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【ヴェシーノとガリアを追っかけてみた】セリエA20−21第35節インテル-サンプドリア レビュー

こんにちは!TORAです🐯

さて、前回のレビューは以下のように締めました。

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キャプチャ

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結果、34節のサッスオーロ-アタランタはドロー。

4試合を残して見事!

インテルが11年ぶり19回目のスクデットを獲得しました!

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僕も号泣レベルの嬉し泣き。

今なお勝利の美酒に酔いしれていますが、一方でレビュワーとしては困ったことになりました。

残り4試合のレビュー。
通常運転で果たしてどれだけの需要があるのか、僕には疑問です。

ピッチでなにが起きているのか。

なにができて、なにができなかったのか。

解釈と考察にトライするのがレビューだと認識していますが、今さら必要でしょうか。

我々はもう優勝していますからね!!!

「今まで出場機会が少なかった選手の起用を積極的に行う」とコンテ監督も仄めかしてますから、一過性の側面も強い。レビューの難度も上がります。

我々はもう優勝していますからね!!!

はい、すみません。非常に浮かれてるわけですが、真面目な話、どうしてもレビューのフック力は失われると考えます。

もう今シーズンはおわりでいいかな、とも思ったのですが、実は今季ここまでリーグ戦のレビューは皆勤賞なので最後まで走り切りたい!

ということで、残り試合のレビューはいつもとちょっと視点を変えたいと思います(ユヴェントスとのイタリアダービーだけ通常運転するかも)。

今回はヴェシーノとガリアルディーニ。2人のIHに注目してみました。

●選手起用

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・インテル選手交代
46分ハンダノヴィッチ▶︎ラドゥ
55分サンチェス▶︎ピナモンティ
55分エリクセン▶︎ブロゾヴィッチ
61分ガリアルディーニ▶︎バレッラ
73分ラウタロ▶︎センシ
・サンプドリア選手交代
46分ヤンクト▶︎ダムスゴー
46分トルスビー▶︎エクダル
46分トネッリ▶︎吉田
46分ラミレス▶︎ヴェッレ
73分バルデ▶︎クアリアレッラ

●ヴェシーノはどうだったか

結論、めちゃくちゃ良かったです。

正直に白状すると本節のスカッドを見たときに

「戦術や中身云々は求めない、1.5軍と呼ばざるを得ないスカッドでどれだけいつもの質を保証できるか」

という考えが頭を支配していたのですが、僕の大馬鹿野郎。丁重にお詫び申し上げます。

ベストメンバーでなくても、出場機会に恵まれない選手たちが多く名を連ねても、彼らはインテルでした。スクデットを獲得したチームでした。

むしろ、選手を変えたことでの+αすら感じた。

話を戻します。

ヴェシーノのタスクは”右のエリクセン”

アンカーのビルドアップを低めの位置、横に近い関係でサポートしつつ、崩しのスイッチも担うようなお仕事でした。

「いやー、ヴェシーノはエリクセンにはなれないでしょー」

とジャッジする間もなく、彼は仕事をやってのけます。

先制点の中継点、2点目のアウトサイドキックでのプログレッシブ(縦方向)なパスは間違いなくフィニッシュのトリガーでした。

しかし、僕が彼を評価したいポイントは得点に繋がったプレーではありません

コンテ監督がIHに最も求めているであろう、局所に優位を生み出し、主導権を手中に収める為のポジショナルなプレーです。

再現性、安定性の面では積極的に上がるダンブロジオの担保となるムーブを取り上げたいです。

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✔︎攻撃参加が積極的なダンブロジオ。
✔︎ハキミは連動してレーンを変更、ダンブロジオにスペースを与える。
(あえてレーン被りをする場合も)
✔︎リスク管理とビルドアップを担保するヴェシーノ。

動的なポジションチェンジで意外性を生み出す、教科書通りの動き、連動性ですが歪みがなかった。

何度かレビューで言及しましたがシーズン序盤は教科書通りの動きすら、質や再現性に乏しかったですから。

それを考慮するとスタメンクラスの選手だけでなく、今季初スタメンのヴェシーノがそれをやってのけることにチームの熟成を感じます。

もちろんこの動きだけでなく、時には高めの位置でツートップと絡んだり、時には膨らんで大外の起点になったり、とインテルのIHらしいフレキシブルな動きで戦術理解度の深さを証しました。

