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【任侠貫け】CL23-24ノックアウトステージ16 vsアトレティコ予習プレビュー

こんにちは!TORAです🐯

今回はCLノックアウトステージ16 vsアトレティコ・デ・マドリー(以下、アトレティコと記載)戦の予習プレビューです。

我が軍がGS2位突破な時点でババを引くしかないんですが、いやー、それにしてもババなんですよ笑、トーナメント一発目からなんともしんどいお相手です。

そんなしんどいお相手さんの今季を8試合追っかけました。

ⅰ)内、琴線に触れた2試合を簡易レビュー

ⅱ)主な選手について

ⅲ)展望という名の妄想

で記事を進行します。一緒に予習しましょう!妄想しましょう!

※今回は”である口調”で進行します。


●vs ジローナ戦(ラ・リーガ19節)

『結果論はさておき、プラン変更できるのが良い』

ラ・リーガで旋風を巻き起こしているジローナとの一戦。

冒頭はがっぷり四つ。両チームとも挨拶代わりというよりも、本気で早い時間の先制点を重要視している熱気が漂う。

上回ったのはジローナ、嵐のような出力。わずか30秒で決定機を迎えると、2分で先制点を挙げる。デ・ポール(デ・パウル)がプレスに捕まり失点のトリガーになった事実はそれだけでジローナの質の証左に繋がるだろう。

失点後のトピックスは右のポジションチェンジ。右WBリケルメ⇄右IHジョレンテの入れ替えを行った。日常的に見ていないので浅い考察しかできないが、リケルメのプレス回避力とジョレンテの走力をレーン交換した感想。

からのビルドアップはデ・ポールが印象的だった。

アトレティコは左CBエルモソを押し上げる好みの形。デ・ポールは中央寄り、代わりにコケがやや右に傾くファジーなローテーション

エルモソ、コケ、デ・ポールの曖昧さに、出力を落としたジローナは基準点を見失う。特にデ・ポールのキャリーはビルドアップからフィニッシュワークの直接的な橋渡しとなっていた。

ウディネーゼ在籍最終シーズンで(僕たちスクデット時)、プログレッシブなキャリー値とシュート機会創造値がリーグトップでしたが、お変わりなく何よりです。インテル戦では変わっててください。via:FBref

14分、1-1同点弾の起点もデ・ポール。最終出口となったモラタは実にらしい裏抜けとシュート技術で得点に昇華させた。

同点後、盤面はややトーンダウン。

決定的な被チャンスに繋がったわけではなく、やや粗探し的な側面となるが、この時間に気づきがあったのは撤退守備時のエルモソの立ち位置。

PA内にいたい欲が顕著で、リーノ側への絞りが甘いように見えた。「絞りつつもPA幅を意識する」ということなんだろうけど、右と比べるとエルモソ起点でスライドがずれていて流石にやり過ぎでは?という所感。

デ・ポールが最終ラインに入ることで擬似的な絞り設定としているかもだが、この手の補助が上手いタイプではないので、単騎突破できるジローナ左WGサヴィオに空間を与えていたように見えた。

もしかしたら、サヴィオの単騎突破が怖いからこそ、そこはある程度捨てて最後に中で弾き返せばいい!が企図だったかもしれないけど。こういった考察は常に追い続けていないと、(僕としては)どうしても言葉が弱くなります。

さて、ミス由来もあるがその後もスコアは元気に動き、3-2アトレティコビハインドで折り返して後半へ。

ⅰ)基本フォーメーションを4-4-2に変更
ⅱ)左WBリーノに代え、右SBモリ―ナ投入
ⅲ)リケルメが左SHに部署異動(右WB→右IH→左SH)

リケルメは45分で3ポジションをローテ、めちゃくちゃユーティリティじゃん。

3つのテコ入れを行ったアトレティコが立ち上がりは主導権を握る。1点ビハインドで掴んだ明確な流れ。「ここで絶対に得点を取りたいタイミング」であったが、見事やってのけた。モラタ、ハットトリック!

