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AIで倉庫の在庫削減!初めてAIプロジェクトに参加して感じたこと【インターン体験記#2】

こんにちは!
名古屋大学修士2年(2024年10月現在)の塚上賢太と申します。
2024年1月から8月まで、「株式会社インサイトリード」にて機械学習・データサイエンスのインターンシップに参加しました。
この8ヶ月間、学生生活最後の1年に相応しい、とても貴重な経験を積むことができました。
この場を借りて、その内容を共有し、データサイエンティストやAIエンジニアを目指す学生の皆さんがインターンシップを選ぶ参考になればと思います。


1. インターンシップに参加したきっかけ

私は大学で機械学習を専攻していますが、大学での研究以外に機械学習を実践する機会が少なく、アピールできる実績がなかったため、修士1年生の時は就職活動で大変苦労しました。

その苦い経験を踏まえ、今後のキャリアのために、機械学習の実務経験を積む場を探していました。

そんな中、友人がデータサイエンティストとして活躍している「株式会社インサイトリード」でインターンシップ生を募集していることを知り、興味を持って話を聞いてみました。

話を聞くうちに、さらに興味が湧きインターンシップ参加を決めました。
特に以下の2点に魅力を感じました。

  1. 株式会社インサイトリードの親会社である株式会社MMGホールディングスは長年、飲食店様にお酒・食品を販売する業務用総合卸を営んでおり、その中で蓄積された大量のデータを保有していること。

  2. インターンシップの内容が非常にチャレンジングであり、かつ会社への影響度が大きいこと。

2. インターンシップで行ったプロジェクトの概要

株式会社インサイトリードの親会社である株式会社MMGホールディングスは、春日井市に卸売商品の保管倉庫を所有しています。
しかし、ここ数年でお取引いただいている飲食店様が多くなり、注文数も増えたため、倉庫設立時に想定していた倉庫のキャパシティを超過してしまいました。

このままでは、新規の飲食店様との取引をお断りせざるを得ない状況になることが懸念されていました。

そこで、このインターンシップのプロジェクトが立ち上がりました。

プロジェクトの目的は「AIを活用した需要予測により、在庫と欠品率を削減する」こと、その具体的な目標として「欠品率を抑えつつ、在庫を現状の30%削減する」ことが掲げられました。

3. 担当した業務内容

  1. 需要予測AIの開発

  2. AIを導入した場合と導入しない場合を比較するためのシミュレーションの実装

  3. 現場検証(実際に発注作業を行う現場の方に、開発したAIを使って発注を行ってもらう)とそのシステム開発

  4. 検証結果の共有とAI導入に向けた打合せ

それぞれについて詳しく説明したいと思います。

3-1. 需要予測AIの開発(1月~4月)

まず、商品の出荷数を予測するAIを作成しました。
モデルには、比較的簡単に実装でき、精度が高いことで知られるLightGBMを採用しました。

扱うデータベースには多数のテーブルがあり、そこから特徴量や統計量を抽出する作業は非常に大変でした。

しかし、その過程でSQLなどのデータベース言語を使いこなす力や、PythonのライブラリであるPandasを駆使してデータを操作するスキルを身につけることができました。

インターンシップ参加前は、Pandasの使い方を調べながらコーディングしていましたが、現在ではスムーズに記述できるレベルまで成長しました。

さらに、現場で扱うデータは、それまで扱っていた参考書内のサンプルデータに比べて膨大かつ複雑であり、そのようなデータを学生のうちに扱えたことは非常に貴重な経験となりました。

3-2. AIを導入した場合と導入しない場合を比較するためのシミュレーションの実装(4月~6月)

AIの開発が完了した後、そのAIの予測結果を用いて発注を行った場合、在庫数や欠品率がどうなるかをシミュレーションしました。

AIの開発が完了しても、その有効性を証明できなければ現場への導入は難しいため、この段階は非常に重要でした。

このインターンで私が最も苦戦したのがこのフェーズでした。
もちろん、AIの開発にもある程度のドメイン知識が必要でしたが、シミュレーションを行うにはさらに深い知識が求められました。

