テクノロジーと社会の関係をどうやって考えていけばいいのか

※このnoteは学術系クラウドファンディングサイト「academist(アカデミスト)」さんで実施させていただいている、
人とAIが健全な関係性を築くために、技術と社会の両軸を横断したい」というクラウドファンディングに関連したものです。2020年3月16日19時まで、ご支援をお待ちしております!!

こんにちは。中尾と申します。
いつも応援していただいている皆さま、ご支援いただいている皆さま、ありがとうございます。

クラウドファンディングも残すところ4日となりました。毎日更新noteの2回目は、社会がどのようにテクノロジーに影響をもたらすのか、についてです。

クラウドファンディングのサイトの中で、私はAIが社会からどのようなものだと認識されているかを考えることもAI技術を発展させていく上では大切だと書きました。

テクノロジーが社会からの見方を考慮して作られている、ということは当たり前に聞こえるかもしれません。「必要は発明の母」なので、必要がないところに発明は生まれないはずだからです。

しかし、では社会からの見方によって、テクノロジーがどういう風に変わっていっているのか、ということについては、意外とはっきり言える人は少ないのではないかと思います。

今日は、その、どのように社会がテクノロジーに対して影響を与えるについての議論をご紹介します。

社会がテクノロジーに影響を与えるには、様々な人がひとまとまりになってあるテクノロジーに対して共通の認識を作っていく必要があります。色々な人が一丸となったグループのことを、ここでは社会グループと呼ぶことにします。

社会グループが技術に対してある特定の認識(不便さや、要望、ニーズなどといった認識)を持っている時に、それを解決し、同時にこれまでの需要も満たすようなテクノロジーがもたらされると、その技術は社会に受容されていくと言われています。

社会グループが技術に対して影響を与えた例として一番有名なのは自転車です。

自転車は、19世紀には今のような形はしていませんでした。当時の自転車は、前輪がとても大きく、後輪がものすごく小さいペニーファージングというタイプのものです。形自体は昔の自転車としてご存知の方も多いかもしれません。

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ペニーファージングの自転車(OpenClipart-VectorsによるPixabayからの画像)

この形は、若い男性がスポーツとして自転車に乗る時にスピードが出やすいから好まれたのだと言われています。しかし、サドルが高く不安定であるため、老人や子供、当時スカートを履くことが主だった女性にとっては利用しにくいものでした。

ここには二つの社会グループがいます。若い男性という社会グループと、老人・子供・女性の社会グループです。この後者の社会グループは19世紀当時も認識されていて、何タイプかのサドルが低いタイプの自転車が考案されていましたが、スピードが出ないために従来の需要が満たされず、一般的なものにはなりませんでした。

そんなとき、ゴムタイヤが開発されます。ゴムタイヤは一見不細工に見えるのですが、実際に走ってみるとただの木の車輪を装備したペニーファージングよりも高速でした。そこで、サドルを低くして、ゴムをつけた自転車が一気に一般的なものになっていきます。つまり、スピードが出るという従来の若い男性の社会集団からの要望にも応えつつ、より安全性が欲しいという老人・子供・女性の社会グループの要望にも応えたため、新しい技術の形(この場合だとゴムタイヤ付きのサドルの低い自転車)が急速に一般化していったのです。

このように、ある技術に関係する社会グループの間に存在する異なった要望が、新たな技術がもたらされたことで同時に満たされ、新しい技術のあり方が安定化していくと、新しい技術が社会に受け入れられていくのだとわかります。このような社会グループと新しい技術によって技術の形が安定化していく、という議論は専門的には技術の社会的構成(Social Construction of Technology, SCOT)と呼ばれています。

このSCOTは、自転車以外にも様々なところにも応用可能です。個人的な話になりますが、私は学生時代、なぜYouTubeが日本で合法になったか、ということを考える時に、違法な動画を一瞬で探してきてブロックする「コンテンツID」という仕組みが自転車の例でいうゴムタイヤのように機能して、日本の著作権法制の関係者という社会グループと、YouTube社という社会グループの間の調和がとられた、という議論を行いました。

同様に、SCOTをAI技術に対して応用していくことも可能です。AIを構築している会社、エンジニア、ユーザー、研究者、など様々な社会グループが関係してくるはずです。また、それぞれの社会グループはより細かく分かれていくかもしれません。

個人的には、SCOTの考え方を応用すると、技術がもたらす影響というのがある程度予想することができるので、技術が社会と相互作用してどのように変わっていくかも予想できるのではないかと思っています。

SCOTの議論自体は80年代末になされた議論なので、今では様々なアップデートや異なる議論もあるのですが、非常に基本的な議論枠組みとして現在も生き残っています。今回は技術と社会の関係をどう考えていけばいいか、ということの例としてご紹介しました。

少し長くなってしまいましたが、ここまで読んでいただいてありがとうございました。

興味を持っていただけた方で、ご支援まだいただけていない方がいらっしゃいましたら、ぜひクラウドファンディング「人とAIが健全な関係性を築くために、技術と社会の両軸を横断したい」のご支援もよろしくお願いいたします!

明日は、人間の大事な意思決定は一体どうやってなされるべきか、ということを考えていきたいと思います!

ありがとうございました。

参考文献:
Pinch, Trevor & Wiebe Bijker 1987, "The Social Construction of Facts and Artifacts: Or How the Sociology of Science and the Sociology of Technology Might Benefit Each Other", in The Social Construction of Technological System, eds. by W. Bijker, T. Pinch and T. Hughes, The MIT Press. 

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豆乳とビールが好きです/企業研究所の研究員/レコメンダ/音楽/社会と技術/STS/HCI/著作権制度と情報技術。文理を分けることなく分野を転々としています。法学部志望→理系学部(B1-B3)→社会学系分野(B4-M2)→情報系の研究員←今ここ。
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