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【読書】エアー2.0


工事現場に住み込んで日雇い的に暮らしている主人公。たまたま同僚のおっさんが馬券を買ったまま辞め、その際に「もし当たったら換金してくれ」と言われ、当てにしたなかったら5千万くらい当たってしまい(笑)、しかもそれが正式な窓口ではなく暴力団が仕切るノミ屋から買ってたため、命がけで引き換え、逃げたところでそのおっさんと再会。

そのおっさんはホテルのスイートで優雅に暮らしているのだが何故工事現場で働いていたのか…。その謎は最後まで解けないのだが、その5千万をある手法でどんどん増やしていく。その手法というのがエアー1.0というなんというか金を作り出す魔法のシステムなのだ。と言っても違法とかではなく、ちゃんと世の中のデータをぶち込んだら将来を予測しどんどん金を増やしてくれる。

その金で何をするかというと、東日本大震災で大きな被害を受け、しかも原発の影響でまだ住めない地区の町おこしをするというまっとうで夢もあり社会的意義のある事業。
ただそれをやるためにはもっと金を作る必要があり、そのために政府と交渉しエアー1.0を政府に使わせ、それに政府が持っている(というか非合法に入手している全国民のネットの情報)を打ち込むことでさらに進化し精度が上がりますます国家的予算レベルの金を増やすようになる。ただしその15%をマージンとして受け取るという条件で。

それを買い取らせるにはいろいろな仕掛けもあったが、思い通りにことが進み、いよいよ町おこしがスタート。まずは広告代理店を買い取り「企画募集」の広告をだし、町おこしの企画をどんどん持って懲らせて、しかも脈のある話にはとてつもないお金を出して事業を起こさせる。

事業が始まり人が帰ってきて村も賑わいを見せ始めるのだが、国がどうもその事業に対していいイメージを持っていない。というのはその事業は円は使わず仮想通貨の「甘露(カンロ)」で全て運用されるため、最初は「詐欺ではないのか」と疑っていたが、どんどん事業が大きくなりそれでいてちゃんと回り出すと、国が管理する貨幣の価値や信用が脅かされるレベルまで達してきたのだ。

ああ、こんな感じで書いてたら、あらすじだけで本が書けてしまう(笑)

ざっくりいうと、今の貨幣経済の本質をわかりやすく物語で説明してくれます。さらに政治と経済との関係、マスコミの存在の意味、さらに原発被害の町おこしと脱原発の難しさ…。
中学生とか高校生が読むととてもいい教材になると思うがなぁ。

そもそも、お金を作り出すシステムがSF的なものなわけでどこまでリアルに想像できるか…と言う問題はあるが、そうしないとこのストーリーが描けないわけで必然だったのだろう。

エアー2.0

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