最も期待値が高かったデ・ポールのキャリーからモラタの裏抜けで同点弾。再現性ある攻撃で”イマココ!”の機に決め切る。天晴れが過ぎる、拍手。

その後は一退一進を経て、アトレティコが前線増兵で押し込みモードに。が、全体がガッツリ間延びしてしまい大味な展開になってしまったのはシメオネ監督の誤算だったか。

次の1点が決勝点となる可能性が非常に高い89分という時間に、グリーズマンとモラタを下げ、サウール・ニゲスとアスピリクエタを投入した意図は、3-3のドロー着地という保険の意味合いもあっただろうが、むしろバランスを取ることこそが勝利への一手であった!という側面が強かったと見ている。

しかし、この末に土壇場でネットを揺らして、勝点3を掴んだのはジローナ。ファイヤーからバランスにモードチェンジした結果、むしろ失点を許してしまった。サッカーの面白さと残酷さである。

結果論はさておき、3-5-2と4-4-2のハード面の変更ができるのはインテルにないもので実に羨ましい。また、選手のレーンを変えたり、選手交代で出力のテイストを変えられるのも良き。

似てる似てると声が上がるインテルとアトレティコだが、ここは明確に異なる点

テレビゲームで例えると、今季のインテルはソフトは数多く持っているもののプレステ5でひたすら遊ぶチーム。対するアトレティコはSwitch持っていたり、SteamでFM24も楽しめちゃう。

この差異がどう転ぶかは、特大の見物になりそう。

●vs CLラツィオ戦(グループステージ6節)

『ビルドアップ、ヤバない?』

グループステージ最終節を前に、既に突破を決めたクラブ同士が”1位突破か否か”を決める一戦。勝ち点で劣るラツィオは1位突破のために勝利必須な試合だが、試合はアトレティコがボールも主導権も握る展開がほとんど。

ポゼッション率という切り口では大差ないかもしれないが、球際の強さやそれに伴うセカンドボール回収は圧倒的にアトレティコが上回りラツィオは前進に苦労。

6分にドローでもOKなアトレティコに先制点が生まれるが、これもヒラが頭で跳ね返したボールを回収し、マルシッチの軽い対応を縦突破で抉れたリーノがトリガーとなった。

配置的な観点ではラツィオのスタンダードプレスをアトレティコが確固たる優位性を持って回避できた点が大きい。

ラツィオのスタンダードプレス
✔︎CFはアンカー番、中央CBにプレスをかけるのは好条件時のみ
✔︎WGは相手大外を捕まえる
✔︎左右CBにはIHがジャンプアップで出ていく

WGが左右CBをシンプルに圧をかけるような場合もあるが、オーソドックスはこの形である。

対するアトレティコも可変の鍵となる左CBエルモソを上げ、最終ラインを2枚にするお馴染みのやり方で前進するが、これがとにかく刺さった。

インパクトが強かったのは両大外の使い方

左はWBリーノを大外に鎮座させるが、右は空白にし、デ・ポールやツートップに入らせた。

ラツィオの両SBは前線のアプローチ故に、相手のIHをスキャンしなくてはいけないので非保持に大きく開いたり、初期位置を高めに設定することは少ないが、この一戦は”それにしたって”感があり、いつも以上にコンパクトで低重心。

大外配置の左WBリーノに対して、右SBのマルシッチの基本マークではないものの、カバーすら出て行きづらい環境。

原則マーカーはWGペドロだがリーノが高い位置を取っているので捕まえづらく、また、自身がリーノにつけば対面の左CBエルモソがフリーになってしまう。

そのエルモソは本来であればIHグエンドゥージが基本的に出ていかなければだが、そうするとハーフスペーシを上がれるCBヒメネスをフリーにさせてしまう悪循環。

そもそもラツィオのこの形は最前線3枚の強度が保てなくなってしまったことに起因すると考察しているが、インモービレがアンカー番となり、ヴェシーノが『+1』のフォロータスクを務めるこのリソースづかいは非保持の基準点や原則を高いレベルで共有・体現しないと、他がしわ寄せを受けてしまう度合いが強い。今回はそれがモロに事象化してしまった。

ラツィオ側の瑕疵に話が進んでしまったが、それを浮き彫りにしたのは紛れもなくアトレティコのクオリティが由来となる。

着目すべきは出し手だけでなく受け手

グリーズマンは極上のスパイス。降りてくる&膨らむ頻度と質が高く、フォロータスクのヴェシーノや、無理が効きづらいラツィオ左サイドの処理負荷を強いており、これもまた即効性アリの痺れるボディーブローとなっていた。

アトレティコにとって特別なことはやっていないと思うが、とはいえ「これ嫌でしょ?」と確信犯的に、合理的に殴っていたと言い切れる。ビルドアップ、ヤバない?

