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仕事力アップ!地方公務員が身につけたいこと:「コスト感覚」と「投資マインド」を持つ①コスト感覚編

 今回と次回で、地方公務員が「コスト感覚」と「投資マインド」の両方を持つべきということを述べたいと思います。この2つは民間企業では当たり前のことに思えますが、地方公務員には無縁だったように思えます。私自身、勤め先の自治体が財政的に恵まれていた時期でもあり、これらが欠如していました。そこで、反省と自戒の意味も込めて、これらの点を述べます。

 今回は、「コスト感覚」です。民間企業の場合、顧客への販売が収入をもたらし、それに要する支出を抑えることで利益を得ることができます。経済学では、民間企業は利益の最大化を追及するという前提がありますが、小さな支出削減の積み重ねが莫大な利益の源となるので、コスト感覚を研ぎ澄ませる必要があります。

 これに対して、地方自治体の収入は、税金や地方交付税、補助金、借金(地方債)などが中心です。税金は地域住民や企業に提供する行政サービスの対価ですが、納税は義務なので強制的に支払うものです(税金は「取られる」ものになっています)。また、地方交付税や補助金は国から受け取るもので、最大化を図るには国の言うことを聞くことが条件となります。借金は、制度の枠内であれば議会の承認を得れば借りることが可能です。

 そして、予算で見積もられた収入に基づいて支出も決まります。税金は入っているのに支出を抑えて余らせるのは、民間企業では利益になるかもしれませんが地方自治体では「税金の取りすぎ」として好ましくありません。サービスの対価なのですから、サービスを提供しないのに強制的に負担させることはできないわけです(「予算を使い切る」という行政機関の行動が生まれる一因でもあります)。

 このように、地方自治体の収入は民間企業と異なるため、支出を抑えるインセンティブが非常に小さくなります。私はたまたま税務課や財政課に配属され、税金の大切さとコスト削減の重要性を感じることができましたが、それ以外の部署ではなかなかそうした機会はありません。「最小の費用で最大の効果」を発揮することが法律で求められてはいますが、かけ声にはなっても実態は必ずしも伴っていないように思います。

 人口減少で税収が減り、高齢化やインフラ維持で支出が増える見通しの下では、地方公務員がコスト感覚を持つことは必須です。容易なことではありませんが、大切な方法を紹介したいと思います。

 それは、確かな価格とそれによる成果の大きさを知ろうとすることです。当たり前のことですが、それが必ずしも浸透していないように思います。もちろん、仕事で使う事務用品は日常生活でも使うので、例えばボールペンなら1本100円くらい、ということは分かります。しかし、そのボールペンが100円に見合った仕事の成果を生み出しているのか、もっと言えば100円納税する人が納得して負担してくれるものか、意識することはほとんどありません。常にそんなことを考えていては仕事は進みませんが、頭の片隅に置いておくことは必要です。

 さらに言えば、地方公務員のオフィスわすなわち庁舎はどのくらいの費用がかかっているのか、そのうち自分のスペースにかかる費用はどのくらいなのか、意識したことはほとんどないはずです。もちろん、そこに給料が人件費としてかかってきます。これらの費用を合計すると、自らにかかる住民の負担はとても大きいことを実感できるはずです。コスト感覚とは「それに見合う仕事をする心構え」の根底にあるべきものだと思います。

 もちろん、コスト感覚は支出の削減にも向かうべきものです。ムダな支出は有害なものでしかないからです。しかし、これからは支出削減以上に、仕事のパフォーマンスを上げること、さらに言えば地域のパフォーマンスを上げることが大切になってくると思います。このことは次回のテーマに関係しているので、続きは次回にしたいと思います。

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