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【確度の高さ】セリエA 23-24 第14節ナポリvsインテル レビュー

こんにちは!TORAです🐯

今回はセリエA第14節ナポリvsインテルのレビューです。

前回はサボり、超ライト版でお届けしたイレギュラー回でしたが、今回もいつもと切り口を変えてお届け。前半後半にセパレートせずお送りします。


●スターティング

●敵陣制圧ハイプレスvs再現性薄い脱獄

スタディオ・マラドーナでの後押しを受けて、積極的に主導権を握りに行ったのはホームナポリ。怒涛のハイプレスでアウェイチームに襲い掛かります。

前から果敢に圧力をかけるナポリ

✔︎配置そのままのマンツーマンプレス
✔︎オシメンは背中でチャルハノールを切りつつも、デフライ(アチェルビ)にちゃんと圧をかけ、ゾマーにもジャンプする
✔︎オシメンが前に出て行く分、ロボツカはしっかりとチャルハノールに付いていく

良い意味でも悪い意味でも特別感がないというか、フォーメーションの噛み合わせのままプレスをかけたナポリですが、先ず着目すべきはオシメン

流れの中で全体が高めだったり、差し込めるようなバックパスなど、”嵌められそうな”シーンではオシメンがデフライ、そしてGKゾマーへプレスをかける。

逆に全体の重心がやや低めだったり、仕切り直しっぽくなった際にはチャルハノールを背中で消しつつデフライを見る。

動きというよりも判断をサボらなかった。彼のジャッジでプレスの性格が決まる。これがGOOD JOBでした。

サボらないと言えば、昨季ナポリで公式戦4,000分以上出場したロボツカ

彼も「今フォロータスクなのか?チャル番になるのか?」を決して間違わず、機械のように粛々と仕事を遂行。正直、今季は昨季ほどのプレゼンスじゃないなー、と思っているんですが、それでもやっぱ凄いもんは凄い。

敵陣を占有するようなハイプレスにインテルは自陣磔の刑に処されますが、とはいえ、ちょこちょこちょこちょこ脱獄を許してしまったのがマッザーリの誤算だったでしょうか。

もちろん、ちょこやちょこちょこ程度は許容範囲内だったと思いますが、ちょこちょこちょこちょこという頻度になると話は別だったかな、と。

ここも特別感はなく、”いつも通り”で脱獄する黒青の囚人。

最近何度もしつこいですが、やっぱりこれ。今季のインテルは「良い意味で再現性が薄い」

右IHバレッラが斜めに落ちて第二の心臓となって血流を促す、IHがサイドに膨らんで空いたスペースにFWが降りてくる、と思ったら普通にアンカーのチャルハノールが指揮をする、などなど。

今日も柔軟にカードを切って、切り直して。あの手この手でプリズンブレイク。

この”やって、やられて”の応酬はレベルの高い一戦を構成したファクトとして挙げられるでしょう。

●右肩上がりvs左肩上がり

ナポリのビルドアップベースは4バックとアンカーがWを描くような配置ですが、今日は台所事情で左SBにナタンが起用された影響か右肩上がりが強めでした。

基本はこれ
今日は右肩上がり

高めを取った右SBディ・ロレンツォを起点に右から攻めるナポリ。データの観点でも如実でした。

ナポリのボールタッチマップ、FBrefを参照

ホームチームとしては当初の予定でもあった上で、18分の中央CBデフライの負傷交代が追い風となったでしょう。

最終ラインの選択肢がなくなったシモーネ監督はカルロス・アウグストの左CB配置を決断。今季加入の新戦力WB、左CBでのプレーはCLレアル・ソシエダ戦の終盤にほんのちょっとやっただけ。

というかtransfermarktを覗くと、これまでCBでのプレーはほとんどありません。

イタリア上陸前のコリンチャンスで「入団テスト時にCBとしての適正を見られた」との情報がありましたが、あくまで適正を見られただけだと思います。

transfermarktのデータ上は左SB固定ですね。

イタリア上陸後も加味すると、21-22シーズン(昇格シーズン)のみ終盤戦においてCBで継続的にプレーしていますが、なぜか右起用。おそらく負傷離脱のしわ寄せなんじゃないかな、知らんけど。詳しい方がいらっしゃったらご教示ください!