HTにグリーズマンとヒメネスを下げ、メンフィス・デパイとソユンクを投入した交代策はこの一戦における両者の差を示していた。そして生まれる追加点。

スコアは2-0だったがラツィオにとってはスコア以上に重い完敗であった。これが一戦目だったらまだ「しょうがない」と擁護できるが、折り返しの二戦目だったことを考えるとサッリ監督の責は大きいし、”普通”の状況で”普通”に上回ったアトレティコの地力が窺える。

●主な選手について(個人の所感です)

GKオブラク
のっけから説明不要の守護神。ビルドアップが不得手とは思わないけど、明らかに関わりが少ないのが気づきであった。スタッツを調べてみたところ、アトレティコのGKパス回数はリーグワースト値であった。
絡めたくないのか、絡める必要がないのか。個人的には”どっちも”だと思っている。

CBヒメネス
負傷離脱してしまいがちで、プレータイムは伸びていないが、万全であれば中央CBの一番手を任せられる人材。特徴を端的に表せば『THE・現代3バックの中央』。
現代DFに求められるトッピング全部乗せ系だけど、しっかり跳ね返せるCBとしての固さが源泉にあるのがイイ。負傷離脱中でしたが、記事公開後のラス・パルマス戦で復帰かな?

CBサヴィッチ
どこかで衰えた説を見たが、全然そんなことないじゃん詐欺。対人戦の強さと堅実なプレーで、安定や保証といったワードを体現し続ける
ビルドアップも同様に堅実だが、逆を言えばプログレッシブなパスのスキルは薄そう。ちょっと元37感ある。

CBヴィツェル
アトレティコで成功しているとは耳にしてたけど「え、こんなに?」。取り上げたCLラツィオ戦ではアンカー起用だったが、CBがメイン部署。セーフティーなパスと縦や斜めに付けて一列上げるパスの使い分けが本当に見事で、配球役として機能しまくっている
空中戦も相変わらずの強さ、35歳にして全盛期なのでは?

CBエルモソ
足元の技術や個人戦術など、全部ひっくるめた”ビルドアップ性能”は私的にアトレティコNo.1。誇張なしでワールドクラスだと思う。大胆なポジション取りやランニングができるプレーセンスもあるのでシモーネインテルにも合うはず。「お金じゃない夢や浪漫」を実現しないか?
一方、守備時の予測や判断はちと怪しく、出足の遅さや、逆に不用意な飛び込みをしちゃうのが気になる。テュラムを当てたい。

SB、WBモリ―ナ
三人称四人称を作るのがうまく、調和力に富むサイドプレーヤーという印象。前進して最終局面に絡める点も◎。
反面、個で運んだり、攻守ともに球際で無理できるタイプではないかな。

CB、SB、WBアスピリクエタ
期待通りの活躍ですね。そろばん叩きやすいの本当に魅力。うちに来て欲しかったなぁちくしょう。現在、長期離脱中でアスピダービー(負けてる)を拝むことはできず。

WB、SHリーノ
右利きの左アタッカーでカットインを武器にシンプルな縦突破も選べる。鮮烈な択を突き付けつつ、正対で相手を押し下げるドリブルがウリ。フットサル上がりとのことですが納得。細かいテクニックをハイスピードの中で繰り出すことができるスキルフルさ堪らん。
という、ゴリゴリのアタッカーなのに「”アトレティコのWB”ができている!」が彼の真なる価値でしょうね。名前だけ聞いてたけど、噂違わぬ選手であった。ください。

WB、IHジョレンテ
どうやら日常的にWBとIH兼務してる選手っぽい。今名前を出すのは少し憚れるけどトナーリを想起しました。モダン万能型ですが、瞬間性と力強さがあり、キワキワで特大の無理ができるのが個人的には最大魅力。
おそらくインテル戦では右WBを務めると思う。対ディマルコではフィジカル的な質的優位を得れることは間違いない。実利益を享受できるかは、ポイントの一つとなりそう。

IH、WBリケルメ
この人も普段から複数ポジションを担当。シンプルなオンザボール技術とレーンの出入りが◎。高次元で出し手にも受け手にもなれるアビリティは圧巻で、1試合平均で最もシュート機会創造をしていた。分かる。だよね。
課題は守備面かな。意外と?ボールの喰い付きが良いのは好印象だけど、”前に出る”ではなくて”釣られる”状態になっているのが散見される。

CHコケ
コケももう32歳ですか。今のタスクはTHEアンカー、試合で最もボール触るマン。ボールの捌き方はチャルハノールっぽく、基本的にどんどん縦や斜めに付けたいし付けれるマン。ダメだったら引き取って、じゃあ違う進路にプッシュアップしますよ!ができるマン。こんな選手でしたっけ?

