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【名建築探訪】フランソワ喫茶室(京都)

インテリアBiz+のasaです♪
今回は1934(昭和9)年創業の、フランソワ喫茶室をご紹介します。
由緒正しきこちらの喫茶店は、2003(平成15)年に喫茶店として初めて国の登録有形文化財に登録された名建築でもあります。

独特の存在感を持つ古式ゆかしき喫茶室

様々な建築様式を組み合わせた外観
ゴシック様式の尖頭アーチ型の窓

フランソワ喫茶室は、京都一の繁華街・四条河原町から徒歩数分の場所に位置しています。メインストリートから細い路地を少し下がった場所にあるため、その佇まいは独特でありながら静謐。
そんな特有の雰囲気を醸し出している理由は、その喫茶室が様々な建築様式を兼ね備えて設計されたことに加え、昭和初期から苦難の歴史を経て、大切に守られ続けたからに違いありません。
建物の外観は、軒下にロマネスク様式特有の装飾を持ち、ゴシック様式の最大の特徴である尖頭アーチを備え、2階のベランダはコロニアル様式風に設計されています。
「ロマネスク様式」や「ゴシック様式の尖頭アーチ」は、インテリアコーディネーター資格試験でも頻出される単語なので、この機会に頭に入れておくと良いでしょう^^

和洋が絶妙に調和した美しい内観

後期イギリスバロック、ゴシック、古典主義といった建築様式の調和が美しい店内
天井は和様建築の「折上格天井」を想起させます
店内のステンドグラスは画家・高木四郎のデザイン

店内は、西洋の様々な建築様式に加え、日本の伝統的な建築様式を思い起こさせる天井を兼ね備えています。
店内に入って、まず目に飛び込んでくるのが印象的な壁面。
後期イギリスバロック・ジャコビアン様式の最大の特徴である「ねじり柱」に、ゴシック様式の尖頭アーチ型や古典主義的なドーム型に形作られた壁面装飾が、見事に調和しています。ギリシャ風の円柱型の柱もポイント。
この辺りもインテリコーディネーター資格試験で問われやすい用語です。写真を見て、しっかりイメージできるようにしてくださいね^^
また天井の仕様は日本の伝統建築である「折上格天井」を想起させるつくりになっています。
「折上天井」とは、天井の中央部分を周囲より一段高く取った天井、「格天井」は角材を格子に組んで裏に板を張った天井のこと、でしたね。
ふたつの特徴を併せた「折上格天井」は、日本の書院造に特徴的な建築様式として、インテリアコーディネーター資格試験を臨むにあたっては必ずおさえておきたい様式です。

創業時は社会主義運動家のサロンだった喫茶室

創業者の立野正一

「フランソワ喫茶室」の創業は、1934(昭和9)年。
創業者は社会主義運動家の立野正一(1907[明治40]年~1995[平成7]年)です。
彼は1934(昭和9)年に木造2階建の町家を譲り受けると、さっそく改修に取り掛かり、現在の南棟で喫茶店を開業させます。続いて、1941(昭和16)年に北棟を改修し、喫茶店はそちらへ移転。その後、1950(昭和25)年の南棟の改修を経て、南北両方を喫茶店とする現在の形に落ち着きました。
立野正一は当初画家を志し、京都市立美術工芸学校を卒業しましたが、後に労働運動に身を投じ、1930(昭和5)年から京都市北部で洛北友仙工争議が活発化すると、朝鮮人・中国人労働者、被差別部落民とともに争議現場を指揮するなど、精力的に活動します。
そんな立野によって開業された喫茶室は、当初、思想や哲学、芸術を語り合うサロンという目的を持っていました。
1936(昭和11)年には中井正一や斉藤雷太郎らが編集・発行した反ファシズム新聞『土曜日』の配布を支援するなど、京都における社会主義運動の拠点という役割も担っていたのです。
現在の静かな佇まいからは想像できませんが、創業当初は多くの活動家が活発な議論を繰り広げていたのですね^^

現在は様々な文化人や学生が訪れる名所に

チーズトーストとカフェラテ。とても美味しかったです^^

立野はその後、当時壊滅状態にあった「日本共産党」の再建をはかりますが失敗に終わります。
1937(昭和12)年には、逮捕・投獄されるなどの憂き目に逢いますが、出所後の1941(昭和16)年、京大留学生アレッサンドロ・ベンチヴェンニや画家・高木四郎の協力を得て改修に尽力。
努力の甲斐あって、現在も数多くの学生や文化人に愛される名物喫茶として独特の存在感を放っています。
私が訪れたのは平日の午前中でしたが、ひっきりなしにお客さんが入ってきて、その客層も幅広く、長い歴史を経ても色褪せることのない「フランソワ喫茶室」の魅力に驚くばかりです^^

いかがでしょうか?
インテリアの歴史という観点からも、非常に興味深い「フランソワ喫茶室」。
機会があれば是非訪れてみてくださいね。
では、また♪