・12/5 18時更新
こちら「transfermarktは左右アテにならないよ」という有難い情報を頂きまして、少し追ってみたのですが、左起用でした。失礼しました。
でも1シーズンの終盤戦のみ!それくらいの経験値でインテルの左右CBをソツなくこなすんだからやっぱりすごい!

ということで、ナポリは元々右折しようとしているんですから、アウェイチームの危険信号が発せられる中、ハンドルを切る力が増すのは至極当然。

しかし、緊急出勤にも関わらず、左CBをそつなくこなすカルロスにナポリの右サイドは交通の便が悪くなります。

何が良かったかって、しっかり連動して前に出る。ベクトル前方向で迎撃できた点

ムヒタリアンと連動するカルロス

繰り返しですが、今日のディ・ロレンツォは高め配置。

よって、対面の中盤であるムヒタリアンがアンギサを超えてプレスをかける機会が多かったのですが、不慣れなカルロスがしっかり連動してアンギサを潰していた点はインテルのクリーンシート達成に大きく貢献。

モンツァからインテルきてゴリゴリなプレーが目立っているカルロスですが、やはり彼の個人戦術の高さと、それによる配置の妙は間違いないです。

本レビューでは非保持にスポットライト当てましたが保持も良かったですしね。

あくまで私見ですが、今季のナポリは敵陣制圧しリーグNo.1となるシュート数を積み重ねても、属人的な依存度が強くフィニッシュの最終局面に厚みがないのが課題と見ています。

本節もそう。

オシメンへクロスを送り怪鳥垂直飛びさせる、外に膨らんで起点となりCBを剥がした上でPA内前後に人を送る

クヴァラツへリアの理不尽

ディ・ロレンツォとオーバーラップとアンダーラップの極上二択

を促すポリターノの溜め。そして代名詞のカットイン→ミドルシュート

スーパーな彼らの、彼らたる所以を前面に押し出していましたが、昨季様々なクラブが散々やられたナポリ王道の殴り方はスカウティングされまくっているはず。

元々、相手を引き込んで中盤省略カウンターで育ったインテルの3-5-2。水際で守り切る粘りは昨季CLの躍進の基盤です。

ここに対してエラーを起こせなかった、エラーを起こす別手段が少なかったのがホームチームの悔やむべきポイント。

現状ラスパドーリが組織的に崩せることの光明なので、思い切ってオシメンに替えてトップ配置しても面白かったと思いますが、これはまぁ結果論か。

マッザーリが選んだ75分からの4-2-3-1変更が、たしかに最も現実的で妥当性がありますね。

選手交代を経て、75分〜ナポリは4-2-3-1へ

●確度あるアシスト

「属人的な依存度が強くフィニッシュの最終局面に厚みがない」

我が軍ごとで手前味噌ですが、属人的はややありつつも、フィニッシュの最終局面が厚みがあるのがインテル。

先制点は、キャプテン翼だったら間違いなくゴールネットが破れて壁にボールがめり込む演出不可避のチャルハノールのゴラッソあってこそですが、左サイドで粘り援軍を待ってのクロス→ファーのドゥンフリースが折り返し→中央で仕留める3レーンアタック。(そして手前のラウティのだいちゅきホールドはファールだったかもなぁと思ったり…)

