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【読書】水俣 天地への祈り

私の変な正義感の源は「水俣病」にある。
たまたま大学の研究室が、水俣病の社会学研究では第一人者だった丸山定巳先生だったからである。先生の授業で、水俣病について学び、水俣の人たちを思う気持ちが、今の不条理な政治への反感につながっていたのだが…

この本はなぜ今頃出版されたかというと、昨年の秋にジョニーデップが主演して話題になるはずだった「MINAMATA」が公開されたからだ。あの映画結局私は見ることができなかった。やってないのである。ジョニーデップなのでもう少し大々的にやるのかと思ったが、今の世の中には受け入れられなかったのであろう。

田口ランディという男か女かよくわからない作者の本は今まで読んだことがないかもしれない。あの山手線の車内の音を延々と描いたのは田口ではなく柳美里だったか?? この本は田口ランディがインタビューした水俣病患者で活動家である杉本栄子、緒方正人とのやり取り、そしてジョニーデップが演じた写真家ユージン・スミスの話が中心なのだが、私は「水俣病事件とは何か」という部分がとても気になった。

この本を読み始めた頃、「なんで日本ってこんな大事な問題がずるずると続いているのだろう」と思っていた。従軍慰安婦の問題とか南京大虐殺の問題とか原爆の黒い雨問題とか沖縄の嘉手納基地移転の問題とか、なんか本当にけじめをつけずにダラダラとやり過ごしているとしか思えない。そもそも今の政治家に、従軍慰安婦に関して謝罪と補償をしろとか言われても、本音言えば何を昔のことで…くらいの感想しか持ってないと思う。

なんかずるずるやってれば、そのうち被害者も死んで誰も賠償金とか請求しなくなる…と思ってやっているのだろうとしか思えない。でもそれを誰がやらせているのだろうか。わけのわからない「国体」というものなのだろうか…。

で、この本読んでて私もまずかったなぁ…と思ったことが二つ。
一つ目は、こんなもんチッソや国がお金払って賠償すりゃあよかろうもん…という考え方。資本主義とか経済的観点から見ればそうなのかもしれないが、チッソが水銀を巻き散らかして生態系を壊した海の魚や海藻などの植物、それらを食べた鳥や動物などにも水俣病は広がっているはずで、それをどのように自然に戻すのかという視点。
二つ目は、チッソが特許持っている技術に関して、我々が多大な恩恵を享受している件。知らなかったが、太陽光発電のパネルとか、紙おむつの中の固まる物質とか、パソコンや携帯電話の基盤のシリコンとか全てチッソが版権握っているらしい。これはどう考えればいいのか…。

とにかくチッソと国が補償金払えばいいのに…では終わらないものがまだ延々と続いていくことは間違いない。誰も救われずに…。そして私はなんとかしてMINAMATAを見なければならない。

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