空の器

木目調のテーブルに僕の器を置いて水で満たした君。買ったばかりなのにそこに溜まっていた傷が見え隠れした。無色透明なはずなのにって苦情を言う人もいる中で、君はどうしたんだろうって優しく尋ねた。僕は言葉を失い、ブルーハワイのシロップを器にぶちまけて、遠い祭りの縁日の露店で買った綿菓子を浮かべた。うずらの卵を割って入れて、朧月夜にでもしてやろうなんて思っていると、君はマジックの色を足して器を綺麗に染め上げた。

傷ついていたのは、僕の器ではなくて、僕たちのテーブルだったみたい。

ねえ、お願いだから教えてよ。君はどんなマジックを使ったの。

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