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なんで「なんで?」はダメなのか

Engineering Manager Advent Calendar 2022の12日目は、かなりの時間を若手メンバーの育成に捧げてきたさわちん@inteltankがお送りします。

皆さんはどんなチームで働いていますか?私はメンバーがほとんど20代のやる気溢れる若いチームで動いていました。

心理的安全性に、内発的動機付け。メンバーの主体性を生むためにはマネージャーの関わり方が大変重要。特に「何を」「どう」伝えるかはどなたも悩んだことがあると思います。

「どう伝えるか」…難しくないですか?何を伝えるかは科学されています。本がたくさんあるし、仕事ができる人に相談すればいいと思う。でも「どう伝えるとポジティブに作用するか」に関してはあまり知見がないように思います。

今日は「なんで?と聞くのは避けたほうがいいよ」という話をさせてください。ビジネス頻出単語をテーマにしたケーススタディで、私が考える「伝え方の工夫」をお伝えします。

「なんで?」は悪手です。

「なんで」と聞いたシーンを思い出してください

・ウェブサイトのデザイン、なんでこうしたの?
・なんでこの企画を良いと思ったの?
・目標が達成できていないのはなんで?

よくあるシーンだと思います。想定外のアウトプットが来たから理由を知りたい。改善したいから理由をしりたい。考える力をつけてほしいから言語化させたい。「なんで?」はとても便利なワードです。

けど、大抵失敗します。
・相手が萎縮してしまって、理由がうまく出てこない
・まとまりなく延々と話され、的を得ない。言い訳っぽい。
・怖いと思われて、次回アウトプットを持ってこなくなった。

理由を聞くとメンバーの動きがどんどん悪くなる。やる気を大事にしようと「なんで?」を聞かないと、いつまでも品質が上がらない。経験した方は多いんじゃないでしょうか。

これは理由を聞くのがよくないのではないんです。

賛同している人は「なんで?」と聞かない

今度は「なんで?」と聞かれたシーンを思い出してみてください。

・幼少期に親に言われた「なんでほしいの?」
・学校で先生に言われた「なんで宿題終わってないの?」
・就職活動で聞かれた「なんでその活動をしていたのですか?」

反対されるとき、怒られるとき、何かを判断されるとき、私たちは「なんで?」と質問されてきました。そして、これらのシーンで有効なのは本当の理由ではなく、相手が納得する理由でした。

良い意見だな、私と同じ意見だな、と思ったら理由は気にならないはず。「なんで?」と聞かれた時点で、人は瞬時に「自分の意見は受け入れられなかったんだ」と感じているのです。

人は、言葉を「辞書通りの意味」で受け取らない

赤ちゃんは辞書を読めません。親は言葉の意味を一つずつ教えません。それでも子供は言葉を喋るようになります。

人は経験から学ぶのです。その言葉が何度も使われる中で「こういうシーンで使われる言葉なんだな」と体感し、その言葉を喋ったときの周囲の反応を通して、言葉を覚えていきます。

辞書の定義はあくまで「こんな意味で使われることが多いです」という一般論でしかないのです。

だから、伝え方を大事にしましょう。「なんで」を使えば否定されたように感じさせます。二人称で「あなた」を使うと距離を感じさせます。「もういいよ」は、十分だよありがとうの意味ではなく、諦めの意味でも伝わっているはずです。

誰にとっても棘がない伝え方をしよう

「別に俺はこのままでいい」という人はいます。本当にそうでしょうか?

