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【読書】ウクライナにいたら戦争が始まった  松岡圭祐


松岡さんは「睡眠」とか「千里眼」というのをずいぶん昔読んだ事がある。その作家がたまたまウクライナに行ったら戦争が始まった…というノンフィクションのルポなのかと思ったら,完全な小説だった(笑)。

女の子二人のと夫婦の4人家族。旦那は電力会社の広報みたいな仕事をしていて,長期でチェルノブイリの事故の記録を展示してある記念館のようなところで,福島原発の事故の写真展みたいな仕事をしていた。(チェルノブイリはウクライナにある),単身だったので学校の休みなどの期間を使って奥さんと娘二人がチェルノブイリにやって来る。

ちょうどロシアがウクライナにちょっかいを出し始めた頃で,テレビでは盛んに危機を訴えているのだが,国民はどことなく他人事的にのんびりしていた。家族が落ち合って久しぶりの再会を楽しむのかと思っていたら,奥さんと旦那はうまく行っていないようで,ここで最後の決断をする感じ…。

そしていきなり,空爆が始まり(笑),電気やネットが使えなくなる。みんなこりゃあ大変だと,今までのんびりしていたのにぐちゃぐちゃ動き出す。とりあえず日本大使館に電話するのだが,回線が不安定,電話も話し中…というのが続き,ようやくつながったと思ったら1週間後に日本に飛ぶ飛行機があるのでそれに乗るように指示され,大変な中一週間何とかやり過ごして空港に行ったら,そこも大混乱。当然だろう皆が逃げ出そうとしているのだ。ひったくりにあったり大変な苦労の末ようやく飛行機に乗れると思ったら…。なんとPCR検査で下の娘が陽性になり,家族全員が隔離され飛行機も飛んで行ってしまう…。

ここからがもう悲惨で,これが多分現実に近いのだろうが,絶対に戦争だけは何が何でも避けなければならないなぁ…という感想しか残らない。しかし本当に松岡さんはここまでリアルに書けたと感心する。作家は創造力が武器なのだろうなぁ。当然調べ物とか取材とかもして構成するのだろうが。今の日本って平和ボケしている人がほとんどだから,実際に中国や北朝鮮が攻めてくることがあったらどうするんだ~と危機感煽って防衛費を増やし,生活に直結する予算は減らし…という事になるのだが,「それをやることで誰が得するのか」を考えれば,おのずと自分のとる道は見えてくると思う。今は自分と自分の大切な人を守るためにどうするかしか考えられない。

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