個人的な琴線に触れたのは9:20~のシーン。思わず「おぉ!」と声を挙げてしまいました。

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✔ピッチ中央からダンブロジオにパスを落とすヴェシーノ。
✔ボール引き出しに降りるハキミ。アウジェッロが釣られる。
✔空いたスペースに上がるヴェシーノ。
✔それを見たサンチェスがヴェシーノの位置に落ちる。

ハキミからサンチェスへのパスがズレたことでブレーキがかかってしまい、なんてことないシーンに終わりましたが(というか、ヴェシーノはハキミから直接縦に欲しかったはず)、上述の”+α”が感じられるシーンでした。

良かった点は2つ。

ⅰ)降りるハキミと上がるヴェシーノのムーブがほぼシンクロ。

ⅱ)それを見たサンチェスが降りることでヴェシーノのポジションを埋めるだけでなく、コリーを引っ張ってさらなるスペースをヴェシーノに提供する狙いが生まれた。

ⅰに関してはシンプルに練度が見てとれる。

ⅱに関してはルカク不在時の別オプションを期待できる。

ルカクのポストプレーとサンチェスのボール引き出し、マーカーを最終ラインから剥がすムーブは、同じ”降りる動き”でも似て非なるもの。

仮にルカクが出場していたならこの一連の流れは生まれなかったと思います。

いつもとは異なる化学反応

個人的にはルカクの控えは単なる人材じゃなくて、こういったルカク出場時とは異なる連鎖に求めたいです。

攻撃面のみ触れてきましたが、守備面も及第点以上でしょう。

特にインテルお得意の低め重心な組織的守備。

オーガナイズドに振舞いつつも、ここぞで前に出てハードに相手を捕まえる判断力と献身性はバレッラ味を感じました。

守備面ではバレッラタスクだったんでしょうか。中盤面子ではヴェシーノが明らかに人に対してタイトでしたね。

●ヴェシーノのスタッツ

スタッツも覗いてみましょう。

同じ中盤スターティングのエリクセンとガリアルディーニをはじめ、選手交代をフルに使ったので単純評価はできませんが、ヴェシーノは両チームトップの走行距離でした。

キャプチャ

セリエA公式HPより引用。

着目すべきは走行距離そのものではありません。

その内訳を見て下さい

ヴェシーノは両チームトップの走行距離でありながら、内、1.334kmをスプリントしています。これはチーム上位5選手の中でトップ。

つまり「量も多いし、中身も濃い」ということです。

前項で守備面の尺が淡泊だったと思うのでここで補うと、タックル勝利、インターセプト(中継地点、受け手付近でカット)、パスブロック(出し手をカット)、プレス成功。
これら「ボールを奪回した、相手プレーを阻害した」プレースタッツの累計値はハキミと並びチームトップタイです。

・ボール奪回、相手プレーを阻害した回数
1位ヴェシーノ、ハキミ:11回
2位ラウタロ、ヤング:10回
3位サンチェス:9回
FBrefを参照。

分かりやすいスタッツを集めただけで、これがそのまま守備貢献や評価に繋がるわけではありません。

とは言っても、彼らが、ヴェシーノがボールに対してアタックした成果ですので、評価に値する指標のひとつにはなると断じます。

●ガリアルディーニはどうだったか

結論、めちゃくちゃ良かったです。

パフォーマンスにケチをつけるわけではありませんが、ガリアルディーニに関しては持ち味を発揮しやすい環境下だった点が大きかったですね。

セリエAナンバーワンのプレッシング試行を誇るサンプドリア相手にインテルは丁寧なビルドアップで掻い潜るのではなく、いつも以上のバーティカルなアタックを志向していました。

・セリエAのプレス試行数 上位3チーム(1試合平均)
1位:サンプドリア 161.9回
2位:ミラン 152.1回
3位:ジェノア 151.0回
*プレスの多い少ないが”良い悪い”ではないです。
FBrefを参照。

その上、サンプドリアのプレス設計上、ガリアルディーニを捕まえにくかった。
個人的にサンプドリアの最大敗因はここ。通常運転レビューなら話の核にしています。

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✔基本的には同数プレスを仕掛けたいサンプドリア。
✔しかし、タイトで強度のある左に対し、右SHカンドレーヴァはやや緩慢。
✔これを運動量豊富なトルスビーがカバーする為、ハイプレス時は高い位置まで上がる。
✔ガリアルディーニが攻め上がれば距離のギャップが生まれる。

