プロテアーゼ阻害剤

おはようございます。

昨今の日本、いや世界ではコロナウイルスが流行っていますね。
いつか自身も罹患するのではないかと震えながら働いています。

そこで今日は、抗HIV治療薬の中でも相互作用が多いプロテアーゼ阻害剤について勉強したいと思います。
え?コロナウイルスじゃないのかよって?コロナウイルスなんて大学で習った記憶ないので今日はプロテアーゼ阻害剤です。

まず初めにHIV感染症について少し勉強しましょう。どの薬も勉強する前にそもそも適応の疾患でどんな疾患なのか把握することは大切です。

HIV感染症はヒト免疫不全ウイルス(Human immunodeficiency virus:HIV)による感染症であり、特定の日和見疾患を発症した状態がAIDS(acquired immunodeficiency syndrome:後天性免疫不全症症候群:エイズ)と定義されます。
特定の日和見疾患ってなに?とってなりますよね。日本ではニューモシスチス肺炎(PCP)、カンジダ症、結核、サイトメガロウイルス感染症、原発性脳リンパ腫などが多いらしいです。詳細についてはガイドラインや病気がみえるなどでも参照してください。
ちなみにエイズの診断基準は国によって異なります。まあ日本にいる限りそんなに関係ないですかね。

HIV感染症は大きく下記の3つの病期に分けることができます。

急性感染期、無症候期、AIDS期

AIDS期には日和見疾患に罹患する危険が生じるが、初感染からAIDS期に至るまでの時間は症例により異なります。
HIV感染症をモニターする上では、免疫状態の指標となるCD4陽性Tリンパ球数および抗ウイルス療法の治療効果の指標となる血中HIV RNA量が重要なパラメーターです。
現在、標準的に行われている抗レトロウイルス療法(ART)はHIVの増殖を効果的に抑制し感染者のAIDS進行を防止することもできます。しかし、ARTにより体内からウイルスを駆逐するためには少なくとも数十年間の治療が必要と考えられており、事実上治癒は困難であります。

今回はHIV感染症について勉強するわけではないので、そろそろ本題の方に入ります。いつかHIVに関する記事を書いて、さらにnoteの使い方を覚えてきたらリンクとか貼っていきたいです。

ますARTでよくみる処方は下記の通りです。

アイセントレス®/デシコビ®(ラルテグラビル/テノホビル アラフェナミド/エムトリシタビン)

または

テビケイ®/デシコビ®(ドルテグラビル/テノホビル アラフェナミド/エムトリシタビン)

今回のタイトルにもあるプロテアーゼ阻害剤(PI)は1年間働いていて見たことがありません。相互作用あるし使いづらいんですかね。

プロテアーゼ阻害剤は、ウイルスタンパク質が体内に入り、複合タンパク質として一括して翻訳されたあとにウイルスプロテアーゼによって切断される切断の過程を阻害することでウイルスタンパク質の産生を抑制する薬です。
PIの代表としては、ダルナビル、リトナビル、アタザナビル、ロピナビル、インジナビル、サキナビルなどがあります。

サキナビルは抗HIV薬としての認可第1号であり、コンピュータによる薬物分子設計により誕生した医薬品です。HIVプロテアーゼは同じタンパク質が2量体を形成しホモダイマーとして作用する酵素です。加水分解活性部位にアスパラギン酸を含み、基質の切断配列にプロリンを含む点が大きな特徴です。
サキナビルの開発は、プロリンを含む基質ペプチド構造が阻害剤開発の出発点となったそうです。

インジナビルは酵素活性中心の結晶構造や阻害剤-酵素錯体との結晶構造をもとに、コンピュータ支援分子設計を活用して開発されました。

リトナビルの開発は対象構造の阻害剤の設計から始まりました。しかし開発途中でHIVプロテアーゼ結晶構造が明らかになり、酵素-基質錯体中の活性部位は必ずしも対象でないことが示され、阻害剤も対称性がやや崩された構造に変えられて、最終的にリトナビルが開発されました。

研究者って本当にすごいですよね。

またまた脱線しましたが、これから本当に本題のPIの相互作用について勉強していきます。

PIはCYP3A4を阻害することが知られており、その中でもリトナビルが最も強く阻害します。リトナビルがCYP3A4を阻害するのは有名ですよね。
リトナビル(ノービア®やカレトラ®)の添付文書を見ればわかりますが、併用禁忌が多すぎます。まあその性質を利用してリトナビルの少量併用(ブーストPI)のように併用薬の血中濃度を高くする治療法もありますが。
例のごとく疲れてきたので本題が一瞬で終わるという事態になりそうですが、今回言いたいことは

PIのような滅多に出ないけど併用したらヤバイ薬はしっかりと頭に入れておこう!!

です。

こんなこと言ったら怒られちゃうかもしれないけど、薬剤師の仕事って「ちっ、こんなつまらない処方ミスしやがって!!みたいな疑義照会が大半の中、稀にやってくる本当にヤバイ処方を止めること」だと思うので、抗HIV薬みたいに普段見かけない薬を普段見ないから見逃したではシャレにならないと思うんですよね。だから普段から要注意な薬は意識的に覚えていく必要があるということを言いたかったのです。たぶん。
あとPIはP-gp阻害作用もあるのでそれも頭に入れておきましょう。

万が一PIの服用中の患者がいたら、併用薬を変更してあげるのがいいのかなあと個人的には思います。患者の中での治療の優先度の高さはHIV感染症だと思うし、HIV感染症について詳しくない人が抗HIV薬に口を出すより、併用薬をより相互作用のない薬に変えるほうが安心だと思うんですよね。

今回は最近記事を書いていないので使命感で書きましたが、次からは内容のある記事を書きたいです。余談ですが、カレトラって最近聞いたことありますよね。

おわり