エンジニアではない人がAIをハックするにはどうすればいいのか

※このnoteは学術系クラウドファンディングサイト「academist(アカデミスト)」さんで実施させていただいている、
人とAIが健全な関係性を築くために、技術と社会の両軸を横断したい」というクラウドファンディングに関するものです。既にクラウドファンディングは終了いたしました。多くの方のご支援、本当にありがとうございます。今後とも頑張ってまいります!

こんにちは。中尾と申します。
いつも応援していただいている皆さま、ご支援いただいている皆さま、ありがとうございます。

3月16日の19時でクラウドファンディンを終了いたしました。最終的に184%の達成率となりました。本当に多くの方のご支援をありがとうございました。このクラウドファンディングはゴールではなく、出発地点です。今後より一層研究に邁進していきます。

一日空いてしまいましたが、毎日更新noteの最後となる本日は「エンジニアではない人がAIをハックするにはどうすればいいのか」ということについて書いていこうと思います。

当初は人とAIの関係がどうなっていくのか、という話題について書こうとしていましたが、一回のnoteにおさめるより少しずつ書いていった方が読んでいただきやすいのではないかと思いました。

そこで、今回はその中でも、現在のAI技術を普通の人(エンジニアではない人)がどのようにすれば変えていけるのか、という話題についてお話ししようと思います。

なぜ、エンジニアでもない人がテクノロジーをハック(改変)する必要があるのか。それは、テクノロジーに対しては常に社会的な批判が付きまとうからです。批判が大きい技術だからこそ、非エンジニアであっても自分なりの考えを持って技術と付き合っていく必要があります。

人工知能(AI)技術が検索エンジンや各種レコメンドシステムを通じて生活の隅々まで浸透した現在では、各所でAIに対する懸念が叫ばれています。

中には、AIが人間を超えるとか、AIに(映画のターミネーターやマトリックスのような形で)支配されてしまうのではといった不安も聞かれます。しかし、このような不安は考えても仕方がないと思っています。

AIと人間の知性の形はかなり違うものであり、AIは人間の完全なる他者です。また、映画のようにAIに武力で支配される未来については、実現可能そうな道筋でそのプロセスが想像されているシナリオを見たことがありませんし、想像しにくいものです。

その代り、AIによる「支配」というのが日常的にAIからの影響を受けて人のあり方が変容していくことであることを意味するのだとすれば、今現在もそれは常に起こっています。

例えば、TwitterやSNSでは、自分に提示されるコンテンツがAI技術によってパーソナライズされていきます。このため、自分に都合のいい情報しか提示されなくなっていく、という問題が有名です。

これにより、人は自分の見たい意見しかネットの中で見ることがなくなり、世の中のほとんどの人が自分に近い意見を持っているのだという錯覚に陥る可能性がある、という問題が起きます。こういった問題はバブルフィルターとかソーシャルエコーチェンバーなどと呼ばれます。

今やオンラインでキュレートされて提示される情報のほぼ全てがその人ごとにパーソナライズされた状態で提示されます。工学的には、このバブルフィルターを乗り越えようとする研究は、インターフェイス研究やアルゴリズム開発のような形で様々に行われています。しかし、非エンジニアであるユーザーがどうすればこの状況に抗えるのでしょうか。

色々な視点があるのですが、一つの方法は予め自分が知るべきである、知りたい情報についての条件を明確にしておくこと、もう一つはいろいろな異なる人格をネットの中で持っておくことです。

一つ目の、知りたい、知るべき情報というのは時事問題、芸術、学問、海外の情報などひとにより多様です。そのほしい情報をできるだけ決めておいて、その情報だけがフィルターされるようにしておきます。

アカウントをテーマ別に持っておくことで、漠然とした「情報」を見せられるのではなくて、意識的にカテゴリ分けされた情報を摂取できるようにする、ということです。

また、知らなくていい情報、というのを定義しておいて、そういう情報が流れてきたら積極的にその情報をシャットダウンしていく、ということももちろん有効です。

例えば、私はTwitterでは扇情的であったり、情報の出どころが不明な情報が流れてきた場合は、元のTweet主のところまで戻って情報の出どころを確かめます。そして、出どころがよくわからないものに関しては「このツイートには興味がない」のボタンを押して積極的に自分の要らないものを学習させようと試みています。

しかし、こういったやり方で見る情報を絞っていくと当然目に入る情報が偏っていくので、そこで二つ目の方針が登場します。

二つ目は違う人格、というか違うポリシーで運用されている他のアカウントを持っておく、ということです。

今でも、かなり多くの人が複数のTwitterアカウントを併用してそれぞれの役割を使い分けていると思いますが、そうしたことを能動的にやっていく必要があります。

これによって、様々な観点からの意見が入ってきますし、アカウントを一つしか持っていなかったときには見えなかった隠された層の存在を知ることができます。

ここで一本の動画を紹介したいと思います。エイミー・ウェブさんという方のTED Talkです。

2013年ということで今から7年前の動画ですが、ユーザーがどのようにして自分に都合よくテクノロジーを利用するか(どのようにしてハックするか)が示されている素晴らしい発表です。

この発表はマッチングアプリを使ってどのようにして彼女が現在の人生の伴侶と出会ったか、という物語なのですが、非技術者によるマッチングアプリのハックの方法が詰まっています。

彼女はまず、恋愛対象についての自分の好みをノートに書きだして明確化しています。その数はなんと72個。これだけの数の条件を明確化するだけでもすごいですが、彼女はさらにそこに点数をつけて、マッチングアプリに出てくる男性をすべて自分なりに点数化することに成功します。

それだけでなく、彼女は自分の好みに近い男性としてのアカウントを複数個作って、どのような女性がそういった男性にアプローチしてくるかを分析し、その女性達の傾向を割り出すことに成功します。つまり、あえて男性としてアカウントを運用することで、自分のライバルを分析した、というわけです。

この例では、上で述べたような、自分の知りたい情報(この場合は自分がアプローチをかけたい男性の条件)と、異なる観点からの情報をできるだけラディカルに取り入れる、という二つを満たすことでうまくオンラインデーティングというサービスをハッキングすることに成功しています。

この例のようにうまくハッキングできる例はまれです。例えば、企業と人とのマッチングであれば、一人の個人が企業に成りすますことはかなり難しいでしょう。

しかし、重要なことは与えられた情報を鵜呑みにしないで、自分が何を求めているのかを暫定的なものでもいいのでできるだけ明確にし、そして様々な立場に立ってその情報を自分に提示させるように動くことです。

これからのAIと人のかかわりは、非エンジニアにとっては、このように日技術的な部分でいかにテクノロジーを用いたサービスをハックしていけるか、ということにかかっています。

もちろん、そのためにはテクノロジーそのものについての知識を持っておくことも役に立ちますし、政治経済的な立場からテクノロジーに関して批判をしていくことも役に立ちます。

今回のクラウドファンディングの成果物の一つである書籍の中では、このような、非エンジニアはどのようにテクノロジーをハックしていけるか、ということも議論していきます。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。今後とも、研究を続けていきます。どうぞよろしくお願いします!

このnoteは、今後は1,2週間に一回程度のペースで更新していければと思っております。またお会いできることを楽しみにしています。

本日もありがとうございました!

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豆乳とビールが好きです/企業研究所の研究員/レコメンダ/音楽/社会と技術/STS/HCI/著作権制度と情報技術。文理を分けることなく分野を転々としています。法学部志望→理系学部(B1-B3)→社会学系分野(B4-M2)→情報系の研究員←今ここ。
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