そして2点目、3点目は厚みだけでなく『確度の高さ』に言及したいです。

2点目はゴール前でメッシになったバレッラが天晴れですが、ラウタロのアシストは彼の走り込みを把握し、しっかり狙いすましてパスを届けています。

尚、このシーンの起点でもカルロスがしっかり前に出たことでラウタロがポリターノからボールを刈り取っていますね。良き。

ムヒタリアンがロボツカに出て行ったので、カルロスは対面のポリターノを追った

3点目はバレッラの第二の心臓を担保にディマルコとカルロスが上がり、守備基準点を乱しながら左で密集作り。

そして反対サイドでアイソレーションとなったクアドラードへ第二の心臓がスウィッチを送ると、ナポリのスライドは間に合わず。

余裕を持ったクアドラードが放ったクロスはイメージと事象に寸分の狂いもなかったでしょう。確信のアシスト。

『アシストの確度の高さ』は今季インテルの自慢であり、ナポリの守備を打ち破る大きな因子でした。

選手同士の関係性による優位。

ユニットを機能させる手段による優位。

0-3というクリティカルな結果を得たインテル。Optaによるとナポリ戦アウェイで3得点以上の差をつけて勝利したのは(リーグでは)なんと1977年以来とのことです。

●公式ファン投票によるMOMはゾマー

会心の3ゴールを掴んだ試合ですが、インテル公式が行っているファン投票のMOMはゾマーでした。

違う選手に投票した方も結果自体に異論はないでしょう。

「ナポリの攻撃厚みがなかったよ!」と言っておきながらなんですが、GKがゾマーでなかったらそもそもエルマスのファーストシュートで被弾し、そのまま勢いに乗られて3-0で屈してしまう世界線もあったかもしれません。

定量的に見てみましょう。

※ゴール期待値とシュート後失点期待値というスタッツを扱うので、詳細を知りたい方はコチラをご確認ください。

スタッツサイトFBrefによるとエルマスのファーストシュートのゴール期待値はたったの0.02。あの距離あの角度からのシュートなんてそんなもんです。

しかし、エルマスが放ったシュートの質はとんでもなかった。

GK目線の期待値である『シュート後失点期待値』はなんと0.45

統計的にシュートシーンの価値は0.02点分ですが、エルマスのシュートそのものには0.45点分の価値があったと読み取れます。つまり超ナイスシュート。

「45%って半分以下か。じゃあゾマーなら止めて当然じゃない?」

と思われたかもですが、期待値って超膨大なサンプルが分母なので、算出値が低くなる傾向になると考えています。何が言いたいかというと、0.45でも充分難度が高いってこと。そして、それを当然に止めるゾマーのバリュー。

さらに後半、クヴァラツへリアに縦に抉られたシュートは至近距離ですが角度が厳しく、そのゴール期待値は0.1。

しかし昨季リーグMVPのクヴァラツへリア。そのシュート精度でGK目線のシュート後失点期待値を0.52まで引き上げました。当然に止めるゾマーのバリュー。

ナポリのゴール期待値(xG)とシュート後失点期待値(PSxG)、FBrefより引用

オシメンの超至近距離ヘディングをベクトル逆手でシャットアウトしたシーンはオフサイドだったのでスタッツが存在しませんが、オフでなかったら上記を超える難度だったのは間違いありません。

それすら許さなかった鬼神ゾマーに万雷の拍手を送りたいですね!

しかし、こうして見るとナポリのゴール期待値はちと厳しいですね。シュートシーンの価値(≒チャンス度)はいずれも低数値で、積み重ねても0.6にしかなりません。あくまでFBrefでは、ね。

ナポリサイドは判定に不満が残る一戦だったかと思いますが、スタッツ的には「個が個をしなかったら」勝てる試合ではなかったと言えます。

もちろん期待値が正義ではなく、なんなら僕自身もあくまで参考!を超えるものではないと思って扱っていますが、とはいえ、主観だけサッカーを判断するのも危険。

何が言いたいのかというと、ナポリを非難したいのではなく、判定が別に転んだとしても今日はインテルの日になる可能性がより高かったのかなと思っていますということ。

以上!

最後までご覧いただきましてありがとございました🐯

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