CH、IHバリオス
今年21歳ですか。僕らのアスラニタン同様、先を見据えた宝物。コケの控えかと思ったら、コケと同じピッチにIHとして立つことも。ボールを扱う技術がバチくそ上手くて、ワンタッチツータッチで叩くよりも一旦持ちたいタイプに見える。ターンする、ちょっとキャリーする、そこから捌きたい。こちらはブロゾヴィッチっぽい。

IHデ・ポール
相っ変わらず自分起点できる選手。とにかくキャリーが鬼、ホント鬼。が、そこからマークや意識を吸引し、浮いた選手に決定的なパスを送ることが真骨頂と見る。
単騎でバグを起こせるだけに、インテルのオーガナイズドなブロック守備が上回り続けることができるか否かは注目。

IHサウール・ニゲス
馬力溢れるIHで、上下動はその馬力に機械のような精密性も兼ね備える。降りるグリーズマンとの入れ替わりや、コケのビルドフォローやネガトラフォローなど、縦のレーン目線で「そこ居るよね〜」を当然の光景にする選手。
特にグリーズマンかな、彼を追い越してFW化する質が好印象。相互補完が抜群。ボールを持って自分で発信するタイプではない。ガリオ…()

CFモラタ
夏に様々な噂が飛び交いましたが、残って良かったですね。ラインブレイク・シュート技術・PA内での明鏡止水っぷりの三項目は、今現在で世界のトップオブトップスを争う超高品質(後者2項目はラウティもだけど)。
詳細は長くなるので割愛しますが、インテルのおじCBたちって意外と?このタイプ得意じゃないと思っているので、正直めちゃくちゃ怖い。やられる時はあっさりラインブレイクで塩味被弾しそう。

CFコレア
24節時点でリーグ681分の出場。うちのアルニーやスギちゃんよりは出てますが、スタメンの牙城は厚いですね。冬に移籍かなと思いましたが残留。以前よりもプレーの幅が広がった感想を持ったが、やれることが多い故に「これで勝負するぜ!」を相手にも味方にも突きつけられない点がもどかしい。
どんな選手ですか?と問われたら一言で答えにくい選手になってしまっているのが今のコレアだと思っている。

CFメンフィス(デパイ)
出場時間的には4番手だが、負傷の影響が大きい。私的にははっきり3番目の人。2~3つ、年齢を重ねるごとにプレースタイルが変わっている気がする笑。バルサ時代はラインブレイカー色を強めて「元々WGですよねアナタ?w」って感じだったけど、今現在はライン間プレーの恐怖を見せつつ、裏抜けもできるよ!という垂直の2択をプレゼンできるのが琴線に触れた。
運動量や強度は明らかに低い。ボールタッチ数も最前線ゴーラー特化のモラタ、リーグワースト数字のオブラクに続く少なさである。しかし、狭域で仕事ができるし、脚を振れば何かが起きるパルプンテ力も素敵。インテル目線だと、選手としてのタイプは異なれど、アルナウトヴィッチにこうなって欲しいんだよなぁと羨む。パルプンテとかじゃなくて「静的だからこそ預けられるよね」という意味で。

CFグリーズマン
クラブレコードとなるアトレティコ174G(以上)おめでとう。タレントは間違いなくNo.1。それだけ。あとは野暮。

CBガブリエル・パウリスタ/IHフェルマーレン
冬加入組。ちょっとまだ分からない。パウリスタはスタッツ傾向が似ている選手にイスマイリ(エンポリ)、エルリッチ(サッスオーロ)の名前が挙がる。保持は静的で、対人性能に強みアリ?

