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中国で”人民監視員”100万人体制へ~都市部での住民反乱を「密告制度」で抑止へ


【画像① 党長老たちの強い反対を押し切って異例の第三期目”トップ”の座を中国共産党第20回全国代表大会で獲得した習近平氏は、折からの新型コロナウイルス拡大や不動産バブル崩壊の様相の経済不振に見舞われ、人民からも広く反発を受ける存在になりつつあったが…。】



◆「ゼロコロナ」政策への抗議行動が反政府デモに発展、驚愕した習近平指導部


国防相や外相が失脚、拘束された他、中国共産党上層部での”反習近平派”で生き残っていた最後の幹部である李克強前首相・政治局常務委員が27日、「プールで水泳中に心臓病の発作で死亡」と報じられるなど、習近平政権ではキナ臭い動きが表面化している。軍に対する”粛清”も繰り返され、習近平氏への権力集中の過程がいっそう進められているように思われるが、今後は民衆レベルでの”引き締め”を強める措置が取られようとしていることがわかった。


具体的には、市民の間に秘密裡で配置する監視員を100万人まで増員し、草の根で中国共産党支配と習近平体制への批判が出ていないか、つぶさにチェックし抗議デモなどに備えるというものだ。これは、昨年から今年初めにかけて都市部を中心に荒れ狂った当局のゼロコロナ政策に対する抗議デモ、いわゆる「白紙運動」を教訓にしてとられる措置だという。



◆当局の予想外に広がった文革以来の”反乱”=「白紙運動」




【画像② 当局の「街区封鎖」などゼロコロナ政策に基づく強硬措置に白紙を掲げて抗議する市民たち。「白紙運動」と呼ばれたが、何も書かれぬ白紙を掲げるのは、スローガンを書くことで言語統制を口実とした弾圧を受けないように、との思いと皮肉を込めてのことだという。】


習指導部下の中国共産党政権は、昨年、感染拡大がおさまらなかった新型コロナウイルスの感染防止策としてゼロコロナ政策を打ち出し、感染者が出た街区やマンションを容赦なく閉鎖したり、都市部住民に毎日の検査を義務付けするなどして、就労、営業など生活面全てで大幅な制約を人々に課す措置をとった。これに対して、大学で学生がいちはやく抗議を始めたほか、ここから延焼して都市部では一般住民の間にも「白紙運動」(白い紙を掲げて抗議するデモ)が広がり、抗議活動の中で「習近平退陣」「中国共産党排斥」などかつてない過激な反体制スローガンが掲げられるに至った。


ここまでの民衆反乱に近い行動は、1966~76年にかけて中国全土で吹き荒れた文化大革命以来のことで、この時すら「共産党排斥」などというスローガンを掲げた反体制抗議はなかった。一気に広がった「白紙運動」は、共産党執権下でも抑えようがなく、当局は抗議活動に妥協してゼロコロナ政策撤回を表明せざるを得なくなり、2月f7日から同政策を一切、停止した。


習近平指導部は、この動きに衝撃を受け、「早期から兆候を把握し、予防的措置と共に抗議など不穏な行動が生まれたら迅速に沈静化が図れるような日常的情報体制の確立が必要」と結論し、末端市民レベルまでの「密告制度」を特別に創設することに踏み切った。従来は、大学、企業、そして地域社会でも中国共産党の末端組織と党員が人民内の動向を把握し、様々な問題の存在、抗議行動発生の可能性については、所属組織を通じてそうした情報を上級機関にあげることになっていたが、いまや抗議行動自体に党員が率先して参加したり、組織したりする傾向が目立つので、通常の党組織ルートを通じての「人民内部の情勢把握」はもはや有効性を持たないと判断されたのである。


そこで「密告制度」は、半職業的な監視員を一般住民の中に配置できるよう、新たな措置をとるものとされた。中国全土で「住民のいるところ、全てから情報が上がるように」という目標で監視員配置を進めるとされ、当面、地方を含む国内の691都市に計100万人を配置される方向で措置がとられている。これら監視員の任務は、周辺に存在する不審な人物の言動チェックやグループ動向の把握と上級機関への報告で、有償任務となる。




【画像③ いまや自身を中華人民共和国の国父=毛沢東主席になぞらえさせ、個人崇拝を浸透させるまでに至った習近平党総書記・国家主席だが、ホンネの話で「習氏を尊敬している」なんて声を中国人から聞いたことは、少なくとも私にはない。】

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