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【データ考察】セリエA20-21第7節時点 全20クラブのシーズン序盤を読み取る−前編

こんにちは!TORAです🐯

今回は考察記事。「【データ考察】セリエA20-21第7節時点 全20クラブのシーズン序盤を読み取る」です。
本記事は前編・後編の2部構成になり、こちらは前編になります。

・内容
セリエA 20-21シーズン第7節までのスタッツを参照し、全20クラブの傾向やスタイルを考察しよう!という内容です。

尚、本考察記事は下記の記事を私淑しております。

ポゼッション率ではなく、パスアテンプト(試みた回数)を指標に据えた傾向分析はシンプルかつ正鵠を射ると思っていて、試合の個人的なインプレッションとイコールもしくはニアになることも非常に多いです。個人的にプレビュー作成で貴重なデータとしてお世話になっております。

・目的
筆者は今シーズンのセリエA全クラブの試合を最低1回はチェックしておりますがいかんせん分母が少ないので、試合のインプレッションはあえて極力控えて客観視できるデータを核とした分析で今シーズンのセリエA序盤を整理したいな、と。

同時に本アウトプットがインテリスタ(筆者は大のインテルファンです)、セリエAファン、海外サッカーファンの方に届いて「おー!こんな考え方があるんだ!」、「セリエA面白そう!」と思って頂けることを理想としています。

・スタッツについて
✔︎スタッツはFBref.comを参照しております。一部のみSofaScoreを参照。

✔︎セリエA第1〜7節までのスタッツを参照にしております。他のコンペティションは考慮しておりません。

✔︎第3節のユヴェントス−ナポリ戦が無効試合となってしまった都合上、スタッツは累計ではなく1試合平均を参照しております。

●ピックアップスタッツ

個人的に気になったスタッツをピックアップしてみました。

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特定チームへの贔屓はなし、フラットにスタッツを見たとき、先ず目を奪われるのはサッスオーロではないでしょうか?
3年目を迎えた”イタリアのグアルディオラ”ロベルト・デ・ゼルビ監督のサッカーは波いる強豪を抑えてポゼッション率1位、ゴール数3位と自分たちの攻撃サッカーを貫いてリーグ順位2位。素晴らしいスタッツです。

10連覇を目指す王者ユヴェントスはいずれのスタッツにも突出すべきものはありませんが、ゆえ手堅さや万能さなど、”っぽさ”を感じられるかも。

逆に特徴的なのはインテルとヴェローナ。
両チームともスタッツに極端な山と谷が存在し、チームとして明確な意図や確固たるスタイル、または深刻な問題があると推察できます。

簡単に各チームのスタッツを確認したところで「パスアテンプト(試みた回数)1試合平均」を指標に据え、傾向分析を進めて参ります。

・本考察記事の定義
本考察記事ではパスアテンプトの平均回数によってチームスタイルをカテゴライズします。
✔︎550回以上➡︎ボール保持
✔︎500〜550回➡︎バランス
✔︎400〜500回➡︎ボール非保持

●パスアテンプト×総デュエル成功数

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本項の「総デュエル成功数」と次項の「ボール奪取数」のみSofaScoreのスタッツを参照しております。本来であれば定義が違うデータを混ぜるのはよろしくありませんが、SofaScoreの守備スタッツはボールコンタクトを伴うスタッツと伴わないスタッツに分かれており、より詳細な分析傾向を読み取れるので採用いたしました。

この2種の掛け合わせはざっくりとした大枠を確認するのに最適だと思っています。

・SofaScoreの定義
✔︎デュエル(地上、空中含む)➡︎ボールを保持している相手に対してフィジカルコンタクトを伴いボールの保有権を奪う、イーブンなボールをフィジカルコンタクトを伴った上でマイボールにする

デュエル勝利数の多いチームは球際が強く、配置から入るというよりは人に合わせて配置が動くようなアプローチだと想定されます。

一口に”ボールを保持する”と言ってもデュエル勝利数、すなわちアプローチの優先度でそのチームの傾向は異なります。

例えば、インテルやサッスオーロはボールを握り自分たちの時間を多く創造することでゲームそのものを掌握する。
アタランタやナポリはボールを保持しつつも、人へのアプローチを強めることで保持・非保持・ポジティブトランジション・ネガティブトランジションの4局面を優位に進めたい!という意図があると読み取れます。

1試合平均550回を超えるパスアテンプトとリーグトップとなるデュエル勝利数を誇るミランはより武力を行使して局面を制圧するのが目的でしょう。効果は絶大そうですが一方で消耗という対価を多く支払わないといけないかもしれません。

ミラノダービーのプレビューで「イケイケvsゴリゴリ」とセンスのかけらもない副題を付けた理由、分かって頂けたでしょうか?笑

ここにミランが若手を積極起用する理由の1つが存在していると言えるでしょう。クラブの各セクションがきちんとリンクして戦術とスカッドを紐付けている。理想的ですね。

●パスアテンプト×ボール奪取数

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ボール奪取数はSofaScoreにおけるタックル成功とインターセプトを合算したものを定義といたします。

・SofaScoreの定義
✔︎タックル成功➡︎ドリブル等のアクションを起こしている相手に対してタックルなどでボール奪取成功した
✔︎インターセプト➡︎コンタクトを伴わない、パスカットなどの守から攻への切り替え