例えば、現状の発注数はどのように決定されているのか、発注した商品がいつ入荷するのか、商品の出荷がいつ行われるのか、といったさまざまな情報を理解する必要がありました。

そのため、「シミュレーションの開発 ⇒ 知識の習得 ⇒ 開発 ⇒ 知識の習得…」というプロセスを何度も繰り返し、トライ&エラーを重ねながらコードを完成させていきました。

こうして苦労してシミュレーションを作り上げましたが、完成後、従来の発注方法と比較した結果を見て大変驚きました!
なんと、AIを適用した商品(全体在庫の約4割※)において、欠品率を現状と同程度に抑えつつ、約30%の在庫削減を達成することができたのです!

最初はこの結果が信じられず、コードにバグがあるのではないかと疑い、稼働日の丸1日をエラーチェックに費やしました(笑)
しかし、バグではなく、私が開発したAIによって在庫削減が実現できていることがわかり、とても嬉しかったのを覚えています。

その後、発注を担当している方々にも結果を共有し、実際の環境での検証へと進むことができました。

(※)出荷数が少ない商品や、出荷がない日が多い商品についてはAIでの出荷予測が難しいため、出荷が安定しており、AIの適用が可能な商品にのみAIを使用して発注を行いました。(全体のうち、約4割)

3-3. 現場検証とそのシステム開発(6月~8月)

シミュレーションのその後は、実際にAIを用いた発注システムを発注担当者の方々に使っていただき、その効果を検証しました。

検証が始まった最初の1週間は、予期しないエラーが多発しました。
例えば、発注リストをCSVファイルで出力するシステムだったのですが、二重に発注がかかる形でリストが生成されてしまったり、そもそもリストを出力する前の処理でエラーが発生したりしました。

毎朝、発注リストの異常を知らせてくれるLINE通知を確認するのがとても不安でした。

一時は、検証を中断したほうがいいのではないかと思うほどでしたが、社員の方々の手厚いサポートもあり、なんとか難局を乗り越え、その後は毎朝の通知におびえることもなくなりました(笑)

また、出勤するたびに在庫数を確認して、在庫がどんどん減っていく様子を見て非常に嬉しく感じました。
検証期間中に一度倉庫を見学した際に、担当者の方から「在庫が減って仕事が楽になった」と言っていただき、初めて自分が作ったAIが実際に人の役に立っていると実感し、とても感動しました。

3-4. 検証結果の共有とAI導入に向けた打合せ(9月)

検証期間を終えた後は、インターンシップで取り組んだ内容やその成果を、株式会社インサイトリードの社員の方々や、グループ会社の役員の方々、発注担当者の方々の前で発表しました。

検証は一部の商品に対して行いましたが、その商品では20%の在庫削減を達成しました。また、AIや発注方法を改良し、再度シミュレーションを行った結果、倉庫全体の在庫を17%削減できるという見積もりも算出されましたので、その点も併せて共有しました。

発表後、多くの方からこの結果や私の取り組みを褒めいただけて、とても嬉しかったです。

4. インターンシップを終えて

このインターンを通じて、データサイエンスのスキルや知識を学べたことはもちろんですが、今後データサイエンティスト・AIエンジニアとしてさらに成長するためには、「AIを使う人」をしっかり考えることの重要性を強く感じました。

今回開発したAIは発注担当者の方々に使用されることになります。もしAIが出した結果によって商品が欠品してしまった場合、担当者はお客様にその理由を説明しなければなりません。そのため、担当者が安心してAIを使用できるように、AIの説明性を考慮することもAI開発の一環であると学びました。

また、AIの説明性だけでなく、予測が外れてきている商品に対して警告を出す機能など、AIを安心して使用してもらうためにできることは他にも多くあると感じました。

今後、卸売業に限らずさまざまな分野でAIを開発していきたいと思っていますが、どんなAIを開発するにしても「AIを使う人」を常に意識していきたいと強く思いました。

株式会社インサイトリードのインターンシップは、AIのスキルを向上させたい方はもちろん、AIプロジェクトの進め方やAIを現場にどのように導入すべきかを学びたい方、開発から導入まで一貫して関わりたい方におすすめです!



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