●レビューまとめ+補足

ここまで試合中のメモをほぼそのまま使っているので、まとめてみる+レビューで取り上げなかったポイントを補足。

・ボール保持

細かいビルドアップもフィード一発構成もハイクオリティ。再現性ある仕込みはインテルよりも数が上と認めざるを得ない。特にビルドアップの細かさは近年からの変化という意味でシンボリック。スタッツにも現れている。

・アトレティコのパススタッツ(リーグのみ、24節時点)
パス総回数:リーグ4位
ロングパス数:リーグワースト3位
ロングパスの割合が少ない

FBrefを参照

ポジショナルな肝は、CFグリーズマンとCBエルモソ

グリーズマンは誰がどこまで付いていくのか、どう引き渡すのかという側面以外にも「そもそもどう付くのが?」の設定も非常に重要。

密着や複数マークをワンプレーで無効化する極上の技術を有しているのは言わずもがな。パヴァ―ルだろうがアチェルビだろうが誰だろうが、180分、最適解を見つけ続けるのは不可能に近いので、納得解の模索と継続が鍵だろう。

後者のエルモソタスクはインテルとアトレティコのメイン設計の差異

アンカーが落ちるか、否か。

もちろんコケが最終ラインに降りるシーンもあるし、チャルハノールが中盤底のままの場合もあるが基調となるのはコレ。ただし、インテルは「それがチャルハノールである必要がない」という側面が強い。今季の顔であるバレッラの最終ライン落ちによる『第二の心臓』タスクはその象徴。

再現性が薄いのは間違いなくインテルだが、その薄さこそが今季の武器であることはシーズン冒頭から繰り返し主張している。一方で、柔軟性がありながらも雛形が強固で根拠あるアタックができるのがアトレティコである。

このベースに選手起用やポジション変更でプラン修正できるのも強み。

特にIHは組み合わせが柔軟で「この選手は外せない!」が存在しない(強いて言えばデ・ポール)。サブも実力者とはいえ、スタメンが絶対的なインテルとは対極である。

・ボール非保持

この局面はインテルと通ずる点が多い。

ハイプレス型ではなく、ミドルサードで一旦セットするが基本軸。からの撤退守備は欧州屈指の固さだろう。もちろんハイプレスができない訳ではないが、生業とするチームとはトリガーの設定が明確に異なる。

ちなみに少し前に扱ったプレスデータにアトレティコを落とし込むと下図になります。リーグが異なるので単純比較はナンセンスだけど、参考エンタメとして。

ミドルセットからのゾーンディフェンスやミドルプレスもインテル同様に「外でボールを持たせたい」。尚、中央レーンを許さないのは守備の基本であるが、カルチョ界隈は顕著だと思っている。その観点でシメオネ監督はイタリアの水に合いそう。年俸以外は。

必然、相手は5-3の”3の横”でボールを持てるが、「持てるではなく、持たせる」にできるスライドの質と、仮に「相手が持てている」状態でも流暢な5-4ブロック移行で、リスクマネジメント可能な点が良き。後者の5-4ブロックの組織化はインテルよりも優れている評価。

一方でインテルが勝っているかな?と思うのはスライドとミドルプレスの高次元共存

押し込まれていてもねっとり耐えて、相手のやり直しのパスに対して、ここぞ!でミドルプレスに出れる強度と練度は守備の陣地回復となっている。アトレティコは全く悪くなく、むしろこの点も堅牢を支える因子の一つだが、インテルに比べると、という感じ。

・トランジション

記載するまでもないがポジティブトランジションのカウンターは凶悪。

しかし、厚みに関して明確にインテルに分があると言っちゃう。重複な表現だが、アトレティコも勿論GOODだけど相対的に。というか、手前味噌だが”今この瞬間”は欧州でもトップを争えるレベルにあるかなと。

ただ、アトレティコは効率性が特大。グリーズマンを筆頭に、モラタやメンフィスが絡むカウンターは小リソースでも仕留められる殺傷力がある。クリスクロス(カウンターに対するカウンター)が起こった際に、厚みを出したが故に裏目に…なんてことは十分にあり得そう。

まぁ、ポジトラの怖さは分かりきっていることなので最早どうでもよくて。触れたいのはネガティブトランジションであるが、次項で取り上げるトピックスと絡み合うので、本項ではスキップ。

その他、ネガトラで言えることは即時奪回の厚みもインテルに瞬間火力があるかな?ここでもゴチャついてデ・ポールやグリーズマンに持ち出された…なんてことは避けたいけれども。

とはいえ、インテルには、ここでリスクを負わずして彼らを仕留められるか?という葛藤と決断力は常に持っていてほしいところ。「いつもより慎重に、でもいつも通りダイナミックに」が求められる。CLだ。ノックアウトステージだ。

●展望と妄想(後者多し)

