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【中国語講座】上课

先日中国語検定の問題に解説を書いたところ、出版社の担当者からちょっと注文がつきました。

語順整序の問題だったのですが、中国語は英語と同じで「主語+動詞+目的語」という語順になる、と書き、例として“我 上 课。”と書いたのですね。そうすると、担当者は「初級では“上课”で1つの語として覚えるので、解説の仕方を変えるか、目的語が分かりやすい言葉にしてほしい」とおっしゃったのです。

確かに、これはいわゆる「離合詞」で、1語として扱われますが、その構造は「動詞+目的語」なので、問題ないと思った(というより、書いた時は伊藤としては1語という認識がなかった…笑)のですよね~。

不承不承書き直したのですが、でも離合詞っていうくくり、なんだか無意味な気がしているのですよ、僕は。

だって、これを1語と考えずに覚えたら、「これは離合詞だから重ね型にする時は?様態補語を使う時は?目的語の処理は?」なんて考えずに済むじゃないですか。

例えば “结婚 jiéhūn”は「結婚する」という日本語のせいもあり、1語として覚えている人が多いと思いますし、実際辞書等も1語として扱っていると思います。しかしこれも離合詞で、実際には“”が動詞で“”が目的語という構造をしています。だから「彼と結婚する」だと“和他结婚”となりますね。“结婚他”とは言えません。

だったら、最初からこの単語は「婚儀を結ぶ」という意味だと思って覚えておけば、そうそう色々困ることはなくなるんじゃないでしょうか?

毕业bìyè”はふつう「卒業する」と訳されているし、それでいいのですが、これも「動詞+目的語」構造なので、「~を…する」というように覚えておけばいいのにと思っています。“)”は日本語では「畢わる(終わる)」という意味なので、「学業を終える」という意味だと思っておけば、そうそう困ることはないかと。

もちろん、いちいち「彼と婚儀を結ぶ」「学業を終える」と訳すのは変ですから、訳す時は「彼と結婚する」でいいわけですが、単語を覚える時に1つ1つ「どうしてこの漢字の組み合わせなのかな?」と考えながら覚えていけば、いちいち「これは離合詞だから云々」と考える必要はなくなると思うのですよね~。

といって、第2外国語で中国語を学ぶ学生に、そこまで求めるのは、酷ですかね~(苦笑)。

でもネイティブスピーカーたちは「これは離合詞だから」という意識は当然ありませんから、よりネイティブに近い感覚を身に着けていければいいなと、日々思っております。まぁなかなか難しいですけどね~。

通訳・翻訳家 伊藤 祥雄
大阪外国語大学外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院文学研究科 博士前期課程修了。通訳・翻訳業に加え、明治大学、東洋大学等の中国語講師を務める。NHK国際放送の中国語ネットニュース番組元キャスター。
著書に『すぐに役立つ中国語の基本単語集』(ナツメ社)をはじめ、『中国語検定対策2級問題集』(白水社)などの中検対策書多数。NHKテレビ「中国語!ナビ」のテキストで「中国語お悩み相談室」好評連載中。