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【中国語講座】句号まで続く

日本語はダラダラと長い文は嫌われますよね。まぁ普段おしゃべりしている時は、あまり気にせず「~して、~したときに、~したと思ったら、~なんだけど、~みたいな、でも~」と、文字に起こしてみるとどこで句点「。」を打ったらいいんだろうと思うような文を言っていますけどね~(笑)。

でも中国語は結構長い文も多いですよね。4~5行くらいの分量の1つの段落が、よく見ると“句号(。)”1つしかなく、なが~~~い1文だった、ということも、そんなに珍しいことではありません。話が込み入ってくると、主語のない動詞がいくつも出てきてどういうことになっているのか困ることも、ままあります。

そんな時は、基本的に“句号”が来るまでは、同じ主語が続くと思えば、まぁ大体上手くいくかと思います。

簡単な例を1つ出しておきましょうか。

戈尔巴乔夫称赞穆拉托夫是“勇敢而诚实的新闻工作者”,希望他把现在的报道姿态继续发扬下去
Gē’ěrbāqiáofū chēngzàn mùlātuōfū shì “yŏnggăn ér chéngshí de xīnwén gōngzuòzhě”, xīwàng tā bă xiànzài de bàodào zītài jìxù fāyáng xiàqu.

この文、ちょっと古いのですが、ロシアのジャーナリスト「ドミトリー・ムラートフ」さんがノーベル平和賞を受賞したことについての、旧ソ連ゴルバチョフ元書記長のコメントを報じたNHK中国語ニュースの記事の一部です。

戈尔巴乔夫”がゴルバチョフ、“穆拉托夫”がムラートフです。

中国語では、最初の主語が文末までをずっと支配する傾向があります。途中で主語が変わる場合は、必ずその主語を明示します。新しい主語がない限り、どれほど長い文でも文末まで(句号まで)最初の主語が支配します。

この文の場合、文頭の“戈尔巴乔夫”が文末までを支配します。“戈尔巴乔夫”のすぐあとに“称赞”という動詞がありますので、その後の“穆拉托夫是‘勇敢而诚实的新闻工作者’”のところは称賛する内容です。

そして“逗号(,)”の後の“希望”という動詞の主語を考える時、え?ゴルバチョフ?それともムラートフ?と迷うことがあるかもしれません。この文は短いのでそう迷わないかもしれませんが、もっと長い文だと勘違いする可能性が高くなってきます。

そんな時は、「最初の主語が文末までを支配」というのを思い出してくださいね。

この文の場合だと、冒頭のゴルバチョフが“希望”の主語です。

一応日本語に訳しておきますと、「ゴルバチョフはムラートフのことを『勇敢で誠実なジャーナリストである』と称賛し、現在の報道姿勢を引き続き発展させていくことを希望した。」(直訳)

元の日本語ニュースはこうでした。「ゴルバチョフ氏はムラートフ氏について『勇敢で誠実なジャーナリストだ』とたたえた上で、今の報道姿勢を貫くよう促しました。」

ニュースでも論文でも、小説でも、長い文を読むと「だれがどうしたのか」が分からなくなってくることってあると思うのですが、「最初の主語が文末までを支配」というのを思い出せば、なるほど!と思えることもあるかと思います。覚えておくといいかもしれませんね。

通訳・翻訳家 伊藤 祥雄
大阪外国語大学外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院文学研究科 博士前期課程修了。通訳・翻訳業に加え、明治大学、東洋大学等の中国語講師を務める。NHK国際放送の中国語ネットニュース番組元キャスター。
著書に『すぐに役立つ中国語の基本単語集』(ナツメ社)をはじめ、『中国語検定対策2級問題集』(白水社)などの中検対策書多数。NHKテレビ「中国語!ナビ」のテキストで「中国語お悩み相談室」好評連載中。