結論から言えば、この試合は「差異があるからこそ、塩試合になりそう」

長くなるので割愛するが、私的に<以前の勝手なイメージのアトレティコvs今季のインテル>は塩試合にならないんじゃない?と考えていた。

が、予習をしてみて、”勝手なイメージが修正”。結果、多方面から予想されている通り「塩試合になりそう」と思うように。

”勝手なイメージが修正”を少し掘ってみる

アトレティコをずっと追っているわけでは盛大な認識違いをしているかもしれない!を大前提に書きます。

ラ・リーガを最後に制した20-21シーズンは堅守速攻。組織的だが人に対してハードに守り、そこから効率的かつ効果的な速攻で仕留めるサッカーが基盤だったと思う。

・優勝時の主なスタッツ
得点数:67(リーグ2位タイ)
失点数:25(リーグ1位)
シュート数:452(リーグ4位)
総パス数:20680(リーグ5位)
タックル+インターセプト:1008(リーグ4位)
→守備の時間が少ない上位陣では非常に多い

FBrefを参照

現在は「効率的、効果的」といったワードが根幹であると見ているものの、ボールを握って、ポジショナルに動き、相手を動かし、押し込める展開でそのままネットを揺らす着地の再現性は明確な変化。全方位型とはまだ言えないかもしれないが(そして目指していないかもしれないが)、局面対応力は間違いなく幅を得た感想。

一方で角が丸まった印象も。特に思うのは締め方で、オープン局面をクローズドに締めるあの嫌らしさや憎らしさが薄まったのは否めないと考える。平たく言えば、カウンタープレスに失敗した際やロングカウンター時、盤面がぐるんとひっくり返った時に無理が効きづらくなってしまった。

特に最終ラインは背後の広大なスペースを個で管理できる機動性や強度を有しているのは離脱中のヒメネスくらいか。故にオープンな展開になると間伸びしてしまい、リターンよりもリスクに天秤が傾くことが。

ジローナ戦でファイヤーに舵を切ったのにバランスに戻した選択は他ならぬシメオネ監督がその認識を強く持っていたからだと睨んでいる。

…と、マジのマジでここまで下書きしていた段階で誤算が発生しました。

CBレイニウド
靭帯断裂から約1年越しの復帰だったが、早々に負傷を感じさせないパフォーマンス。一人だけ1.5倍の早送りをされているかのような動き、その速度持ってして単独リカバリー、単独解決できるのエグ過ぎっす。
コパデルレイでPK献上をやらかしてしまったように、プレーが荒くなってしまう場合があるっぽいが、個人の存在がチーム課題のソリューションになり得る存在

彼がいるとなるとさらに戦い方の幅が広がるアトレティコ。しかし新たな誤算も。

モラタ負傷

このくだりを執筆している2/13時点では2~3週間の離脱が情報としては固く、1st leg出場は無理ですが、2ndは出場できる雰囲気。インテル側もCBアチェルビが1stはお休みほぼ確なのでどっこいどっこいですかね。

しかし、これでアトレティコの戦い方はより想定しやすくなります。

1st leg.の彼らは基本的に構えてくるでしょう。

大方の予想と思いますが、この一戦における両者はボールを譲っても全然OK!なんなら譲りたいかも!がスタンスなはず。

ⅰ)ボールを持てるが、ポゼッションなチームではない

ⅱ)ハイプレス型ではなく、両チームともミドルセットや撤退守備のクオリティはお墨付き

ⅲ)カウンターにそれぞれ厚みと鋭さの威力アリ

ⅳ)被カウンターで3CBが背後の広大なスペース管理できるかの懸念

この性質を持った実力伯仲の3-5-2同士が戦って、どちらかが一方的にオラオラし続けるのは想像が難しい。持つ方はカウンターのリスクがあるし、持つ方もカウンターを発動したいので。

逆に想像が容易なのは「それでもボールを持たなければならないのはインテル」

2nd leg.の舞台がメトロポリターノであること。それだけでボールを譲りたいけど、持たなくてはならない、の矛盾は成立する

より詳細に表現すれば、両チームとも所謂『ポゼッション率』はどうでもいいチームなので、ボールを持つというよりは自分たち流のアタック回数を増やす、か。

ここで取り上げたいトピックスがある。

インテルは撤退守備攻略が得手or不得手?

