月が綺麗と言った

見上げると、時々、こんばんはって顔を出すその子は、いつも同じ場所に水をたたえ、深い青にどっぷりと浸かっている。時に白く、時に黄色く、自分では操れない光と雲を、着せ替え人形みたいに纏わされ、ため息でもついているのかもしれない。君が星の数よりも多い星座の世界を自由自在に描くから、僕が綺麗ですねって言うと、それを照らすつもりか、月が綺麗ですねって言ったんだ。

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