人は環境適応能力が高い生き物です。気になる表現も慣れてしまえば気になりません。しばらく経てば「あの人は伝え方が下手だから…」「あれはあの人のキャラだから」となりがち。確かにメンバーが変わらなかったり、普段から頻繁に接する相手なら問題ありません。

でも、新メンバーやたまに接する相手は慣れていません。特に「なんで?」は違う考えを持つ人、普段接しない人にこそ使いたくなるワード。あなたは歓迎しているつもりでも、相手はそう感じていないかも知れません。

だから、「棘がない言い回し」をぜひ身につけましょう。一度習得してしまえば一生物のスキルになります。

理由を聞くのではなく、状況を把握しにいこう

「なんで?」の代わりにどう問い掛ければよいのか?私は状況によって使い分けます。

もちろん「なんで?」と聞きません。相手が若手や初心者の場合、そもそも「理由を説明させる」のを避けます。問いかけを通して状況を把握しにいきます。

ベテランであれば理由を言葉にするのは容易でしょう。いろんなアウトプットを見てきた中で「どんなところでアウトプットの品質が変わるか」を知っています。事例をたくさん知っているから「今回はA,B,Cの中でAを選んだ」と言葉にできます。

でも、若手はできません。経験が少ないので「どのポイントが今回のアウトプットの品質に影響するのか」をわかっていません。「もしかしたら**の部分がダメだったのかもしれない」と上手に言語化することは難しいのです。

以下の記事では「レビュー前に工夫すること」を紹介したので、この記事では「レビュー中にやること」を紹介します。

1. 「どんなきっかけだったの?」と問いかける

「急な提案/相談が来たとき」によく使う問いかけです。

提案や相談があるとき、理由を聞いても要領を得ないことがよくあります。「こちらが納得できそうな理由」が言葉として出てくるけど、なんかしっくりこない。聞けば聞くほど論理構成の拙さが気になって揚げ足を取りたくなってきます。「それだったらAじゃなくてBのやり方じゃダメなの?」と言ってしまって何度若手の気持ちを踏みにじったかわかりません。

メンティは「いいよ」と言ってほしくて提案を持ってきます。「わかるよ」と言ってほしくて相談を持ってきます。そのために理論武装をしています。しかし「自分の気持ちを満たしつつ、他者にも認めてもらえる案」を作るのは非常に難しいので、ツッコミどころが満載です。

だから「きっかけの出来事」を聞きます。出来事を一つ聞くだけで、本人が考えていることがわかり、どうしてこの提案の形になったのかが想像がつき、論理構成が気にならなくなります。

また最初の提案には含まれていない「本人の気持ち」も推測がつくようになるので、適切な代案を出すといった、本人の気持ちに寄り添ったサポートをしやすくなります。

同じような効能の問いかけとして「どうしたの?(珍しいじゃん)」もよく使います。

2. 時間がかかっても時系列で話してもらう

こちらは「想定と違ったアウトプットが出てきたとき」によくやります。

日本人は「提案をして、理由を話す」が苦手です。日本教育…特に義務教育の世界では必要がなくて訓練してきていないから。一方で、時系列で話すのはみんなできます。普段から友達や家族との会話でよくやっています。

だから時系列で話してもらって状況を把握しましょう。自分が状況を認識できているところまで遡ってそこから話してもらいます。私は「前回の会議から今までどう考えてどう進めてきたか」を話してもらうようにしています。

時間が開きすぎると状況把握が難しくなるので、こまめに話をしておくようにします。後輩には必ず下の資料を渡して「細かく連絡してね!」と伝えるようにしています。

【まとめ】相手によって伝わり方は違う。普段から「伝え方」も振り返ろう

ここまでで伝えてきたのはこんなことでした。
・あなたが上の立場なら、「なんで?」は避けよう
・言葉選び1つで印象が大きく変わる。だ「良い表現」を普段から学ぼう
・理由を言語化できない人に、言語化を求めるのはよくない
・「どんなきっかけだったの?」は万能

でも一番伝えたかったのは「伝え方ひとつでチームの雰囲気が大きく変わる。だから、伝え方も振り返ろう」ということです。

私も昔からこういう「なんで?がダメ」のようなことをわかっていたわけではありません。後輩に「なんで?」を連発した結果、メンタルを病ませてしまった経験から学びました。

言い回しの良し悪しは言われた人に教えてもらわないとわからないので、気になる方は是非、普段の振り返りの項目に入れてみてください。

今回でいう「伝え方」のようなHow1つでみんなが幸せになればいいなと思ってチーム作りの支援や個人の振り返り支援もやっています。興味あればお気軽にtwitterまでご連絡ください

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