各所で目にする耳にするんですよね。この話題。様々な意見を学ばせて頂いた上で、僕の答えは卑怯。「どちらの意見も頷ける」。

愚見では得手、不得手ではなく、レパートリーという切り口にすべきかなと考える。

インテルの閂の開け方は、カリアリに次ぐリーグ2位の試行回数のクロスが本命であることに疑いようはない。そこをフックにポケット強襲を仕掛けるのが対抗馬。ユヴェントス戦のOG誘発シーンは対岸のWBとの交差でカオスを起こした。

大穴の存在もいくつかある中で、取り上げたいのはダルミアン

右CBとして代えが効かなくなった後、インテルとしての主戦場である右WBとしても特有の地位を確立。加入時よりも機能していると断言できる。

何が良いって、(以前より)「使えるようになった」こと。

ポケット強襲に合わせた斜めのパス、平行に出して中央の選手に前を向かせるパスの質、特に後者はディマルコやバストーニすら凌駕する評価をしていて、中央レーンで崩すための貴重な種となっている。

個で縦に抉れず、これまではボールを持っても”その次で使われるため”のパスが多かったが、自己発信できることになったことにより、得意のオーガナイズドなオフザボールがさらに活きる結果にも。

と、”点”に対しての言及で褒めちぎりましたが、”面”で見た際に手段の乏しさは否めず。これが「撤退守備攻略が不得手」派の源泉だと考える。

特に思うはポケット間ワークが少ないこと。撤退時のソリッドなライン間でバグを起こせる選手やプレーが不足している点は泣き所。サンチェスという解決策はあるけれども。

翻って、「攻略が得意」派は”点”の火力が論拠なのだと思っている。

メインウェポンだとバレバレのクロスは、リーグ2位となる歩留まり(=クロスの総数に対して、中の味方に通る割合)の高さ。

そして、これまたバレバレのメイン砲台ディマルコのアシスト期待値はリーグトップである。via:FBref

公開直前にこんなデータも見つけた。

クロスという任侠道を貫け

強烈な表があるからこそ、裏が活きる。これが今のネラッズーリだ。

復習だが、アトレティコの5-3ブロックは相対的に”3の横”でボールを持ちやすい。つまり、クロスを放りやすい環境と言える。事実、アトレティコの『被クロス数』は24節時点でリーグ5位と上位に位置。

無論、被クロスが多いからと言って、それが失点に繋がっていたり、苦手としているかは別の話である。そもそも"3の横”は浅いレンジなので、そこから無闇に放り込んだとて期待値は低い

しかし、ディマルコとバストーニというW発射台は脈絡なく0を1にする理不尽な精度を有するので”場面そのもの”の期待値が低かろうが、試行されること自体が嫌だろう。それを囮に、陣形を乱して対抗馬や大穴の手段で強襲したい。

最後に、前項で言及した「アトレティコのネガティブトランジションで触れたいこと」を記す。

リーガを制した頃よりもクローズドに締められなくなった。

3CB背後の広大なスペース管理に懸念。

と、しておいて矛盾するようだが、アトレティコのネガティブトランジション管理には賞賛を送りたい。インテルとの優劣は難しいが、少なくても”安全”なのは彼らに軍配が上がる。

理由は至極単純、保持の配置が良いから。彼らの再現性は、つまりネガティブトランジションのセキュリティも意味する。レイニウドという保険に加入できる点も大きい。

今季インテルは、今風に表現すればリレーショニズムがグッと増しており、即興的でカオティックなコンビネーションプレーが自慢であることは前項で紹介した記事の通り。

しかし、発動したシチュエーションで裏返りが起きてしまうと配置に歪みを抱えた状態でカウンターを浴びてしまう。ローマ戦前半の逆転弾はまさにその形、あまりに被会心の一撃過ぎた(改めてだけど、よく気落ちないで逆転したよ)。

一連で何が言いたいかというと、「ボールを持つ展開において、カウンターでクリティカられる可能性が低いのはアトレティコだ」ということ。

だからこそ、インテルは1st leg.でアタックしなければならない。

ドローという状況で2ndを迎えることは、メトロポリターノの後押しというバフを除いても、不利なのだ。

ボールを譲りたいが、持たなくてはいけない。

ならば、任侠貫け。

いつもより慎重に、でもいつも通りダイナミックに。CLだ。ノックアウトステージだ。

最後までご覧いただきましてありがとうございました🐯

超がんばれインテル⚫️🔵

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