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氷川きよしさんの芸名を事務所が出願

歌手の氷川きよしさんが芸能活動を再開するにあたり、彼の事務所((株)長良プロダクション)が「kiina」「KIINA」の商標登録出願をしました(商願2023-59092号、2023-59093号)。この名前は氷川さんの新しい芸名といわれています。

しかしこれは、彼の独立を阻止する意図で商標出願した、との特許庁の判断が下りました。
なぜ事務所がこれらの名前を商標登録することが、彼の「芸能活動阻止」につながるのでしょうか?

彼はこの芸名で今後も活動すると言われており、事務所がこの商標を登録してしまえば、彼は事務所の許可なしにはこの芸名を使えないからです。

特許庁からの拒絶理由の内容はJ-PlatPatでは閲覧できませんが、事務所がこの拒絶理由に反論した意見書には、以下の特許庁の判断が引用されています。
「独立阻止のために商標出願を行ったという記事が確認されることから、出願人には、不正の目的をもって本願商標の出願に至ったことが推認されます」

そして、具体的な拒絶理由としては、
この拒絶理由は、
①公序良俗に反する(商標法4条1項7号)、
②他人の芸名を本人の承諾なしに出願した(同条8号)
であると予想しましたが、以下の参考サイトによると、その通りだったようです。

芸能活動を阻止したいがために先に商標登録するのは、「社会的相当性を欠く」という公序良俗違反の一つのパターンに当たると判断されました。
そのほか、芸名を他人が本人に無断で商標登録することも禁止されます(本人の同意書を提出すれば拒絶理由は解消します)。

これに対し、事務所側は次のことを主張し、本人との協議が終わるまで審査を猶予するように請求しています。
①彼の独立阻止や今後のタレント活動を妨害する意図は全くない、第三者の権利取得を防ぐために商標出願した
②タレント本人と、今後の活動と芸名使用について、協議を開始することに合意した

事務所はこのように反論していますが、もし本人の承諾なく芸名を商標出願したら、これは芸能活動阻止の目的としか考えられません。
商標は本来、消費者が商品やサービスを識別可能なように設けられている制度です。これを活動阻止に使用することは許されるべきではありません。この事件を見守りたいです。

参考サイト:


弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
翻訳家、執筆家、弁理士(奥田国際特許事務所)
株式会社インターブックス顧問、バベル翻訳学校講師
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)英検1級、専門は特許翻訳。アメーバブログ「英語の極意」連載、ChatGPTやDeepLを使った英語の学習法の指導なども行っている。『はじめての特許出願ガイド』(共著、中央経済社)、『特許翻訳のテクニック』(中央経済社)等、著書多数。