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【読書】スター 朝井リョウ

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この人の本は初めて読む気がする…と思って調べたら「桐島、部活やめるってよ」の作者なのね。だったら何か読んだことがある…と思ってよく見たら,直木賞取った「何者」を読んでいた。その評を書いていないという事は,たいしたことなかったのか??

このスターは,映画とかユーチューバーとかに関心がある人はとても面白いと思う。特に真剣に映画に向き合っている人とか,本当に考えさせられるだろう。
内容は,部活で映画を撮りある権威のある賞を受賞した二人の学生。どんな道を歩くのか世間も注目していたが,一人は有名な映画監督の会社に潜り込み,助監督的な役割を果たすようになる。もう片方は,学生時代に取った映画が,あるボクサーを追っていくドキュメンタリーだったのだが,そのボクサーがイケメンで大変人気があるという事で,YouTubeで彼を紹介したり,トレーニングの様子を公開したりして,ユーチューバーとして稼ぐような感じ。

どちらも映画大好きで,いい映画を作りたい…という想いだが就職先は両極端。しかも本筋に行ったほうが出遅れてしまう。その理由もこの本の中でしっかり描かれているのだが,とにかく今の時代,ゆっくり2時間を名画を見るために費やす…という風習がだんだん廃れてきているのだ。しかも大変な苦労して作った映画が,映画館では全く見てもらえず,1年たったらもうAmazon Primeなどでタダで見れるような環境…。どうすればいいのか…,自分達も今のネット環境に妥協して映画一本にかけるのではなく,色々な手法で売り出すべきなのか…と悩む。

かと言って,YouTubeに走った方も悩みがないわけではない。こんな中途半端な編集の画像を「待ってる人がいるから」「いっぱい見てくれたら広告収入が増えるから」というような理由で量産してもいいのか…と悩むが,上からの指示は「質よりも量」
そんな中,YouTubeの視聴者をだまして,ハラハラドキドキさせ,情報も操作しながら小出しにして,一気に爆発させようという炎上商法的なプロモーションが持ちかけられる。企画もすごくて,やれば絶対に注目されるし,自分の評価も高まるだろう,しかし本当にこれを手掛ける事が自分本来の夢か…と悩む。

この本の面白い(素晴らしい)所は,この二人の別々の悩みが,一つの同じ答えで解決し,それぞれまた別方向に行こうとする。その部分はおーっと感動すら覚えた。
やはり,映画も情報も作り手志向ではなくお客様志向が正解という事だ。

私の学生時代の仲間で映研の奴もいる。そいつは他校の映研の女子と結婚して一家で映画好き。だた10年前くらいに脳梗塞で倒れてマヒが残ったままの生活になっている。今でもLINEでは連絡しているので,この本教えてあげようと思う。私より感動する事は間違いない。

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