見出し画像

人事のキャリアにおけるワークショップのデザイン&ファシリテーションというスキルの意義について考えてみる

人事はハイレバレッジな仕事だと思う

私が人事に携わるようになったきっかけは偶然だったのですが、それを続けているのには明確な動機があります。

いきなり何の話かとお思いになるかもしれませんが、自分ひとりの影響力って限界がありますよね。

例えば自分がどんなに成長しても、プレイヤーとして今から生産性を10倍にすることはおそらく難しいですし、チームマネジメントしたとしても自分がメンバーに直接関与できる時間は、どんなに頑張ったとしても1日10時間程度が限界。

つまりは、必然的に自分ひとりの直接的なパフォーマンスにはキャップがあります。ただこれは、「直接的な働きかけではなく、間接的な働きかけによってそのキャップが外れる」と気づいたのと同時に自覚したものでもありました。

人事という職種はその特性上、「制度設計」や「組織施策」といった組織全体に影響があるミッションを担うことが多くあります。そして組織規模が大きくなればなるほど、自分自身のアクションはより多くのメンバーの生産性やモチベーション、あるいはクリエイティビティなどのポテンシャル発揮に影響を与えていくことになります。

これは言い換えるならば、制度や施策という『仕組み』を通じて間接的に働きかけることで、大きなレバレッジを効かせて多くのメンバーに対して影響力をもち、彼ら彼女らのポテンシャル発揮に貢献することができるということです。

そう気がついた時、そのハイレバレッジな役割である人事という職種にワクワクを感じずにはいられませんでした。

これが、私が人事を楽しみ、続けている理由です。

(当然、逆にその人のポテンシャルに制限をかける働きかけもできてしまうので強い責任も伴っています。この責任や緊張感も含めて、人事の仕事を面白くさせている要素だと感じています)

私が人事キャリアを続ける理由が、ワークショップにつながっている

そして、仕組みを通じた間接的な働きかけの1つに「場づくり」があることも知り、経験を積む中でその必要性や有用性の高さを強く感じています。

ところで「場づくり」とはなんなのか。自分なりに考えてみました。

・・・

すべての組織にあてはまるかは、私の経験上確証を得るには至っていないのですが、少なくとも私のこれまで経験してきたテックスタートアップやメガベンチャーの組織には以下のような特徴があります。

1)多様なメンバー属性
職種やバックグラウンドも多様で、日々触れている情報や業務で向き合う主体も顧客・プロダクト・社員などとそれぞれ異なる。携わっている職種による視点の違いから、異なる職種同士の事実の捉え方が異なったり重要視するものが異なる可能性もある。

2)変化の激しい内部環境
VUCAの時代と言われるように外部環境が日々変化する中で、急成長しているがゆえに内部環境(組織環境)も急速に変化していき、自分たちの考え方やスタイルも変化させ続けなければならない。

3)意思決定がトップダウンとボトムアップの混合
組織構造が比較的フラットで、メンバー同士が分け隔てなく協働していく組織スタイル(年功序列ではない)。
また日々のアクションもトップダウン型の指揮命令スタイル偏重ではなく、メンバー一人ひとりの自律的な意思決定(ボトムアップ)も交えたスタイルである。

まとめると、

今の時代の組織は、多様なバックグラウンドや観点を持つメンバーが、社内外の環境変化に適応しながら、自律的な意思決定によって会社を適切な方向に進めていかなければならない

と言えそうです。

このような状況において何も働きかけをしない場合、メンバー同士の認識の違いが生まれたり、それが原因で対立が起こることもあり得ます。またそれによって、ものごとの意思決定がスムーズに行えず、組織的問題が事業の停滞を招く、という状況も想定されそうです。

見ているモノの違いも、変化を必要とする状況も避けられるものではないので、それを乗り越えて常にメンバーがお互いを理解し、目線を合わせられる状態となるための働きかけをしていくことが必要だと思います。

そのためには、メンバーそれぞれがお互いに見ているもの・感じているこのを伝え合ってお互いを分かり合うこと、またお互いの観点や前提あるいは大切にすることを分かち合うことができれば、メンバーが新しい観点を得てものごとを多面的に捉えることができるし、結果として1つの方向に向かいやすくなる。
更には1人では導けなかった結論にまで辿り着けることもあるかもしれません。

長い前置きとなってしまいましたが、このような働きかけの手段の1つが「対話」であり、その対話を生み出す環境をデザインすることが「場づくり」なのではないかと思います。

そしてその手法論としてのワークショップのデザインとファシリテーションがとても有用、かつとても面白いと思うのです。

場を ”機能させる” ことが、ワークショップのデザインとファシリテーションの醍醐味

多様なメンバーが変化の激しい環境を乗り切るためには、対話の場が重要なのではないかという話をしましたが、メンバーが集められ、対話するための時間が用意されればすべて解決するかというと、そんなことばかりではなさそうです。

そこで対話が生まれ想定するゴールに到達するためには、適切な問いかけが設定されていたり、コミュニケーションがスムーズに行えるようなツールや環境が用意されているなど、いろいろなサポートが必要です。

イメージとして、

「おはようございます。今日は制約なども取っ払って、遠慮なく組織課題の解決アイデアを思いっきり自由に出してみてください!」

と一言だけ残して主催者が立ち去ったとしたら、どうでしょうか。

人によってはなんとかなるかもしれませんが、「それでアイデアが出たら苦労しないよ!」と思う方もいるのではないでしょうか。

願わくば、「組織課題の解決アイデアを出す」というゴールに向かって、参加者がもっと負荷なく思考や対話を行えるような ”何か” が欲しくなるところです。

私はこの”何か”がワークショップを含めた場のデザインであり当日のファシリテーションだと考えています。そしてこれらの質が、参加者が行う対話の質や参加者のアウトプットの質に大きく影響すると感じています。

ここに介在価値を感じずにはいられません。

ワークショップはデザインもファシリテーションも面白い!

なんだかんだ言ってきましたが、一言で片付けてしまうと、ワークショップのデザインやファシリテーションは本当に面白いです。

ワークショップのプログラムをデザインしているときには、参加者の思考プロセスを疑似体験しながら「もっと参加者が創造性を発揮できる問いの設定はできないか?」「このワークのプロセスで参加者は迷いなく思考を進められるだろうか?もっと良いプロセスはないか?」などと考えるのは非常に創造力が掻き立てられ、楽しい時間です。

また当日のファシリテーションにおいても、雰囲気づくりを工夫したり、参加者の対話や思考が促されるような進行の工夫をしたり、予定外に時間がかかったり予期せぬ質問やトラブルを乗り越えるなど、ライブ感もなかなか刺激的です。

毎回反省も学びがあり、探究心もくすぐられます。

さいごに

最後の締めくくりが「ワークショップは面白いよ!」という拍子抜けする感じになってしまいましたが、人事が持ち合わせておくスキルとしてもとても有意義に思います。

「対話の場のデザイン」を通じて間接的に組織に働きかけ、メンバー一人ひとりの学びや発達が生まれる。その場をきっかけに彼ら彼女らのポテンシャルが更に解き放たれ、組織のパフォーマンスが向上する。

そんな未来を描ける能力は、人事のキャリアを1つ前に進めてくれるのではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?