度のシンクと作業スペースで何ができるというのだろうか。更に食洗機もないので皿も自分で洗わなければならない上にシンクが狭すぎて一瞬で埋まってしまう。溜め込んだ皿を干すスペースもあまりない。早々と料理諦め炊飯器で作れるものとレトルトカレーの交代制となった。

次に洗濯。浴室乾燥が必須なことは夜型人間なので予め想定していた。
が、しかし。浴室乾燥が弱々しい。沢山干すと乾かない。つまりこまめな洗濯が求められるのだ。その上縦置き洗濯機はなぜだか服がシワになる。全てが嫌で家政夫を雇った。とりあえずはドラム式洗濯機より人間の方が安かった。

風呂。これは家事ですらないが風呂に入りたくない。実家にいた頃は毎日風呂を沸かし広々とした湯船で身体を癒していた。けれど今はあんまり風呂に入りたくない。実家では風呂自動ボタンを押せば勝手に風呂が沸き暖房が入り温かなお風呂ができあがってきた。時間が経てば追い焚きもできたしそもそも暖房が入るのであまり冷めなかった。それが今はどうだろう。蛇口を捻りタイマーをかけ(たまに気づかなくて溢れさせる)お湯を止め冷める前に風呂に入らなければお湯が無駄になる上に風呂場は寒かった。辛い。しかもそこまでして用意しても風呂は狭いのだ。

そしてもうひとつ。部屋が寒いのだ。もちろんエアコンはあるし24時間付けっぱなしである。でも寒いのだ。引っ越した際にクリーニングもしているので単に部屋の広さと出力が合っていないのだろうか。エアコンの真下にあるベッドの上しか暖かくないのだ。足が冷えすぎてスリッパを導入した。実家の床暖房が恋しい。

この通り、わたしがまともに生活できていたのは限りなく両親が揃えてくれた環境のおかげだった。わたしにはなんの生活力もなかったのだ。今は友人を家政夫として雇うことでどうにか生活を回している。

住むところはケチってはならない。それが半年ちょいの一人暮らしでの学びだった。幸運なことにこの引っ越しは不動産屋も通さず、家具はほぼ貰い物、家賃は半額近くに値引きしてもらい凄まじく安く済んでいた。中途半端にお金をかけていたら気軽に次の引っ越しも考えられなかっただろう。
次に引っ越す時はしっかりお金をかけて実家と同じだけの設備を揃える。そう心に強く誓ったのだった。

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