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デジタル万引きは著作権侵害か?

書店で本のページを自分用の記録に残すために、スマホで撮影する行為は違法でしょうか?

ルール違反とか道義的責任は抜きにして、著作権の問題を考えると、これは幸か不幸か写真を撮るだけでは著作権侵害ではありません。
自分のためだけに写真を撮るのであれば、「私的使用」になるからです。
 
著作権法30条1項1号
「著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(私的使用)を目的とするときは、その使用する者が複製することができる」
 
しかしこの撮影した本の内容をネットにアップロードすると、公衆送信権の侵害になります。また業務(会社の会議など)で配布するためにコピーすると、複製権の侵害になります。自分で利用するだけならよいのですが、不特定多数の人々に閲覧させると、著者や出版社に経済的利益を与えてしまうからです。
他方で、自分で利用するにしても、そこで本の販売が一冊損なわれているので、著者等に経済的損失を与えている、ここは事実です。
 
立ち読みはどうでしょうか?
これも刑法上の犯罪になる可能性も場合によってはありますが、著作権侵害ではありません。ここでは何ら複製行為は行われていないからです。
 
人間の記憶には限界があり、立ち読みで本の内容をすべて覚えることは不可能です。しかしスマホで撮影すると、記録に残せるので、かなり本を買う機会は失われてしまいます。スマホが発達する以前は、書店で本を写真撮影することは例外的でした。カメラで本を撮影することは目立つからです。
 
しかしスマホで写真撮影することは手軽であり、皆が何でも写真に収めることが一般的な今日、本を写真に撮ることにも抵抗がありません。
スマホで本の撮影を認めると、それを会社の業務や複数人に送信することも阻止することも難しくなります。
何らかの法規制をしないと、出版不況に拍車がかかりそうです。
 
立ち読みのモラルに関していえば、以下のサイトにもあるように、立ち読みは食品売り場の「試食」です。あくまで買うための味見です。立ち読みも本を買うために内容をパラパラと見る程度に留めるべきです。


参考サイト

弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
翻訳家、執筆家、弁理士(奥田国際特許事務所)
株式会社インターブックス顧問、バベル翻訳学校講師
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)英検1級、専門は特許翻訳。アメーバブログ「英語の極意」連載、ChatGPTやDeepLを使った英語の学習法の指導なども行っている。『はじめての特許出願ガイド』(共著、中央経済社)、『特許翻訳のテクニック』(中央経済社)等、著書多数。