ヴェシーノが保持時に”右のエリクセン”タスクであったと同じように、ガリアルディーニは”左のバレッラ”タスクでした(厳密に言えばちがうけど、便宜上、非常に分かりやすいのであえて用います)。

エリクセンと横関係でプレーするヴェシーノに対し、ガリアルディーニは明確に一列前でのプレーが目立ちますが、これがサンプドリアのプレス設計とガッチリ噛み合いました。

前半立ち上がりはこの噛み合わせがサンプドリア側のもので、差し込むようなハイプレスにインテルは苦しみますが徐々に適応すると、2点目で制圧の旗を掲げました(後半に見事、対応してきたけど)。

ハンダノヴィッチからのリスタート。いつもの左右対称で中盤にL字を描くインテルにトルスビーは曖昧な立ち位置を取ってしまいました。

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結果、縦パス一本でガリアルディーニに最も危険な中央でのドリブルを許してしまう。噛み合わせの悪さ由来で疑似的なカウンターが発生しました。

このシーンではガリアルディーニがボールプレーヤーとして活躍しましたが、僕が評価したいのは彼らしいプレーを存分に発揮できた点

使われる才能

先制点は言わずもがな、ラウタロとの関係性の良さもピックしたい。特にラウタロが降りて、それを追い越す動きは質の高い再現性でした。

これぞ、ガリアルディーニ!って感じでしたね。前半は最もプレゼンスを発揮したし、最も自分らしさをピッチに置いてこれたのではないでしょうか。

唯一苦言を呈するなら、後半危険なシーンになり得る裏返しでプレスバックを怠った点。覚えているだけで2回あります。

横にいた35歳(今年36歳)ヤング先生なんかフルスプリントでガリアルディーニを追い越して自陣に戻っていたので余計目立ちましたね。
まぁ、マーカーの問題もあるし、ちょっと痛がってるっぽい仕草もあったからこれはスルーでいいや。

●ガリアルディーニのスタッツ

ガリアルディーニと言えば以前のデータ考察記事で「スタッツで測りにくい選手」と評しているのですが、今回も絶妙に扱いづらい結果です笑

例えば、上述で挙げたボール奪回、相手プレーを阻害した回数で例えると…

・ボール奪回、相手プレーを阻害した回数
ガリアルディーニ(60分出場):3回
バレッラ(30分出場):6回
FBrefを参照。

こうなります笑

ヴェシーノと対になるように、配置最優先で守ってましたからこういった分かりやすいスタッツに現れにくいんでしょうね。

その他のスタッツもサッと取り上げられるようなものがなかったので、すみません、白旗上げて次に進みます笑

●雑感-実はよく練られたスカッドだった?

本節のスカッドは、ターンオーバーというか出場機会の少ない選手に出番を与えることが大前提。

ですが、蓋を開けてみたら、実はよく練られたスカッドだなと感じました。

キーになったのは今回フォーカスしたIH、ヴェシーノとガリアルディーニと考察します。

プレス試行のサンプドリア相手にあえて、ボールプレーヤーではない彼らを据えた理由は、いつも以上の縦志向とツートップとの化学反応を見据えてのことでしょう。

要はハイプレスを突破するのではなく、ヒラリと躱すことを試みた、ということ。

となると、攻め上がりに定評のあるダンブロジオというオプションや今季は出場した全ての試合で抜群の予防的カバーリング/マーキングを見せるラノッキアの起用も不思議と紐づいてくるから不思議です。

コンテ監督を過大評価し過ぎで、さすがに恣意的な評価ですかね笑

閑話休題。

ここまで上げといてなんですが、今回フォーカスしたヴェシーノとガリアルディーニは1試合、しかも上手くハマった試合での評価。
「バレッラの代わりになれる!」とは当然言えません。

そのバレッラも途中出場でフレッシュな状態を差し引いてもやっぱり違いを見せつけましたね。

短いセンテンスで表すなら「大活躍だったヴェシーノに推進力を上乗せしたパフォーマンス」。しかもいつもと主戦場(サイド)が異なる。さらにはピナモンティへのアシストがスーパー過ぎた、としっかり爪痕を残しました。

チームの雰囲気は最高ですが、この辺はうまくしのぎを削ってお互いを高めて来季に繋げて欲しいですね!

FORZA INTER!!⚫️🔵

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