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【書評】(あるいは)SFのある風景 / 電子書籍版 / 2015年 / 著者:文野はじめ / プロデューサー:一ノ瀬トヲル / ディスカバー・トゥエンティワン

──『「別に、私は若い学生が駆け落ちしたくらいでは何も言わない。むしろどんどんやるべきだ。窮屈な世界から逃げ出したり、理不尽な社会に盾突いてみたり、好きにしたらいい。それは多分、上の世代が作った社会や世界が、下の世代にとって幾らか誤っている証拠だろうからね」』──

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 書籍の中の引用部分は『』で書かれています。著作権違反にならないように慎重に書いていきます。
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 自由に書いていこうと思う。kndleで読んだ。この本を初めて手にしたのは、統合失調症で入院中のK大病院N病棟の閉鎖病棟の中だった。都会の閉鎖病棟だったからなのか、それともK大という知を重んじる風土が病棟内にもあったのか、「勉強コーナー」というコーナーがあり、そこで初めて手にした、透き通るような空色の紙の本だった。

 当時、私は、「本は名言を抜き取るためにある」と考えていたし、西尾維新や至道流星といった、本当に面白い本を既に知っていて、文章に少しでも誤りがあったり、起伏のない文章に出会うと、本を読むことが出来なくなっていた。かなり贅沢な読書をしていたと、今さらながら思う。
 
 さて、本との出会いはこの辺にして、本の紹介に入ろう。閉鎖病棟退院から4年が過ぎ、時代は変わり「(あるいは)SFのある風景」がkindleでも読めるようになっていた。実家では紙の本を買うには、自分の部屋のスペースがあまりに狭かったので、kindle版になっていて、ようやく読むことができた。

 電子書籍の良いところは、必ず最初から読まなくてはいけないところと、読み飛ばすと途端にわけがわからなくなるところだ。そのおかげもあってか「(あるいは)SFのある風景」は最初から最後まで読破することになった。

 電子書籍の悪いところは引用が難しいところだ。紙の本だと物理的に付箋を貼ることができて、引用個所がすぐに見つかるが、電子書籍ではそうもいかない。だから、この記事のタイトルにわざわざ「電子書籍版」と書いたのは、引用が少ない、ということを始めからアピールするためだった。

 さて、本の内容だ。キーワードをいくつか並べてみよう。「夏」「爽やか」「クローン」「アンドロイド」「秘密結社」「近未来」「青春」「恋愛」「戦争」「小中高校生向け」となるだろうか。この中でピンと来たのがあれば、買ってもいいと思う。しかし内容としては、うまく論理的にはまっていないことが多い。章を読み、実はそれは全部嘘だった、といった内容もあり、? と思うことも多かった。

 著者の「文野はじめ」は、書籍界のボーカロイド──すなわちAIが書いた小説──なのではないか、と勝手に推測している。それをプロデューサーの「一ノ瀬トヲル」が加筆・修正を加えた小説なのかな、と勝手に思っている。「爽やかさは満点だが、面白いかと言われれば、わからない」というのが読破してみての感想である。引用文がなかなか少ないのが申し訳ないが、名言のようなセリフはあったが、それが物語に直接関係することは無かった。本の表紙の透き通るような空色をまさに表した「爽やかさ」を極めた小説であることは間違いない。難しいことは書いていないので、高校生くらいの年代が「爽やかさ」を求めて読むのは最適な小説ではないかと思っている。

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