ピックアップスタッツの項で触れたようにボール保持スタイルのチームはボールを奪う機会自体が少ないはずですが、パスアテンプトとの相関関係はさほど高くなりませんでした。
これは前線からのプレッシングでハメる、もしくはプレー制限でクリーンにボールを奪取するチームがますます増えてきたと解釈できるでしょう。
デュエル勝利数も上位の値だったアタランタはそのモデルケースと言えます。

デュエル勝利数、ボール奪回数の掛け合わせで各チームの輪郭が見えてきました。ここからはさらに詳細を掘り下げます。

●パスアテンプト×パス割合

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各チームの攻撃やビルドアップのソフト面を確認していきましょう。

・FBref.comの定義
✔︎ショートパス➡︎5〜15ヤードのパス
✔︎ミドルパス➡︎15〜30ヤードのパス
✔︎ロングパス➡︎30ヤード以上のパス

まずは最も分かりやすいロングパスの割合を散布図にしました。

当然ですがロングパスもパスアテンプトそのものに含まれるので相関関係は高めです。ボール保持スタイルはロングパス割合が少なく、非保持スタイルは多くなる傾向にあります。

そんな中、トレンドラインから大きく離れているスペツィアとジェノアは意図してロングパスに頼っていると読み取れるでしょう。

続いてはショートパスの割合を。

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こちらはロングパスとは逆でボール保持スタイルはショートパス割合が多く、非保持スタイルは少なくなる傾向にあります。

保持スタイルでショートパスに特化しているサッスオーロ、ナポリはそれぞれボール奪取とデュエル勝利数の多さからボール保持時の選手配置のクオリティがショートパスの回数とリンクしていると考察できます。

非保持スタイルでショートが少ないジェノアやパルマは典型的なカウンター狙いでしょう。一方、同じく非保持スタイルなのにトリノは意図してショートパスで繋いでますね。

●パスアテンプト×ゴール期待値

本項ではチームスタイルの反映が色濃いパスアテンプトがどれだけゴール紐づけられているのか?つまり、どれだけ効果的か、を確認します。
ゴール数そのものでも良いのですが、個の力でゴールを決め切る「ひとりでできるもん!」な選手(アレハンドロ・ゴメスやチーロ・インモービレ、アンドレア・ベロッティが代表格)の存在を考慮し、より組織由来のクオリティを分析できるゴール期待値をチョイスしました。

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目を惹くのはローマ。パスアテンプトはバランス型ですがゴール期待値はリーグトップ。非常にコストパフォーマンスが良い攻め方をしているのが分かります。
ボール保持スタイルはトレンドラインに非常に近く良くも悪くも妥当、な感じです。その中にあってラツィオが唯一トレンドラインから離れた位置に。
非保持スタイルもほとんどトレンドラインに近しいですね。ジェノアとスペツィアは期待値1を下回っており火力不足が窺えます。前者はFBref.comによるとインテル戦においての期待値がなんと0.0!だったのでこれが尾を引いてる感はありますが。


●プレスアテンプト×プレス割合

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続いて守備のソフト面を確認します。本項のみx軸をパスではなく、プレスアテンプトに設定。プレスの枠組みと傾向を同時に読み取ります。

・FBref.comの定義
プレス➡︎ボールを受け取ったり、運んだり、離したりしている相手プレーヤーに圧力をかけた回数

ご注意頂きたいのは、ここで扱うプレスは”戦術としてのプレッシング”ではありません。ボール奪取同様、ボール保持スタイルのチームは圧をかける機会が少ないのでアテンプトも少なくなります。よってプレス回数が多い=俗に言うプレッシングスタイルという訳ではありません。
とは言え、極端にアテンプトが多いカリアリとサンプドリアはそう表現していいでしょう。

では、アタッキングサードでのプレス割合から。

ナポリとインテルは30%以上の割合です。アテンプトの少なさを加味すると前線でかなり積極的に圧をかけていることが分かります。これらに続くクロトーネは下位でありながら25%以上の値。昇格チームですがかなり勇敢に戦ってそうですね。対して、パルマは驚愕の12.8%。

続いてはロープレス、つまりディフェンシブサードで圧をかけている割合です。

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ハイプレス割合と合わせるとパルマは徹底したリトリートで守ってますね。対してインテルは極端にディフェンシブサードでの圧が少ないです。これをディフェンシブサードの前で攻撃をシャットアウトできていると見るか、うまく徹底できておらず圧がかけられていないと見るか。取り扱い注意ですね。

●パスアテンプト×クリア回数

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最後はクリアに関する項目です。パスアテンプトと掛け合わせることで”押し込まれ度”が読み取れます。
個人的には、もっとパスアテンプトと相関関係が高くなるかな〜と予想していましたが、意外とトレンドラインから外れているチームが目立ちます。

特にボール非保持スタイルは割と志向が分かれている結果に。クロトーネはクリアせずにしっかりビルドアップして押し上げよう!というコンセプトが明瞭そうです。ここで気付いたのですが今年の昇格チームは3チームとも割と自分のスタイルを貫いている印象を受けます。
反対にジェノアはセーフティー。無理せずクリア!が最優先でしょうね。

と、前編はここまで。
後編はピックアップスタッツと散布図を元に各チームの傾向やスタイル、簡単な展望を考察していきます。

●後編アップいたしました


最後までご覧いただきましてありがとうございました🐯


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